カマキリ通信
※かまきり通信執筆者のY・H氏は闘病生活を送られていましたが、2018年12月鬼籍に入られました。                                    合掌

★何が起こっても不思議はない内外情勢
      安倍首相は何処へ行く?           237 

 雇われ人は、とかくご主人の顔色を窺いがちだ。安倍首相も超大国の勢いにかげりが生じ、以前と比べるとずいぶん羽振りが悪くなったなア、ということを敏感に察知しているからだろう。
 そんな雇い主のプライドを刺激するような不用意な発言は、務めて避けるように気を遣っている。だからわが衆参両院で、野党に新安保法制の説明をする時にも、およそ分かりにくいことこの上なしといった、言い訳めいた言葉しか出てこないのだ。
 ここはだから、「緊迫」する東アジア情勢に藉口して、実質“戦争法案”にほかならぬ「安全保障関連法案」を、むりやりゴリ押しして通そうとするのだろう。“周辺事態”が風雲急を告げているとは、全く好都合な理屈を見つけたものだ。
 だが、それでもなおウソやゴマカシが多数派を形成していくのには困難があると判断して、衆院か参院の予算委で維新の党の国会議員だかが、「いくら会期を伸ばしても、伸ばせば伸ばすほど国民の(政府案への)理解は深まらず、逆になるばかりだ。理解が深まらずとも「尽くされた」として、参議院での可決を断念し、衆院差し戻しの上、例の3分の2条項適応の規定を発動し、この希代の悪法の成立を宣言する気か、まさかそんなこかはあるまいな?」と釘をさした。
 安倍首相はこれに対し、イエスともノーとも確答しなかったけれど、あの男のこれまでのやり口を見るとき、特定秘密保護法審議の場合もそうだったように、必ずや“ルビコンを渡る”という「決断」を下すだろう。
                         ※   ※   ※

 ただここにきて、若干の不透明な情勢展開が生じている。幹事長の谷垣氏が「御大」の窮境を見るに見かねてか、禁句とされている超大国のここ数年来の急激な地盤沈下を街頭演説ですっぱ抜き、これなら国民も納得するよなア」とばかり胸を張って見せたのか―それともこんなんじゃ成立させるわけにもいかぬ、ご主人に恥をかかせることになるのも万々承知の上で、安倍氏を引きずり落とし、彼に先を越されたナンバー・2の野心を甦らせて次期か、次々期の総裁選に向けての足場固めにそなえるつもりなのか。

                         ※   ※   ※

 さらにこれは、さすがにわれわれも、その阿呆らしさに絶句してしまいそうな愚行だけれども、自民党のチンピラ国会議員連中が集って、あのインチキ作家百田尚樹氏を講師に委嘱し、百田氏が「沖縄の二つの新聞社は絶対につぶさなあかん」などと発言、国会議員の側からは、これを受けて、「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番、経団連などに働きかけてほしい」等、政権に批判的な報道機関の規制を求める声が、上がったと伝えられている。
 問題の国会議員は、先ずすべてが第二次大戦後生まれであり、まアあの大戦の現実に関する無知を自らさらけだしたものであるが、この件で特にゆるがせにできないのは、作家百田氏のその後の発言であろう。百田自身の言葉とされる前記「沖縄の二つの新聞はつぶさにやならん」については、オフレコの発音だから責任を問われる性質のものではないとする一方、国会議員のそれは、公式の意見表明だから、責任は免れぬとした卑怯千万な態度である。
 この男、NHK経営委員を務めていながら、今はもう退任していると開き直るなど、だいたい安倍氏の無責任感覚と驚くほど、似通っているということになりそうだ。

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 最後になるが、雑誌『WILL』創刊10周年八月特大号のバカでかい新聞広告について一言、「論壇四巨頭」=夜郎自大とはこのことだ=というからどんな顔ぶれかと思えば、桜井よしこ・渡部昇一・中西輝政そして西尾幹二という面々…、これらが集っていったい何をしやべるのかと思えば、いうにも事欠いて「安部外交が世界を動かす」ときた。
 この広告を掲載したM紙は、同じ日の別の紙面で『WILL』の広告を掲載したワック出版局の単行本の広告を出しているが、なんとしても不思議に思えてならないのは.このような全国紙に二つの大きな広告を載せれば、それこそとてつもない金額を必要とするだろう。これらを全部売りつくすだけの見通しがあるのか、それとも彼らの背後に控える巨大な黒幕がすべて取り仕切って、黙って買い取るのか(事実はそんなに大量の部数は出さぬのかも?)。
 だからこの世の中、何が起こっても不思議ではない。               2015・6・30


★国会での“絶対多数”が彼らの頼みの綱
       でも“四面楚歌”こそ真実の姿       
236

 “焼きが回る”とはこんなことを指していうのだろう。衆院憲法審査会で、参考人の三教授が揃って安倍政権が提起した戦争参加法案は、憲法違反だと発言た。
 慌てた菅官房長官は、自分たちも推薦している学者も含めて、そうした見解を表明している事実を前にどう弁解することもできず、とうとうこういう問題について結論を下しうるのは学者なんかじゃない、最高裁だけだなどと開き直る始末、そして苦し紛れなのか、自らが作り上げたこの戦争合理化法案を、憲法と照らし合わせて矛盾しないと主張する学者も。“大勢”いると強弁してみせた。“大勢”とはいったいどの位なのか、またその学者の名前を言ってみろと、追及された官房長官はたじたじとなり、遂には黙り込んでしまうというテイタラクであったと報じられている。
 そしてさすがにこのままではまずいと思ったのか.記者団の質問にその名前を明かした二人の法学者に日本記者クラブで記者会見を行わせ、政府見解に沿った論理を披露させたのであるが、なにしろ“合憲”“違憲”を判定するのは最高裁だけだと公言した彼のことなので、この二人の「学者」の重みがなんとも軽いものになってしまったのは、まア仕方のない話だといわねばならない。

                         ※   ※   ※

 下村文科相が・国旗・国歌の取り扱いについて国立大学長が集った席上露骨な圧力を掛けたそうだ。
 それでなくとも、この国の右翼的志向を目指す勢力は、おおむねこうしたテーマの問題を取り上げ、相手がこれにどんな反応を示すかによって、彼らへの忠誠度をテストしようとするものらしい。
 下村氏自身は、これはあくまでもお願いに過ぎぬと強調し、相手がどういう態度に出ようとも構わないと述べてはいるのだが…。でも国立大学は昔と違って独立行政法人となっており、それが受ける予算措置にも微妙な影響を受けかねないということになれば、大学当局者としても、この問題への対応はいきおい慎重にならざるを得ないことになろう。
 沖縄県の翁長知事の場合もそうだが、どんな隙間も見落とすことなくじわりじわりと浸透してくるあちら側の奥の手は、全く油断ができない。その卑劣さ加減には、呆れるほかないのである。

                         ※   ※   ※

 集団的自衛権行使の是非をめぐる安倍政権の安保関連法案への対決、という大問題の陰に隠れがちとなっているが、これもまたとんでもない反勤労者的な法改悪が、自民党などの賛成多数で衆院を通過した。労働者派遣法改正案である。
 これまで臨時的、一時的とされてきた派遣労働の原則が大きく変化することになろう。安倍氏は、「これにより正社員を希望する人には正社員への道が開かれる」と自画自賛しているが、そんな楽観論を信ずる人は先ず殆んどいない。
 何よりも、この法改悪を通すことに異常なほど熱心だったのが、日本経団連だったということに彼らの馬脚が現われているというべきだ。
 それにそもそも、この奇態の改悪構想を答申したのが「規制改革会議」という諮問委員会で、その代表というのが住友商事相談役、丘素之氏である。雇用分野での不当解雇が裁判で認められたら、金銭保障で退職への道が開かれるという、盗人猛々しい条項も、ちやっかり明記されているのだから、いやはや何をか云わんやだ。

                         ※   ※   ※

 最後に、嬉しい二ユースをお届けしよう。7月1日…わが国が曲がりなりにも守ってきた専守防衛の国是が安倍政権によって踏みにじられた閣議決定から丸一年になるというこの日―島根県内の民主・共産・社民の三党が安全保関連法案の可決・成立阻止を訴える合同演説会を開く。
 中央レベルでの共闘の遅れに一歩も二歩も先んずる形で、実現が決まったこの展開が沖縄の統一行動や大阪での新しい試みを更に発展をせるため、先駆的な役割が果たせるよう、みんなが一丸となって努力しようではないか。
                                                2015・6・21

★いったい大丈夫なのかこの国は
    われわれを何処へ連れてゆく?         
235

“歴史的な”といってもよい安全保障関連法案審議が、衆院平和安全法制特別委員会で、いよいよ始まった。
 しかし衆参両院で圧倒的な数的優位を保つ政府与党であるにもかかわらず、これほど防戦を強いられ、かつあらゆる局面で野党側の激しい追及を交わすのに、汲々とせざるを得なくなるとは、誰が予想できただろう。でもまア考えてみれば、そんな気配はなくもなかった。
 これに先立ち、米軍のオスプレイがハワイで事故を起こしたのだが、折から日本本土にその配備計画を進めようとして、わが政府にその実施の可否を確かめる前に、さも既成事実のごとく振舞ってきた米国防総省の当局者が、「オスプレイの機体にはなんら構造上の欠陥はなく、今後ともその運用を取りやめるつもりはない」と言い放つや、中谷防衛相はそれに迎合するかのごとく「わが政府は、米側に配備飛行の中止を求める考えはない」とコメントしたのである。恥も外聞もないとはこのことだ。
 これが“存立危機事態”や、いわゆる“後方支援”をめぐる自公政権のアメリカへの姿勢ついて、たいそうな懸念や不安を掻き立てることになるのは、当然すぎるくらい当然の話ではないか。

                         ※   ※   ※

 そこへもってきて、大阪都構想をめぐる住民投票の結果である。維新の象徴的存在といってもよい橋下徹氏の提案が承認されず、彼の目論見に一頓挫をきたし、同氏が政界から引退せざるを得ないことになった。これは、ただ大阪だけの問題に止まらず、わが国の将来像を描くについて橋下氏が安倍首相と肝胆相照らす関係にあったことから.首相にとっても今後の政治戦略の構築に、少なからぬ打撃となったとみることもできよう。
 いずれにせよ、新安保法案審議の前に転がり込んできた、政権側の不安材料であることに間違いはない。
 そんなこんなで波乱含みのうちに開幕した特別委員会だが、折角の“集団的自衛権行使のための新三要件が当初事例ごとに異なる対応を示すことにより、野党勢力の分断策として機能するはずだったのに、その七面倒臭さが皮肉にも政権側の手足を縛ったり、自己矛盾を拡大したりするハメをもたらしてしまったのである。
 それにしても、経済的要因を強調するあまり“国民が凍死しかねない事態”などと口を滑らしたのは、彼らとしても悔やんでも悔やみきれない大失言であった。さらに対米追随振りの眼に余る卑屈さに関し、質疑に立った革新政党の委員長から、過去の数々の実例に基づいて手厳しい指摘が行なわれると、首相をはじめ防衛相、外相はマトモに答弁もできす、まるで被告席の犯罪容疑者よろしく、ただうなだれているばかりだったのである。
 この光景は、M紙の社説「主体的の判断できるか」でも引用された。さすがに固有名詞は、省かれていたけれども。
                         ※   ※   ※

 口永良部島で爆発的噴火が発生し、気象庁は警戒レベル5という最大の警戒警報を発令、全島民が島外へ避難した。とにかく無事を祈りたい。
 ところで全くのシロウトの感想だが、地図を見れば一目瞭然、その北方には九州本島があり、南端に近く川内市がある。この川内市に原発があり、その再稼動に鹿児島地裁が、過日イエスとの採決を行なった。果たして大丈夫なのか…?
素朴な疑問である。
 それにしてもこういうことに、NHKテレビが一言も触れないのは何故だろう。
                                               2015・5・30


★ウソは所詮ウソ
   ゴマカシはどうあがいてもゴマカシ        234
     安倍政権の前途は狭まるばかりだ
 

 期限まで明言するという固い約束をワシントンと取り交わした経緯もあり、安倍首相は無理を承知でコトをがむしゃらに運ぼうとしている。
 だから70年近くにわたって不動のものとされてきた専守防衛の理念を、いとも手軽に投げ捨てることができるのだ。
 それにしても、あれほど国民から不信の眼で見られている集団的自衛権の行使をもっともらしく言い繕うためには、従来10本もあった法律をひとまとめに整理しなおして、「平和安全法制整備法案」の名のもとに統合し、考えうる限りのあやしげな状況を想定して、詭弁的論理を展開、そうすることによって人びとを煙に巻こうというわけなのだろう。
 そして超大国がヌケヌケと強請してやまぬ地球の反対側までも自衛隊の出動を可能にさせようとする企み、“いわゆる後方支援”に関しては「国際平和支援法案」なる恒久法を制定し、これでもって、いまや立ち往生しかけている、米国の政策立案者たちの窮地を救おうとする底意が、見え見えである。
 前者「平和安全法制整備法案」の中核をなすのが“存立危機事態”という概念であるが、注目すべきは何を以ってわが国と国民の存立が脅かされているとみなすのかという点であろう。
 安倍政権によれば、たとえば原油の輸入に著しい障害が発生し、エネルギー確保が覚束なくなるような情勢になってくると、それは取りもなおさずわが国の存立が脅かされ、集団的自衛権発動の要件を満たすことになる。だが、これこそとんでもない論理の飛躍ではないか。
 われわれには、第二次大戦のあの悪夢が甦る。1941・12・8の太平洋戦争開始の理由付けは、“わが国の存立が危殆に瀕し”“自存自衛のためにはこうするしかない,というものだったのだ。

                          ※   ※   ※

 それと後者の「国際平和支援法案」であるが、7、80年前と比べて異なるのは、あの時は専ら自国の支配者だけの野望に突き動かされての行動だったのに、今回は全盛期こそ過ぎたとはいえ、現在なお世界の超大国と自他共に許すご主人の命令を受けて、使い走りの役目を勤めさせられているという浅ましさをモロに露呈していることである。
 だが考えてみると、“明治維新”と呼ばれた1868年のこの国の擬似革命(エセ革命)以来今日に至る140年余にも及ぶ期間、この日本の支配層は常に変わることなく.近隣の諸国民の犠牲の上に自らの欲望を満足させてきた、といえるのではないか。1884−95年の日清戦争は主として朝鮮半島がその舞台であったし、1904−05年の日露戦争の主戦場は清国(中国)東北部だったのである。そして1931−45年の15年戦争(1941年12月以降は太平洋戦争)はどうか。
 東アジア、西太平洋地の国々がその戦火による犠牲者であったこと、これこそ誰知らぬ者もない歴史の真実である。
                          ※   ※   ※

 間もなくやってくる戦後70年の夏。鉄面皮が売り物の安倍首相も、内外の批判の前に“談話”の中味をどうするかに苦慮しているようだ。お詫び抜きの「痛切な反省」で切り抜けるのか、それすらも曖昧にして「未来志向」で中央突破という道を択ぶのか。
 過去から学ぼうとしない者は、未来も見通すことができない、という言葉があるのをお忘れなく。
                                               2015・5・24


怪しげな縄張り争いに巻き込まれるな
   「平和」を叫んで揉め事に             233 
       加担するのじゃ話にならぬ

  国会でロクに審議もしない前の“閣議決定”、そしてまた国民との間の率直な討論を棚上げしての、ワシントンでの、日米合意”、数を頼んでの横紙破りも、ここまで来ると、この次はいったい何が飛び出してくるのかいやでも構えざるを得ない。集団的自衛権行使のための新安保制をめざす、安倍政権の今後の画策はどうなるか.
 さて、第二次大戦終結後、ほぼ七十年にわたって安泰を保ってきた米欧主導の国際秩序にも、ようやく翳りが見え始めてきて、彼らが自家薬籠中のものとしてきた世界銀行、国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行などの全能的支配は、そのたががハッキリと崩れかけてきた。
 もはや彼らの身勝手な運営は、現在の先進国と発展途上国との、現実的な力関係とはよほど乖離したものとなりつつある。中でもアメリカのかたくなな姿勢は、これまでその仲間であった西欧主要国からも、疑問や批判が顕在化する事態となっており、それは先般の中国提唱のAIIBへの、当初の予想を上回る参加表明の雪崩れ現象となって現われた。
 そして、今や大声で論じられている中国の“海洋進出”も、そのことへの賛否はともかく、これまですべての国々がおおっぴらに同様なこと(もしくはそれ以上に阿漕なこと)をやってきたわけのものであり、それなればこそ、今日の情勢の中で、二十一世紀の普遍的価値を満たす、新しい行動規範を打ち立てなければならないのである。
                          ※   ※   ※

 現在の世界情勢を第二次大戦前のそれに単純に比較して、あたかもミュンヘン会議(1938年)当時になぞらえ、侵略的傾向に毅然とした態度をとることが平和を確固たらしむる所以だなどと、短絡的に結論を下すのは、まさに単純化の最たるものであり、それ以上に偽善的な下心の産物とさえ、いいうるであろう。
 こうした論理は、ご主人の袖に必死にすがりついて、なんとか途上国へのこれまでの優位を保とうとする、安倍政権の浅ましさを如実に表すものにほかならない。

                          ※   ※   ※

 首相官邸屋上への小型無人機「ドローン」飛来事件−これはもう、ほとんどファルスとしか言いいようのない出来事である。無人機を飛ばした人物は、自ら名乗り出て自身“反原発”を訴えるための行為だったと主張していると伝えられるが、メディアの報道の通り、機体に取り付けられた容器から、福島県の被災地の土が、発見されたといっても、その放射能は極めて微量であり、本人の語るような狙いに役立つとも思えぬし、単なる売名行為にさえもならないのではないか。ただし権力側にとっては、ある意味で勿怪の幸いとして、利用したくなる事件であろう。 もともと現行法律では、およそ処罰の対象として取り上げるべくもないことであり、これを奇貨として新たに種々の法規制を制定しようと乗り出す構えだと伝えられている。
 それにしても、この人物を「威力業務妨害罪」で起訴しようとしているとも伝えられるが、まったく噴飯ものだ。いやまてまて、噴飯ものだなどと、笑っては済まされないゾ。

                          ※   ※   ※

 安倍自公政権がアメリカと結托して、いよいよやばい動きに乗り出そうとしているさなか、「戦争・原発・貧困・差別を許さない五・三憲法集会が横浜みなとみらい「臨港パーク」で開かれる。
 これまでも各地で五月三日に行なわれてきた催しは、それぞれ大切な役割を果たしてきたが、今年のこの横浜での集いは、更に実に重要な意義をもつことになろう。
 問題はNHKをはじめテレビ、日刊紙がどのような扱いをするかであリ、われわれはそれに深い関心を持つ。
                                                2015.4.30


言葉にも窮する自民主導政権
  集団的自衛権合理化のまやかしを         
232 
     打ち砕こう

 あちら側の攻撃は、最近に至りいよいよそのテンポを速めている。
 彼らが主張する集団的自衛権行使のための“新三要件”とは、要するに日本が直接攻撃されなくても、アメリカなど密接な関係を持つ他国の戦争に加担できるというもので、@わが国の存立が脅かされ国民の生命、自由、幸福追求の権利が覆されるおそれがありAそれを守るために他に適当な手段がない場合B必要最小限度の実力行便を認めるというわけだ。
 そしてとりわけ胡散臭いのが、“他に手段がない場合”なる文言である。いずれ連立のパートナー=公明党が言い訳する際、役立てるために挿入された言葉であろうが、こんなのは、どうとでも屁理屈の立つ便利な表現だ。一方では、“存立危機武力攻撃にどう対処するか”など…考えてみれば日本語の語彙も限られているわけだから、いかに知恵者揃いの自公政権も、内心参っているのかもしれないゾ。

                          ※   ※   ※

 表現力の貧困といえば、安倍首相の能力の見せ所というべき.戦後七十年談話の件に話題を移したい。
 第二次大戦終結後から現在までのわが国の歩み、それを主導してきた日米両国支配者たちの振る舞いを振り返って、安倍氏はその足跡をどうやら“静かな誇り”とでも称したいらしい。安倍氏としては、できることなら過去のアジア帝国に対する侵略の歴史には触れたくない、それが無理なら、ホンの少し申し訳程度のものに留めておこう、というのがホンネなのだ。でもさすがに、そんな鉄面皮なごまかしは、内外の世論がとても許してくれぬという状況である。第二次大戦の基本的性格であった民主主義対ファシズムという対決の構図が、七十年を経た現在新しい情勢下において、改めて見直されはじめてきた。
 その一方安倍氏のご用を努める「二十一世紀構想懇談会」のメンバーの一人は、下司の勘ぐりよろしく、「今頃反ファシズム戦争を想起させようとする試みは、日米の間に楔を打ち込もうとする陰諜だ」などと論評している。
 まア、この際だから申し上げておこう。あの人びとが、ふたこと目には呪文のように繰返す“自由と人権、民主主義や法の支配を重んじ、日本と価値観を共有する国々との連携”という百曼荼羅についてである。このうたい文句が、彼の悪名高いダブルスタンダードで裏打ちされていることについては、今更論を俟たないいところだが、それはそれとして、その他にも大切なことがあるのだ。
 どだい、民主主義か社会主義かという、二者択一的な設問が、ナンセンスなのである。それをいうのなら、資本主義と社会主義の二つのうち、どちらがより多く民主主義を保障してくれるのか、という問いかけでなければならない。
 もちろん、正直なところ現下の情勢は、なんだかんだといいながらも、資本主義の方がいくらか威勢がよく、社会主義はやや旗色が悪いように見受けられる。だが、競争は終わったわけではない。またこのままで、終わらせてはならないと思う。
                         ※   ※   ※

 『ブリキの太鼓』で知られるドイツの作家、ギュンター・グラス氏の訃報が伝えられた。ナチの非道と、当時それにつき従った民衆をあれほど深く追及したこの人は、またそれ故にこそ、自己の過去とも真剣に向き合い、更に現在のパレスチナ・ガザ地区の現実にも目をそむけることが、できなかったのである。哀悼。
                                                2015・4・17


いまに吠え面をかくことになるゾ
  それまでせいぜい太平楽を並べたまえ       231

“昨日暴言と思われていたことも明日は常識とみなされるようになるだろう”
 こんな諺があったかどうか、いささかあやふやな気がするけれど、国会で自衛隊を「わが軍」と称して“恬として恥じない安倍首相の姿から察しられるのは、「内外の世論の風向きは、俺の味方になってくれつつある、文句あっかーというふてぶてしい自信である。
 時間を掛け、権カにものを云わせ、メディアを手なずけ.人びとの思考領域にもズカズカと入り込んで、存分に引っ掻き回した挙句、ここらでホンネをしゃべってもよかろうというのか、ついに口外するに至った開き直りの言辞であった。
 だが、われわれは安倍氏に警告したい、こんなことが簡単に許されると思ったら、大間違いだゾ。早い話“軍”という表現が、わが国民の間でどんな受け止め方をされているか、考えたことがあるのか…。そしてその中でも、とりわけ沖縄である。
 いま、辺野古沖の米基地移設作業をめぐって、翁長知事に代表される同県民と安倍政権との対立がクローズアップされているが、この沖縄県の民意は、第二次大戦終盤の地上戦における、日本軍の行動に由来する過酷な経験に基づき、七十年を経てなお払拭しきれぬ深刻な思いを“軍”という言葉に対して抱かせているのだ。
                         ※   ※   ※

 だが愚かなり、安倍政権は浅はかにもアベノミクスの一時的な成功に有頂天になり、そのためやることなすこと全てにわたって、およそ気配りとか慎重さとかが見られなくなっている。
 防衛力、抑止力の強化といいさえすれば.何でも通せる、体裁などどうでもよいと思っているらしく、現にワシントン詣で真っ最中の高村自民党副総裁は、米国与野党の知日派が超党派で作った、集団的自衛権行使と地理的制約除去を迫った対日政策の提言書に沿った安倍内閣の方針を、米側に伝達するだけのメッセンジャーに過ぎないとすら言えそうな惨めな役割を、嬉々として勤め上げているようだ。

                         ※   ※   ※

 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)には、ここにきて欧州諸国をはじめとする多数の国々が相次いで参加を表明し、日米政府首脳を慌てさせている。アメリ力主導の世界銀行、国際通貨基金(IMF)アジア開発銀行といった既存の秩序に対抗する新興勢力の旗頭たる中国のイニシアチブで提唱されたこの動きは、当初なんといっても既成の世界秩序の象徴たるアメリカがにらみを利かす限り、欧州を中心とした先進国は、それに呼応するわけにも行くまいという見方が強かっただけに、アメリカとその尻尾にくっついて動き回る日本は、思いがけぬ困惑と狼狽に襲われているようだ。
 安倍政権は、麻生財務相の談話という形で「運営の透明性が保障されていない」という態度保留の立場を繰返して延べているが、ホンネはアメリカに泣きついて、なんとか参加の“お許し”を得たいというところらしい。まアいずれにしても、ワシントンのご意向を伺ってからでなければ、何事もことが決められぬというのでは、“日本を取り戻す”といううたい文句が泣くというものではないか。
                                               2015・3・31


こんなにも
  鉄面皮な振る舞いがよくできるな
   ホトホト呆れる安倍自民党              
230 
 

 わが国の政治情勢は、最近ますます悪化の度合いが深まってきた。
 安倍内閣は、彼らがその制定のため血道をあげている自衛隊派遣恒久法の運用基準について、国連決議その他の国際機関によるお墨付きも必要としない手段を、追求すると臆面もなく言い始めている。
 このことは、NATO的な条約のない東アジア地域においては、事実上アメリカの思惑通りに、わが国の行方が決められてゆくということを意味するものだ。
 安倍自民党は、つい最近まで言ってきたコトバを平気で投げ捨てて、全く正反対といってもいいような主張を、平然と嘯く破廉恥さを見せている。
 高村副総裁は、「周辺地域とは地理的概念にあらず」と広言し、とはいえさすがにいくらなんでも、この“周辺地域”なる表現はもう通用しないので、“存立事態”とか“重要影響事態”とか苦し紛れの文書をひねり出した上、それらの“新事態”に対応できるよう、戦争をやっている他国軍に随時支援の可能な恒久法(一般法)を作り上げようという狙いから、連立政権のパートナーの公明党を口説き落そうと懸命だ。“平和の党”が売り物の創価学会=公明党…、果たしてここで踏ん張れるのか、それとも押し切られてしまうのか、いったいどうなるのだろう。
 そして、それにも増して重要なことは、革新勢力を中心とする野党陣営が、かかるあからさまな挑戦に対して、文字通り小異を捨てて大同につくことができるのか、まさに剣が峰に立たされたということである。
                         ※   ※   ※

 メルケル独首相の来日を機に、原発再稼働やそれと並んで近隣諸国との関係を問う論調が、さすがにメディアでも目立っていた。最近死去したワイツゼッカー元大統領の遺した言葉とも絡め、戦後七十年を間近かに控えて何かと比較されることの多い、日独両国の第二次大戦に向き合う姿勢の違いだが、安倍首相にとって頭の痛いこの問題、それゆえにこそ菅官房長官の言い訳じみたコメントも出てきたわけであろうけれど.まア安倍、菅ご両人に多少とも同情できるのは、ナチズムと日本軍国主義とではその“悪”の規模、性格が異なるという点である。もちろん、だからといって日本の戦争指導者たちの責任が、免除されるというわけでは全くない。加えてもう一つ重要なのは、昭和天皇の戦争責任が、この国ではほとんど論ぜられることがないという、奇妙な現実である。
 第二次大戦中、最高の位置にいた人物が、自らの戦争責任について終生語ることがなかったという事実は、多くの日本人にはそれぞれの免責のために、ずいぶんと好都合であっただろう。この点は、良心的な保守派の論客も夙に指摘しているところであった。

                         ※   ※   ※

 ロシアの野党指導者が、クレムリンから目と鼻の場所で何者かに襲われ暗殺されたため、いろいろな憶測が飛び交っている。無責任な噂の中には、プーチン政権の自作自演ではないかとするものまであるようだ。
 あの国では、これまでもこうした犯罪の真相は、すべて闇の中に包み込まれたままだなどと、したり顔で報する西側のメディア関係者も見受けられるが、そんなことをまことしやかに言いふらすなら、そしてそれを真に受けるなら、かってのジョン・F・ケネディの暗殺事件の真相は、いったいなんだったのかということになってくる。今に至るも謎のままではないか。
 更に英国の諜報機関のボスは、こんな風に語ってもいる。「われわれならもっと上手に巧妙にやってのけるゾ」

 皆さん。いま世界で起こっている出来事をすべて、そのまま額面通り受け取ってはならない。よくよく吟味を重ねた上でなければ、信用できないことがあまりにも多いのである。
                                               2015・3・16


★安倍首相よ あなたは恐ろしいおヒトだ
    だが国民は負けないだろう            229 


 内容空疎、意味不明等々の受け止め方もされた安倍首相の施政方針演説だが、なかなかどうして最近例を見ない“重要な中身”の詰まったとんでもない長広舌長談義であった。
 演説中、「改革」という単語を三十数回も繰返したそうだが、とにかく時計の針を七十年も逆回しにして、第二次世界大戦後積み重ねられてきた歴史を、根底からひっくり返し、あやしげな価値観を押し付けようとする不逞な魂胆が、見え見えである。自らの思想の薄っペらなところは、先人からあれこれ借用してごまかそうというのか、岩倉具視(100%ワルの明治疑似革命の仕掛け人)や、吉田松陰、岡倉天心(この二人は明暗両方の顔を持つ複雑な存在)の言葉を挿入して、人びとをたぶらかすのに懸命であった。
 さて、今なお時を得顔に、言いたい放題の安倍晋三氏だが、この男、本質的には超大国というご主人の庇護を受けて、その枠内で彼の持論の実現を目指すという、一種綱渡りみたいな芸当を演じているわけである。かかる人間は、敵手として、結構手ごわいかもしれない。
 それかあらぬか、最近つぎのようなことがあった。

                         ※   ※   ※

 衆議院の本会議だったか、予算委だったか、岡田民主党代表が、野党時代の安倍氏の現憲法制定時の状況についてのコメント―占領軍によって早々の間に決められたとする―をとらえて、今でもその見解を変えていないかとただしたところ、首相は「真実を語ったことがどうして悪いのか」と、真正面から開き直ったのである。そして、実を云うと気掛かりな点はそこから始まるのだが、この仰天の安倍答弁をどのテレビ局も日刊紙も、全く取り上げなかったらしい。さらに岡田代表も他の民主党議員も、その後の国会審議の場で、およそこの件に関してひとことの追加発言も行なっていないのである。この不思議な過程は、われわれに何を物語っているのだろうか。岡田代表は、ひょっとすると首相が(内外の反応を気にして)かっての発言の修正なり、それに関する釈明なりを行うのではと、期待していたのかもしれない。それが予期に反して、あの居丈高な答弁が出てきたので、たじたじとなり二の矢をつがえられなかったのではあるまいか。
 さらに推測するならば、憲法制定にまつわるいきさつを率直に語ることは、一種タブーみたいなものであり、これに触れることは望ましくないという自己親制約心理が働いていたと考えられなくもない。
 しかしわれわれは、ここに誰憚ることなく宣言したいと思う。
 現行憲法が、第二次大戦の勝利者としてわが国を占領していたアメリカの意向を強く反映して作られたものであることは明々白々な事実である。それを隠す必要も恥じる必要も、さらさらない。と同時にこの憲法が、国際ファシズム打倒後の世界的な民主主義的潮流の高まりを背景として、生み出されたこともまた、なんぴとも否定できぬ歴史の真実なのだ。
 時が流れ、アメリカの世界政策がどう変わろうと、日本国憲法の持つ積極的意義は、増大こそすれ衰えることは決してない。とリわけ九条に表現されている理念の光芒は、この憲法の中の否定的要素(第一条の象徴天皇規定に始まる第一章天皇条項)を補って、余りあるものである。
 それにしても安倍氏が、占領者によって作られた憲法だから改定しなければならぬと言い放ったのは、なにも自らの独立独歩の証ではなく現在ではこういうことをしゃべるのがむしろ超大国の意に適う所以であることを、よくよく承知しているからに他ならない。

                          ※   ※   ※

 こうLた状況下、今内外の耳目は、来る八月発表と予想される安倍首相の「戦後七十年談話」に集っている。安倍氏の一連の言動の帰結として、どんな談話が飛び出すことやら、彼がその意見を参考にするとしている。お手盛りの有識者懇談会(二十世紀構想懇談会)のメンバーを見ると、北岡伸一氏、中西輝政氏などといった超札付きの反動派の顔が目盛つ。
 いずれ悪知恵の限りを尽くすであろう密室での画策を経て、結論が出来上がるわけだが、重大な関心を持って、そのなりゆきを注視したい。
                                             2015.2.27


★憎悪の連鎖を断ち切ろう
   “無法VS無法”では解決にならぬ       
228

 囚われの二邦人を、相次いで不条理な死が襲った。ISIL−「イスラム国」、彼らの行なう所業のおぞましさについては、ほとんど形容する言葉も見つからない。身の毛のよだつような報道が、連日伝えられてくる。
 さてその上で、われわれは、現在世界がおかれている状況を、冷静に眺めなければならない。ISILといい、その先輩アルカイダといい、欧米「先進」国の帝国主義政策が、自ら呼び覚ました怪物であり、鬼っ子ではないか。
 およそ存在もせぬ大量破壊兵器を、隠し持っているからと難題を吹っかけてイラク戦争を引き起こし、十数方とも二十数万とも云われる犠牲者を出したのは、他ならぬ米英を中心とする有志連合軍だったのである。
 そのことについて、反省も謝罪もせず、逆にあの当時批判的立場に立っていた仏・独なども取り込んで、情勢を紛糾させた結果が、あの悪逆な集団の跳梁跋扈をもたらしているのだ。だからいまこそ、“無法者を懲らしめるために自らも無法な手段に訴える”という不毛な悪循環を、終わらせなければならない。ただ残念なことに、それがなかなか簡単には進まぬ。確かにああいうギャングたちが相手では、「問答無用 叩き潰すのみ」という方針が、世界的にも大方の支持を受けるだろう。
 わが安倍政権も、もとより当然のこととして、そうした潮流に乗って今後の施策を進めるだろうことが、予想されるところだ。邦人救出のための自衛隊の活用、その海外派兵について特別措置法でなく、切れ目のない対応のできる恒久法の制定を検討する等…しかも、その画策の向こうには、九条潰し、憲法の改悪が当然想定されているだろう。
                         ※   ※   ※

 権力者とは、とにかく酷薄極まるものである。彼らは、今度のようなむごい出来事をも、自らのよこしまな目的のために、利用しようとするのだ.だが皆さん、ちょっと待ってほしい。いま何にもまして人びとの心を打つのは、後藤健二さんの母堂の言葉であろう。だれよりも悲しみと怒りの只中にいるこの人は、メディアの問いに対して、「この悲しみが憎悪の連鎖となってはならないと、心から念じている。戦争と貧困から子どもたちの命を救いたいという健二の遺志を、引き継いでゆくことを願っています」と答えたという。
 これこそ、われわれが、日本国民と世界の諸国民へのメッセージとして伝えるべき、重く尊い呼びかけでなければならない。実践の課題としてどう肉付けするか、真剣に考えていこう。

                         ※   ※   ※

 先月末のギリシャ総選挙は、EUとIMFの諦め付けに屈した、それまでの同国故府の反勤労者緊縮政策に対する国民の怒りが爆発して、新しい政権が誕生する結果をもたらした。
 EU首脳部も、なかなか難題を抱え込んだわけだが、更にもう一つ彼らは、最近またも紛糾の度を増しつつあるウクライナ情勢に関しても、頭が痛いことであろう。この問題、もとはといえば、アメリカにそそのかされて始めた緊張激化に端を発しているのだが、いまとなっては退くに退けず、進むに進めずといったところか。
 諸外国は、とにかくウクライナへの干渉をやめよ!そもそもウクライナには、古代ルーシ以来の兄弟国ロシアと争わねばならぬ理由など、何一つないのだ。
                                             2015・2・12


★囚われの同胞を取り戻そう
    世界から不条理をなくすための第一歩に 227

 「イスラム国」と呼ばれ、最近ではISISとかISILという略称も頻繁に用いられるようになった中東の超過激派集団が、引き起こすテロ行為については、今さら改めてその非を論ずるまでもない。
 ただ邦人二人を巻き込んだ今度の事件は、つい先日のパリでのショッキングな犯行の報道時には、遠い欧州の出来事として、それほど身近な脅威とは感じなかったであろうわが国の多くの人びとにとって、現在地球を覆っている不条理さを厭というほど味わわされる衝激となったのではなかろうか。
 さて、ここで確認しておきたいことがある。わが政府関係者は、二人の同胞があの危険なグループに囚われたことを知りながら、何故その後五ヶ月とか、ニヶ月とかの長期にわたって、ほとんど無為に近い対応に終始してきたのか?のみならず政府は、彼らの救出を目指す民間人の動きに対して、そのことがあたかも国益を損なう行為であるかのように曲解し、妨害さえもしたのである。
 そうした理解に苦しむ態度を続けた挙句、安倍首相は最近の中東訪問の途次、エジプトであの不用意な発音を行なって、彼ら非道な集団に格好の口実を与えたのであった首相の無思慮を指摘する声もあるが、われわれは、今そのことは問うまい。要は救出に向けて、日本国の政府が、これから何をするかということである。
                         ※   ※   ※

 そもそも、「断じてテロには屈しない」という立場と「救出を最優先の任務とする」という主張とは、簡単に両立できるものではない。
 それが矛盾しない道といえば、例えば奇襲部隊の突入によって、人質を解放するという方法ぐらいしかなかろうが、そんなことは現実的には、まったくの空論である。だとすれば、選択肢としては押したり引いたりの長期戦に持ち込んで、向こう側がくたびれて軟化するのを待つか、それともちょっと見には、こちらの負けと見られるのもやむなしと割り切って、相手の言い分どおり、ヨルダンで囚われているあちら側の女性の解放と引き換えに、日本、ヨルダンの人質を取り戻すという苦渋の道を採るか、二つのうち一つということになるだろう(この場合ヨルダン人の人質については、表面上は向こう側の提案の中で、まったく触れられていないわけだが)。
 後者を選んだ場合“いかにも敗北”という印象を内外に与えるかもしれぬが、あえて断言するけれど、此度の難題は決して単純な勝ち敗けの問題じゃあない。“負けて勝つ”という場合もあれば、“勝って負ける”という結果を生ずることもありうる。
 それにTSTLという組織も、まったく理性のかけらも持ち合わさぬ人間の集りというわけでもあるまい。 非情で冷血な人びとによって、動かされているシステムであるとしても、逆にそれゆえにこそ、己のやっていること、やろうとしていることのもたらす得失について、覚めた判断が可能な連中なのではなかろうか。
 弱みを見せれば我らに自信を与え、更なるテロ行為の激化を許すだけだとする見方が強いけれど、しかしながら別の予想も成り立つ。「イスラム国」が、今後もかかる所業を繰返すとすれば、長い目で見て彼らの孤立・敗北がまぬかれぬことを、我ら自身悟らざるを得なくなり、その崩壊が加速されるのを放置するか、それがいやなら、重大な汚点の転換を、選ばぎるを得なくなるのではないか。
 そして、われわれの側も、これまでの経験を踏まえ、大きな飛躍のキッカケを掴まねばならぬ。なにぶん長期にわたって、“誤った行為を根絶するために誤った手法を取り続けてきた”のだから。

                         ※   ※   ※

 奥平康弘氏逝去の悲報が伝えられた。氏は九条の会の呼びかけ人の一人であり、そして表現の自由の屈することなき擁護者として、特定秘密保護法、集団的自衛権の画策に対する痛烈な告発者として人びとを励まし続けたのである。
 遺志を継いで進もう。
                                             2015・1・31

 ■衝撃的な報せが入りました。言葉も出ない思いです。
 そして問題は今後の見通しですが、安倍首相の談話に見られる“眼には眼を”といわんばかりのスタンスからうかがえるのは、事態がいっそう悪化こそすれ、とてもよい方向への期待は持てそうもないということではないしょうか。長期的にはともかく短期的には、わが国の世論も極めて尖鋭化し、ナーバスになり、内外の諸問題に対する姿勢も予測困難になりそうな気がします。全く視界がハッキリしません。ともあれ光を求めで努力するのみ。あなたのご教示、ご助言をおねがいいたします。

                                             2015・2・1

★働く者の立場からの未来像を!
    自信と覇気を取り戻せ             
226

 
本通信の担当者の目に留まった順に時系列的に並べると、昨年度地元日刊紙のコラム欄に掲載された犀利な批評で知られる「前」氏の紹介文、次に元旦のA紙の一面をフルに使ってのインタビュー記事、更には三日のM紙の“希望を求め議論始めよう”と題した社説、そして十日には遂にNHKの夜のニュース番組にも取り上げられるという、超話題性を持った人物の登場だ。
 これぞ今や“ピケティ現象”と呼ばれるまでに至った、フランス気鋭の経済学者トマ・ピケティ氏その人である。彼の著した『21世紀の資本』は、結構な分量の力作であるにもかかわらず、昨年邦訳されるや引っ張りだこの評判で、各地の図書館も閲覧希望者が大勢順番持ちという盛況だという。
 暴威を振るう巨大資本、それにどう対峙するか、彼らに掣肘を加える手立てはあるのか。その疑問への回答として、ピケティ氏は国際協調による富裕税の創設を唱えているのだが、にもかかわらず同氏は資本主義のシステムそのものは否定せず、平等と資本主義は両立すると説き進めるというのだから、話がややこしい。
 しょせん資本主義の延命が目的じゃないのか、といったシニカルな見方もある一方、いやあれで未来に向けての貴重な指針になりうると、大いに肯定的な評価を与える人びとも多いようだ。
 まアむずかしいことは分からぬが、さしあたり資本主義社会の終焉ということが近未来の現実的課題になりそうもないとするなら、ここ当分(といってもかなり長いタイムスパーン)どうやってこの不合理な在りようにメスを加えてゆくのかというテーマは、全世界の多くの人びとにとって、思想的立場を越えた切実な関心事たらざるを得ないだろ−。
 現にわが国の革新政党も、富裕税という主張を前面に出している。資本主義の廃絶が入類の最終目標であるとしても、その仕組み自体はまだまだ長期にわたって生命力を持ち続けるのであれば、当面こういう方法で強い圧力を加えることを以って“よし”としなければなるまいから。
 しかし、しかしである。われわれ労働者、勤労市民には、過去の長い経験を踏まえつつ未来を獲得せねばならぬ歴史的使命があるのではなかろうか。
 いまピケティ現象をもたらしている状況について、更なる考察を進めると共に、真の解決を生み出すための実践と理論探求を目指して、明日といわず今日からその第一歩を蹄み出そう。

                         ※   ※   ※

 フランス、パリで起こった衝撃的な事件は、現在世界を覆っている不条理をまたしても全世界の人びとの前に、突きつけて見せた。
 この非道で冷酷な犯行は、しかし多年にわたって繰り返されてきた“誤った行為を終わらせるために 誤った手段に訴える”という、悪循環のもたらしたものといえないこともないのである。
 欧米諸国の政策が推進される過程で、結果約にそれら先進国におけるイスラム国、中東の諸国民への差別・偏見が強まり、更に一方では回りまわって、EU諸国内での雇用情勢、労賃、失業問題の深刻さの増大をもたらすという、否定的現象を生み出すことにもつながっているのだ。
 それはまた必然的に、いわゆるイスラム過激派の台頭、拡大を引き起こすと同時に、西欧各国の移民排斥運動を伴うウルトラ民族主義的潮流を、強める結果をも招いている。
 事件後行なわれた第二次大戦以来、最大規模といわれる抗議のデモ行進の意義は、無論大きい。そもそもフランス大革命のスローガン−自由・平等・博愛−のうちの博愛は、「寛容」という概念を含み、異なる考え方、生き方との共生を包摂するものなのだ。パリで120万、仏全土で370万の参加者の行動が、「イスラム国」、アルカイダなどの過激行動への拒否に止まらす、いまフランスのみならずオランダ、英国等、他の西欧諸国でも深刻な脅威となっている反移民的、超国家主義的勢力に対する警告をも含んでいるとするなら、この行進のもたらす影響力には、更に期待がもてるというペきであろう。

                         ※   ※   ※

 国内政治はどう動くか。民主党の代表選挙などの結果を見据えようという動きもあり、目下待機中という感じもする。
 安倍首相と政権与党は、総選挙による「絶対多数」を誇示しつつも、沖縄県全選挙区の敗北など不吉な影も背負っている。今年こそ彼らに追い討ちを掛け、われわれの反転攻勢を成功させなければならない。
                                                2015・1・14


★とにかくまとまった行動を!
巨大与党と対決するにはそれしかない         225

 政労使会議における安倍首相の発言は、彼が新自由主義・サッチャー=レーガン路線から、たとえゴマカシにせよ一歩抜け出したように振る舞っていることを示した(その口の下で個人減税大幅実施約束するなど、インチキ振りがすぐばれてはいるけれど)。
 また“好循環を全国に”との触れ込みで公表した地域活性化策を柱とする経済対策は、ただ明春の統一自治体選を視野に置いたその場目当ての付け焼刃というに止まらず、彼らなりの探訪遠慮の産物なのであり、人口減少問題の克服を目指す五ヵ年の総合戦略も、周到に作られた大網の一環にほかならぬ。一言で言えば、アチラさんの打つ手は結構侮れぬものなのだ。
 だがその反面、外交、安全保障、憲法等々の問題となると、安倍晋三氏は別の顔を見せる。彼自身そのことを隠そうともしないわけだが、祖父岸 信介の悲願をぜひとも実現しようとする野望を、公言して憚らない。総選挙で「圧勝」した余勢を駆って、これから硬軟使い分けつつ、手練手管の限りを尽くすことだろう。
                         ※   ※   ※

 次に、彼と自公政権を迎え撃つ野党陣営、とりわけ革新政党のスタンスについて注目してゆきたい」社民党―長い停滞状況をなかなか克服できないこの党―は立憲、平和、リベラル政治勢力の統一を唱えつつ、しかしこの党の原点たる社会主義=社会民主主義の理念が、忘れられがちになっているように見受けられ、また本来ならもっと友好的でなければならぬ共産党との関係も、よそよそしいままである。
 そして、その共産党はどうか。依然として、自党だけが真の変革を実現しうる党だと主張し、他党を見下す態度を捨て切れていない。“一点共闘”という呼びかけは正しいと思われるが、何分過去が過去だから、なかなか他党から信用してもらえないようだ。面倒な議論はひとます棚上げにして、とにかくもうちょっと“徳のある政党”に脱皮してほしい。
 革新両党は、そのうえで協力が可能な全ての政治勢力と手を結び、横暴の限りを極める巨大与党に対峙すべきではないか。
 こんなことを言っていると、夢物語りみたいな話だと笑われるだろうけれど、現在の危険な政治状況を変えるには、そうするしかないのである。
                         ※   ※   ※

 国外を眺めると、あちこちで見通しにくい情勢が、展開しつつあるようだ。
 アメリカ、EUの露骨な挑発を前にしたロシアは、輸出用原油価格の下落という有事も加わって対応に苦慮しているが、中国やその他のBRICS諸国との連携を探りつつ、態勢の立て直しに乗り出している。
 米・キューバ国交再開交渉の影響はどうか。ドル外交、北米資本主義の流入に対し、そのキューバをはじめベネズエラなど反帝国主義の旗を掲げる国々の政府と国民が.いかに立ち向かっていくか、今まさに真価が問われようとしている。
                         ※   ※   ※

 さて、多事だった2014年も、あと1〜2日を余すのみとなった。万感の思いを込めて、メッセージを送ります。 皆さんいいお年を2015年がすばらしい年となりますように。
                                               2014・12・29

★総選挙後の展望を如何に切り開くか
     年の瀬を前に内外情勢は混迷        
224

 十二月十四日の結果は、まア事前の予測から大きく外れるものではなかった。そもそも政府与党側が、自らの都合で本来必要もない、解散・総選挙を強行し、彼らの思惑通りにすべでを運んだ挙句の話である。安倍晋三氏の薄ら笑いが、眼に見えるようだ。
 考えてみれば、五年前あれほど国民の期待を集めてスタートした民主党政権の施政が、周知の通り惨憺たる姿をさらした挙句終焉してから、まだ二年しか経っていないという現実がある。
 この二年間という時間は、国民にとって忘れ去るには、いささか短か過ぎたというべきか。そこへ持ってきて、民主党をはじめとする各野党の間には、行動の統一という姿が殆んどみられず、共同政権を作ろうとする真摯な努力の跡も感じられぬ有様だったのである。
 野党の足元を見透かしたかのように、政権側がぶつけてきた“この道しかない”という恫喝に対して、全野党を結集しての「統一政治経済政策」の提示がなかった。これでは、多くの選挙民の支持を受けることなど、とうでいできない。惨めな成績に終わることは、最初から分かりきっていた。

                         ※   ※   ※

 その中にあってやや注目されるのは、共産党の伸長と次世代の党の大不振である。反自公を唱えながらややもすると腰砕け勝ちの他党と比べて、その歯切れの良さが水際立っている共産党の前進は、当然といえば当然だが、冷静に眺めるなら自民の勢いがよいときは、共産党も支持を増やし、自民の評判が下落すると中道派が影響力を拡大するというのは、一種の物理的現象みたいなものだともいえそうだ。
 だから、共産党が今日の成功をきっかけに、従来の唯我独尊的な方針と決別して、すでに自ら提唱している。一点共闘を主軸に据えた方向に、舵を切るなら、この党とわが国の未来には大きな期待も持てようというわけだが、さてどうなるか“自共対決”という選挙戦最中には有効だったスローガンに、いつまでも固執しないことを望みたい。
 一点共闘が、裏を返せばその他の意見の合わぬ諸点については、相変わらずのスタンスで他党に対するということでは、仕方がない。よくよく柔軟な姿勢でやってくれるように願いたいし、また、せっかく法案単独提出権も得たのだから、その行使については、最大限有効適切な効果を発揮するよう、万全の考慮を払っでもらいたいものだ。
 次世代の党の予想を超える衰退は、どう見るべきだろう。安倍自民党の更に右に位置する政策を掲げたこの党は、安倍首相が全体として彼ら顔負けの超保守イデオロギーを標榜していることにより、その特徴が色あせて見え、しかも一方では、“自主憲法制定”という自民党の現行憲法改悪よりも更にあくどい超ワルの主張を公言したが為に、保守的な有権者からも、「二階が建ってもいないのに今から三楷のことを論ずるつもりか」と酷評され、そっぽを向かれてしまったということのようである。
 そして付け加えるならば、この国では下からのファシズムというのは、民衆の中にどうも根付きにくいのかもしれない。お上に楯突くことは畏れ多いという潜在的心理が、まだまだ広く染み付いている。このお上は、時には簡単に上からのファシズムに移行し得るものであり現に安倍政権は、その一歩手前のところまで歩みを進めてきているようだ。
 危ない、危ない、本当に危険な水域に差し掛かってきたゾ

                         ※   ※   ※

 政府、経済界、労働界の代表者による政労使会議、ループル急落によるロシアの経済危機が世界に及ぼす影響、米・キューバ国交再開交渉etcどれをとっても単純な論評を許さぬ、複雑微妙な問題だといわねばならない。
 われわれは、波乱含みの裡に、年の瀬に向かいつつあるようだ。
                                                2014・12・21

★この道はいつか来た道
     ああ そうだよ戦争への道            
号外

 公示から六日経ち、投票日まで1週間足らずを残すだけである。
 もっぱら“アべノミクス”の是非をめぐって選挙戦が展開されているように伝えられ、もちろんそれはそれで重要な意味を持っているが、そのほかの大きな問題―わが国の進路、内外の平和と安全等々に関する論点―については、政府・与党筋や大多数のメディアはあたかも些細で第二義的なことであるかのごとく、取り扱おうとする姿勢が見え見えのようだ。
 だが事実は、この間にあっても安倍政権は、着々と危険な画策を続けている。一例を挙げると、外務省はモンゴル共和国に眼をつけ、あの草原の国との間に、経済交流に止まらず安全保障の分野にまで入り込んだ協力関係を、構築しようとしているそうだ。中国を北方から牽制し、且つロシアにも睨みを利かそうとでもする腹づもりか、まったく火遊びもいいところである。
                              ※
 集団的自衛権については、相変わらずご用学者やゴマすり評論家を動員して、七月一日の閣議決定を合理化する詭弁的論理を繰り返すなど、ボロ隠しに懸命だ。集団的自衛権があってこそ、それが戦争の抑止力になると強弁し、その証拠としてNATOが発動した集団的自衛権は、あの9・11の後のアフガニスタンへの報復攻撃だけだなどといている。
 だが現実はどうか。例えNATOが決裁しなくとも、国連が“ノー”といっても、アメリカはやろうと思えばいつでも戦争をやってきた。自分に同調した国々と一緒になって作り上げた「有志連合」によるイラク戦争がそうであり、それに先立つベトナム戦争がそうだったこと―これらは、だれ知らぬ者もない歴史の真実である。
 そして、安倍首相はアメリカから要請されれば、国連のお墨付きなどあろうがなかろうが、ご主人の言葉通り嬉々としてつき従うだろう。彼が相手の頼みをキッパリと断わる姿など、想像することもできない。だから、だから、インチキ学者や評論家の言葉を真に受けてはなりませんゾ。
 安倍自民党も、自分たちの偽りの主張が、簡単に国民に受け入れられるとは、おそらく思っていない。それゆえにこそ、連中は選挙戦の間、この問題についてあまり触れてもらいたくないのだ。
 しかし、われわれの立場は違う。相手が避けるテーマを積極的に引っさげて、追い込んでゆかねばならぬ。これこそが、わが国と世界の平和を確実に守ってゆく道なのだ。
                              ※
 さもないとあちらさんは、この総選挙であやしげな「ミソギ」を終えたと称して、向こう四年間の自由裁量権が委ねられたとする、コワモテの態度に転じてくるだろう。どんな強圧的政策で、臨んでくるかも分からない。
 われわれにとって、絶対に負けられない正念場なのだ。 ダメよ〜ダメダメ 集団的自衛権
                                               
                                                2014・12・7

★毅然とした方針でたたかいに臨もう
     至るところに対決点はあるゾ!         223

 公示まであと四日、投票日まで十六日、のるかそるかの決戦が始まっている。
 安倍氏は、自ら“アベノミクス解散だと公言した。いまや誤魔化しきれないボロが次々に出てきて、それゆえにこそこれ以上傷口が広がらぬうちに、なんとか優位を保ちつつ、選挙戦に臨もうという浅ましい魂胆であること明らかである。
 ただそうはいっても、野党の側だって反阿部・反自民の強固な布陣が形成されているわけではない。安倍自民党が“他に対案があるか この道を進むしかない”と居丈高に開き直る背景が、存在するわけだ。
 でも二年間にわたって、人々を欺く手練手管を続けてきたやりくりもようやく底をつき、残された悪知恵もいよいよ限られたものとなっている。まアそれでも、彼らは、アベノミクスという呼び名で表わされるごまかしの経済政策だけは、この期に及んでも何とか飾り立て、癒着を生き延びさせようと、徒な望みを捨てかねているわけだ。
 そのことで手いっぱいの彼らは、それ以外の重要なテーマ=原発再稼働の是非、特定秘密保護法のあり方、集団的自衛権論議の今後、そして安倍氏の悲願たる憲法改定の野望等々すべて彼らにとって防戦一方にならざるを得ない諸問題=に関しては、できることならあまり大きな議論にさせないよう、なるべくそっとしておき.選挙後に機会を見て奇襲攻撃を掛けようとする魂胆であると、うっかりかわざとか口を滑らしている。
 さらに、彼らにとっておおきな弱点となっているこれらの諸懸案が、一面野党陣営の中でも、各党なかなかまとまった対応ができかねているという点に着目し、いろいろ揺さ振りをかけて、亀裂を拡大させようとするねらいが見え見えだ。
                         ※   ※   ※

 早い話が、わが島根の情勢はどうだろう。島根一区の自民党の候補者は、原発再稼働の熱心な推進者でり、また彼の悪名高いカジノ開設の音頭とりみたいな役を務めている人物である。またいささか旧悪を暴くことにもなるが、弥生時代の貴重な文化遺跡田和山遺跡の保存に関し、一貫してサボタージュの姿勢を変えなかったおヒトであることも忘れてはならない。自民党の悪政の象徴みたいなこの現職政治家に、総選挙という絶好の機会をとらえて、審判を下すことができれば、ホントに願ってもないことだと思う。
 ところが、メディアの報道は、民主党の島根県連は、安全性が確認できれば原発再稼働をさせるとの方針を出したという、全く耳を疑いたくなるようなニュースを伝えている。こんなスタンスでは、闘いにならない。未だ時間は残されている。早急に考え直すわけにはゆかないのか。

                         ※   ※   ※

 黒人青年を射殺した白人警察官の不起訴を機に、暴動に発展したアメリカ・ミズ一リ州の事件は、全米の注目を浴び、さらに海を越えて世界中に伝えられている。
 抗議の方法について色々見解が分かれるとしても、この問題が米国社会の病める部分をあらためて明るみにさらしたことに、疑いの余地はない。あの国の為政者たちも、自分たちの国を諸国家の模範みたいに吹聴することは、そろそろおしまいにしてもっと謙虚な態度をとるべきであろう。

                                                2014・11・28
売られたケンカは買わざアなるめえ
 この機会を巨悪政治打倒の第一歩に         222 

 権力者たちの心の内を、忖度してみる。
“解散、総選挙は総理の専権事項だ 本人以外誰にも判らぬ 受けて立つだけだ”…しゃあしゃあとしてそんなことを口裏を合わせていってきたのが、巨大与党の幹事長、内閣官房長官、自他共に認める大物閣僚といった面々だ。
 だがその実彼らは、御大が国内にいる時も、海を越えて飛び立った後も、北京だろうがネピドーだろがプリスべーンだろうが、常に連絡を取り合りて何時いかなる時をとらえ伝家の宝刀を抜くべきか、悪知恵の限りを絞っているのだろう。
 虚栄に彩られたアベノミクスにもようやく秋風が立ち始めて、前途の容易ならぬことが誰の眼にも明らかになりつつあり、見掛け倒しの金融規制緩和の延長も、独占資本や富裕層のみを潤すごまかしに過ぎぬことが動かせぬ現実として、露呈されてしまった現在、彼ら政府与党並びにその陰に控える魑魅魍魎たちは、このままではジリ貧に陥る、やるなら今のうちだというので「決断」を下そうというわけだ。
                             ※
 こんな場合、常に権力を握っている側が有利な立場を占める。テメエにとって一番好都合なタイミングを選んで、戦闘の火蓋を切ることができるからだ。
 しかし、その彼らも泣き所を抱えている。なにしろ解散・総選挙をやる大義名分がない。そりゃあ口が裂けても、「このままでは評判を落とすばかりだ だから剥げかかったメッキが多少は残っている今のうちに選挙をやってしまうのだ」などとは、いえないだろうから。
 消費税率8%から10%への引き上げの問題をどうするかということも、彼らにとって頭痛の種である。“国際公約”と経済実態との矛盾は、さすが知恵者揃いの彼らの間でも、一筋縄ではゆかぬ難問になっていること間違いない。
 あと2%の引き上げを、仮にこれまで公言していた時期より1年6か月ずらすことにすると、法律の改定が必要となるので、その是非を国民に問うための総選挙だなんていう見え透いた言い訳が、用意されているという情報も漏れてきている。
 われわれは、権力とは自分たちの利益追及のためには.どんな手段にも訴えるものであり、その理由付けとしてナンボでもまことしやかな理屈を並べるということを、徹底的に暴露してゆかねばならぬ。
 そうすることによってはじめて、ほころびの目立ちだした第二次安倍内閣―戦後最悪の反国民的内閣―を窮地に追い込むことができるというものだ。
                               ※
 北京での日中両首脳の会見における習主席の態度が非礼なものであったとか取沙汰されたが、そんな下司の勘繰りみたいな報道はともかく、両国関係の前途がまだまだ容易でないことは、確かなようである。
 そして安倍首相は、その教日後日米豪首脳会談も行なって、これこそ“現代版遠交近攻戦略”だとばかり露骨な親密振りを、ひけらかして見せた。一方においては、BRICS(中、露、印、伯、南アの五カ国)のトップ会議も伝えられるなど、世界情勢の今後を占うことは、益々困難になってきたかに見受けられる。
 かかる時代に遭遇して、どういう進路を選ぶべきか、よくよく慎重に判断しなければならない。常に偏った報道を撒き散らすメディアの企みに、惑わされぬことが肝要だ。
                                                2014・11・17

★安倍政権を追い詰めることは容易ではない
     だがそれをやってこそ道が開ける       
221

 アベノミクスともども安倍政治には、黄信号が点り始めたかどうかよく分からないが、御大安倍晋三氏は依然強気のようだ。この姿勢、根拠に基づいてのことなのか、それとも愚かな権力者にありがちな増長慢なのか、今のところハッキリしない。
 いずれにせよ、任命責任を問われ政権基盤が揺らぐのを恐れて、進退窮まった立場の閣僚の辞任さえも許そうとしなかった、第一次安倍内閣のやりかたとは異なり、邪魔っけの出た大臣は容赦なく切り捨て、それのみか逆に野党側に対して居直りの態度にさえ転じ、「重要法案の審議を邪魔するな、なんなら解散・総選挙という手もあるんだヨ」と脅しともホンネともつかぬ素振りを見せている。
 その一方、行き詰まっている周辺諸国との関係については、さすがにうっちゃっておくわけにもゆかぬと見え、福田元首相を北京に派遣し(これが安倍氏の依頼によることは間違いないだろう)、習主席との会見にこぎつけたりなかなか芸の細かいところも、際立っているようだ。
 そして問題の消費税率だが、更に二パーセントの引き揚げに踏み込むのか、しばらく先延ばしするのか、なにぶんアメリカをはじめとする諸々の外圧には極めて弱い安倍内閣のこと、“国際公約”なるものを錦の御旗に押したてて、厚顔無恥な突破作戦に乗り出してくる可能性、多分にありと認められる。なんとしても彼らの暴走を許さぬ戦線の構築が、早急に必要だ。

                         ※   ※   ※

 最近目立ち始めているのが、第二次大戦(反ファシズム戦争)の性格を故意に曖昧にし、日本軍国主義の犯罪性をことさら小さく描き出そうとする動きである。
 加害者、被害者の関係を極力相対化して、あわよくば免罪にまで持ち込もうとしかねない破廉恥な企みすらあるようだ。それらの中にあって、保坂正康氏あたりはどちらかといえば良い方に数えなければならぬかも知れぬが、このおヒトも、重要な問題で時々腰がふらついて、おかしな発言を行なったりして否定的な役割を果たす。まアこの人物、えらそうな口を叩いているけれど、彼の得意とする太平洋戦争に関する論述の中でも、ウエーク島(ミッドウェーの西方、太平洋上の米領の島嶼)とウエワク(ニューギニア北岸)を混同して平気でいるような評論家ではあるが…。


                         ※   ※   ※

 米国の中間選挙が、いよいよ間近かに迫った。「イスラム国」問題、エボラ出血熱対策等難問を抱えて、オバマ大統領と民主党はずいぶんと苦戦のようである。“YES WE CAN”など調子のいいことを喋りまくってきたわけだが、その一方で“金持ちも貧乏人もない ひとつのアメリカだ”といったデタラメ千万な演説も繰返してきたのだから、それらのツケが回ってきたというべきか。
 とはいうものの、オバマ氏と民主党が負けるということは、とりもなおさず共和党が勝つことを意味するわけだから、これはホントにホントに困った話である。
 そんなこんなで、日本も世界も残念ながら視界不良だ。とにかく光を求めて前進を続けよう。

                                                2014・10・30

★敢えて云う
    ちっぽけな“政治とカネ”よりも
        真の悪にもっと眼を向けよ          220

 香港の青年・学生による大規模な集会、座り込みのニュースを聞いて反射的に思い出すのが、“ウォール街を占拠せよ”のスローガンをアピールして行なわれた、ニューヨークのオキュパイ運動だ。
 この両者、似ているところもあれば違った点もある。近代の扉を開いたフランス大革命は、その旗印に自由・平等・博要を掲げた。それ以来、人類はよりよい未来を日指す運動のシンボルとして、自由と平等の理念を常に前面に出して今日に至っている。
 さて、ふたつの目標のうち“自由”の方は、どちらかといえば資本主義社会の仕組みを是とする人びとが、力点を置いており、“平等”の方は社会主義的変革を求める人びとによって、熱烈に叫ばれているといえよう。とはいえ、双方ともそれぞれ一方の標語だけでは万全とはいえず、相手方のそれにもしかるべき考慮を、払わぬわけには行かぬことを認識せざるを得ないというのが、真実の姿のようだ。
 そこで問題の香港だが、次期行政長官選挙および立法会議議員選挙の制度政革を求める抗議行動は、確かに中国の中央政府の影響下にある香港政府のウイ一クポイントを、衝くものだとはいえよう。だが、その彼らにも隠しきれぬ弱みがある。青年・学生の背後には、これ幸いとばかり揺さ振りを掛けようとする、西側巨大資本(ボーイング、マクドナルド、ヒルトン等々)の野望が、見え隠れしているからだ。
 かくて.香港情勢は、やや大げさに断定するなら、万人が納得する国際秩序の規範などクスリにするほども見当らぬ、今の世界の縮図みたいなものだといえよう。国内の問題に移ると、小渕経済産業相が、自らの政治団体の会計処理の件で窮地に立たされ、松島法相と共に辞任に追い込まれた。不正が明らかになったのなら、責任を取るのは当然のことだろう。
 だが、ここで申し述べたいのはそのことではない。いったい、何故この国では政治とカネをめぐる不祥事となると、いつもこれほど物議をかもすのか。政治権力のやること、なすことについては、もっともっとゆるがせにできぬ諸悪が存在するのに…。そして率直に言わせてもらえば、安倍改造内閣の目玉人事とも呼ばれた五人の女性閣僚のうち、小渕優子氏はその人柄について採点するなら、まア“悪さ加減の一番少ないおヒトであるように思える。大臣就任当初のことだが、原発再稼動についてメディアから質問を浴びた時の返答を見ても、それがいえるだろう。
 それにひきかえ、彼女と松島氏を除くあとの三人はどうか。中でも、極右団体との接触について尋ねられた際の高市、山谷両氏の答弁たるや、その鉄面皮ぶり、開き直りの図々しさに、ただただ呆れるほかはな。かかる不遜な姿勢には、本来なら小渕経産相らに対するよりも、はるかに痛烈な批判が加えられて当然なのに、そうはならない現実、やはりこの国の政治気流の汚染は、かなりの程度まで進んでいるとみなすほかなさそうだ。
                     ※   ※   ※

 十月はノーベル賞受賞者が決まる月、この国でも受賞を喜ぶ声、期待が外れてガッカリする声さまぎまだったが、受賞してもしなくても、立派な業績、人類へのすぐれた貢献に対しては、なんぴともそれへの評価を惜しむものではないのだろうから、あまり結果にこだわるぺきではなかろう。
 ただ事前に大騒ぎをやり、メディアも結構それに振り回されてはしゃいでいたケースも見られたようだが、そんなフィーバーの後、受賞を逸した人に対しては、ずいぶん失礼を働いたということにはならないか。ここは、やはり反省が必要となろう。今後の報道姿勢は、どうあるべきなのか。
                        2014・10・21

★軽視できない“「朝日」叩きの裏に潜むもの
    権力の陰険な狙いにパンチを浴びせよう   
219

 このところ朝日新聞叩きが、盛んなようである。
 従軍慰安婦問題に関して、この論調が以前ガセネタを根拠に事実と相違する報道を広め、大いに世論を惑わし、国益を損ねたということらしい。
 そしてこれだけに止まらず、この際とばかりその他のいろんな瑣末事まで持ち出して「日本の良識」を代表すると称されてきた同紙に、ケチをつけようとおおわらわになっている有様が、見て取れる。かかる状況の背景に、何があるのか。
 第二次大戦後広く普及している歴史観が“自虐史観”によってゆがめられていると断罪し、過去の亡霊を呼び戻して世界に背を向け、近隣諸国へ居丈高な姿勢で臨もうとするこの国の支配的勢力、およびその代理者たる安倍内閣が控えていること、今更いうまでもあるまい。
 われわれは、なにも「朝日」をすべてにわたって、弁護しようとは思わない。卒直に言えば、この新聞、似而非リベラル、インチキ良識の体現者に過ぎぬと決め付けても、差し支えないくらいのものだ。
 だが、現在朝日叩きに狂奔している連中、特にその中にあっても、同業者として論難攻撃の中心的役割を果たしている「読売」「産経」両紙に関して意見を申し述べるとすれば、ただひとこと、“汝ら、権力者・支配勢力の走狗よ、醜い振る舞いもほどほどにしろ”という他はない。
 それにしても.この国の革新勢力は、なにをしているのだろう。いろいろな場面、状況において、あちらさんの画策に対する有効な反撃が、展開できているのか、はなはだ心もとない気がする。重要なテーマから目をそらしたり、逃げの姿勢を見せているのではないかと、心配したくなる点も、多々あるようだ。

                         ※   ※   ※

 眼を国外に向けると、動乱世界はいささかも鎮まる気配が見えない。「イスラム国」壊滅といぅ大義名分を掲げるアメリカのオバマ大統領は、彼らの支配が及んでいるという理由で、アサド政権の了解を得ることもなく、シリアまでも攻撃範囲に含めているが、アメリカは「イスラム国」叩きにとどまらす、この機会にシリアの反政府勢カへの援助も実行するという、もう一つの目的も計算していると伝えられている。まア、狡賢い彼らのこと、どさくさ紛れに普通ではやりにくいことを、うまく実行に移して、既成事実を積み重ねようという肚なのだろう。
 西側諸国(安倍政権の日本を含む)は、例によってこの行動を追認し、それのみか積極的にそんな仕業の片棒を担ぐという、筋書きを忠実になぞっていくようだ。

                         ※   ※   ※

 御嶽山の噴火により、多数の遭難者が出たという報道に続き、土井たか子元社会党委員長の訃報が伝えられた。いま誰の眼にも明らかな、革新勢力の混迷、衰退を前にしてのこの報せに、複雑な思いを禁じることができない。しかも痛切に感ずるのは、われわれ進歩、変革を標榜する側の勢力が、率直に云って今日の時代的要請に充分応えうるような理念、方向性を、明確に打ち出しえていないということだ。
 すべての心ある友人や同憂の人びとと共に、この現状を打開してゆかねばならぬ。

                                                 2014・9・29


★熟柿の落ちるまで待っているわけには行かぬ
    悪政を少しでも早く終わらせるための行動を! 218

 いったいどんなグループなのだろう「イスラム国」を名乗るあの集団は。メディアの報するとおりだとするなら、およそ常識では理解できぬおぞましい行為を、平気で繰返す人びとの集まりということになるのだけれど、…。
 あまつさえ、そういう運動に欧米「先進国からも、少なからぬ若者が参加しているのではないかと、伝えられるに及んでは、われわれの想像力では、最早お手上げだといわざるを得ない。
 米大統領が、この勢力の支配する地域に空爆を行なって、彼らを壊滅に追い込もうとしているのも、まったくやむを得ぬ対応だと見なさなければならぬだろうか。爆撃対象区域は問題のイラクに止まらず、隣接するシリアも含まれるわけだが…。
 考えてみると、アルカイダを含むかかる超過激集団の跳梁という現象は、遠く湾岸戦争当時に始まるといっても差し支えない。あの頃から“文明の衝突―という見方が流布されていたが、その当否はともかく“間違ったやり方”を止めさせるために“間違ったやり方”に訴えるという欧米主導の政策が、今なお当然のごとく貫徹している中で、こういった非動なしわざが、何時終わるという見通しも立たぬまま、繰返されていくということのようだ。
                         ※   ※   ※

 われわれが、イギリスと呼ぶ「大ブリテン・北アイルランド連合王国」の国家形態のあり方が、俄かに注目を浴びている。
 連合王国を構成する一つ、スコットランドの独立の可否を問う住民投票の行方が、予断を許さぬ情勢となってきたからだ。だがどんな結果が出るにせよ、問題の本質は深刻で一朝一夕では片付かない。
 そして、似たような難問では、カタルーニヤを抱えたスペイン、南北問題(仏蘭両国に挟まれた国の言語問題)に悩むベルギー等々、他の西欧諸国も頭を悩ましている。ことほどさように、長い歴史の中でくすぶり続けてきた困難な懸案は、安易な付け焼刃で解決できるものでは絶対にないのだ。
 アメリカもEUも、ウクライナのことでチョッカイを出す暇があるのなら、もっと身近な足もとに眼を向けるべきだろう。
                         ※   ※   ※

 初めての改造をやって“新しさ”を強調したつもりの第2次安倍内閣だが、早くもケチがついているようだ。といっても正確には古傷なのだが、新任の高市総務相が3年余り前に議員会館で、極右団体の代表と仲良さそうに写真に収まっていたという一件である。外国紙の報道で判明したことで、当の総務相自身は「そんな人物だとは知らなかった」と釈明しているが、相手は自らの組織を「国家社会主義日本労働者党」と称しており、高市氏の言い逃れは通用しない。ヒットラーのナチ党の正式名称が国家社会主義ドイツ労働者党であったことぐらい、高市氏が知らないはずはないからだ。
 ついでながら、この出来事は大臣から横滑りの稲田自民党政調会長や、札付きの右寄り政治家、西田昌司自民党参院議員も登場している。類は友を呼ぶとはよく言ったものだ。

                         ※   ※   ※

 まアそんなわけで、安倍政治も次から次へとボロが出て、いずれ隠しようもない事態に追い込まれていくだろう。でもわれわれは、それまで漫然と待っているわけにはいかぬ。少しでも早く、この悪政を終わらせようではないか。
                                               2014・9・15


★国民そっちのけの自民内部の主導権争い
     これはわが方の弱さの反映だ         
217

 どっちもが“挙党態勢の強化”をお題目にしながら、その本心はそれぞれ「自分を脅かす存在の力を削ぐこと」「近い将来トップを目指すための地歩固めに役立てること」とまったく相反する野望をむき出しにしての争いは、一応の決着がついた模様だ。
 しょせんワル二人の陰湿極まる揉め事だったわけだが、われわれとしてはあちら側にまだまだ余裕があり、国民の面前でかかる醜悪を演じても、彼らは平気でいられるということに、深い反省を強いられる出来事だったといわねばならぬ。
 安倍晋三氏は、ところどころほころびを見せつつも、まだしぶとく跳梁しているアべノミクスを支えに、これまでの危険な内外政策に一段と磨きを掛けようとする構えだ。来日のインド首相とも、重要会談を予定していると報じられている。 御大アメリカの総指揮のもと、豪州、ニュージーランド.インドなどを取り込んで、彼らの運命共同体的な関係を構築しようと懸命だ。
 いうまでもなくこうしたやり方は、中国、韓国、ロシアなどとの関係をいっそう冷え込ませることになるのだが、むろん安倍氏はそんなことなど百も承知の上であろう。さしづめ現代版“遠交近攻”戦略とでも、考えているようだ。
 だが、こんな火遊びみたいな画策を、許してはならぬ。察するところ彼らは、できることならべトナム、フィリピンなどもこの企みに巻き込みたいと願っているのだろうが、その思惑は簡単には実現すまい。最近行われた中越両国の首脳会談は、安倍内閣を失望させるものであったし、フィリピンも日本政府が期待するような緊張激化につながる事態は、決して望まないだろう。
 アジア・太平洋地域の人びとは、日本軍国主義が過去何をやってきたか、第二次大戦後七十年近くを経て、あの忌まわしい亡霊がいかに甦りつつあるか…を肌身にしみて感じているから、安倍首相が、経済援助などをエサにどんな甘言を弄しようとも、それほど簡単に籠絡されるようなことにはなるまい。

                          ※   ※   ※

 ウクライナでは、当初ボロ儲けを期待したであろう西側資本が、思惑通りにことが運ばぬのに業を煮やしまたまた新しく、硬軟取り混ぜた揺さ振りを掛けて彼らの目的達成のための局面の打開を図ろうと、必死になっている。ここしばらくは眼が離せない。なんといっても、このウクライナ情勢をめぐる報道では、いま世界で起きているどの紛争にもまして、西側メディアの偏見が幅を利かせている。

                          ※   ※   ※

 ガザ無期限停戦合意は、不安定要素を含みつつも、一歩前進と受け止めるベきだろう。当事者双方が“勝利”を主張(言い方をかえれば両者とも不満が残る)していることは、まだまだ前途が容易でないことを物語ってもいる訳だが…ともあれ、この流れを加速させたいものである。

                          ※   ※   ※

 昭和天皇の生涯について記述した『昭和天皇実録』が完成した。全61冊12,000ページに及ぶという。編纂に当たった宮内庁は、九月中旬に内容を全部公表し、来年3月から5月に掛けて順次公刊すると発表した。
 神秘のベールに包まれた昭和天皇にまつわることどものすべてが、ホントに明らかになるのか、甚だ疑わしい気もするが、仮令いささかでも、現代最大のタブー“昭和天皇裕仁の戦争責任”を解明する手がかりの一助になるのなら、それはそれで重要な意味をもつといい得るであろう.注目していきたい。

                                                 2014・8・31

何でもありの安倍政治
   そして世界中ワルがはびこる
      全力を尽くして彼らを押さえ込もう 216

自然の暴威には言葉も出ない。十五年前にも大きな被害を蒙ったというのに、いったい為すすべがなかったのか。悔やんでも悔やみきれないけれど、今はとにかく犠牲者への哀悼とかかる悲劇をもう繰返すまいとの誓いを、念ずるほかはないだろう。広島市の土砂災害を前にしで抱く率直な思いである。

                      ※   ※   ※

 ところで現在の世界には、人間が英知を発揮すれば、もう少し何とかなりそうなことでちっとも前に進むことのできぬ難問が、いかに数々と山積していることだろう。これらは、いずれも自然がもたらす惨禍とは違うのだ。
 紛争当事者にもう少しばかりの良識と分別があれば、こんなにも先行きが見えぬ状況に、陥ることはあるまいに…とつくづく感じさせられている。
 イスラエル・パレスチナ紛争、ウクライナ情勢、そしてイラクとその周辺を巡る混乱等々、しかも気になるのは、わが国の新聞テレビを含む西側メディアの報道姿勢だ。我らには、そもそもこれらの悲劇を終わらせたいという意志が、ほんとうにあるのか…と疑わざるを得ないフシが多々見受けられる。
 ガザ地区の流血の現状を眺めるなら、確かにハマス側によるロケット弾発射という実態はあるわけだが、この攻撃はイスラエルの巨大な軍事力と比べると、児戯にも等しいものであり、そのことは何よりも双方の犠牲者数の違い(100対1に近い)にはっきりと現われている。イスラエルは、ハマスのゲリラ活動をよい口実に、相手方を一方的にねじ伏せ、壊滅させようとしているとしか思えない。
 またウクライナに眼を移せば、ファシスト勢力の支援を受けたポロシェンコ大統領の政府軍が、東部地域の抵抗勢力の殲滅を目指して、一般市民の犠牲者が出るのもかまわぬ無慈悲な掃討作戦を強行しており、さすがに目をつぶるわけにも行かなくなったEU諸国が“仲介”というポーズをとらざるを得なくなっているが、これに対してアメリカは、その動きを無視する態度を崩そうとせず、自国資本の東方進出に露骨に肩入れしようと懸命である。
 ここで見過せないのは、西欧やわが国の言論報道機関が、およそそうした点には触れようとせず、巧妙に問題の本質の隠蔽にヤッキとなっているということだ。

                         ※   ※   ※

 メディアのインチキ姿勢は、これだけじゃないよ。彼らは中国海軍が空母を購入したとか、自国で建造に着手したとか騒ぎ立てているが、この日本列島が米第7艦隊で「防衛」され、その艦隊には世界第1の巨大空母が配備されていることに関しては、口を鎖して語ろうとしない。とにかくわがマスコミは、緊張を掻き立てるためには、どんな手段をも惜しまないようだ。
 南シナ海の南沙諸島をめぐる紛争についても、執拗に反中国宣伝を繰返しているのだが、そんなことに飛びついてトラブルを広げたいのであれば、この南沙諸島が第二次大戦中「新南群島」と命名され、日本帝国主義政権によって、日本領土とされていたことに言及したらどうだろう。彼らは、すでに清算済みの過去の出来事だと言い張るだろうか。でもそんな言い逃れは通用しないぜ。日清戦争時の尖閣、日露戦争時の竹島、そしてこの「新南諸島…、火事場泥棒的手口は、わが国の支配者たちのお家芸だったのだ。
 しかも最近の安倍政権は、こうした薄汚い歴史を美化しかねない危険性を孕んでいる。油断していると、彼ら何をするかわかったものじゃありませんゾ。
                             2014・8・22

★目に余るダブルスタンダード
   体裁を繕おうともせぬメディアの醜態
        215

 ウクライナ上空でのマレーシア旅客機墜落、生存者なしという悲報は、大きな衝撃となって世界を駆け巡った。
 事故なのか、撃墜事件なのか、撃墜されたとすれば誰がその責任を負うべきか、現在に至るも確定的な証拠は無い。ただ云えることは“撃墜”が事実だとしても、それが故意に行われたという想定は全く成り立たず、不幸な誤射であったことにほぼ相違ないということである。
 ところで、日時的にはこれと並行して、イスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への全面攻撃開始という報道が、伝えられた。こちらはマレーシア航空機の場合とは異なり、イスラエル側は自らの行動の正当性を誰はばかることなく宣言し、相手方(ハマス)のテロ行為を終わらせるための防衛的対応だと、強弁している。
                         ※   ※   ※

 ここで気がかりなのは、この二つの出来事に対するマスメディア(我が国と欧米)の報道姿勢だ。彼らは、残念なアクシデントとみなしても先ず間違いないと思われる前者−マレーシア航空機の墜落―については、当のウクライナで流血の衝突を続けている両当事者の一方だけを“無法者”“犯罪容疑者”扱いして、糾弾しようとする意図をあからさまに打ち出しているくせに、後者−パレスチナ・ガザ地区への侵攻−に触れる場合は、つとめて「客観性」に徹しようとするらしく、対立する当事者の主張を「公平」に取り上げるかのようなポーズを示して、問題の本質を極力隠蔽せんとかかっているようである。G7と呼ばれる西側「先進」国の政治外交スタンスに、ピッタリと寄り添う形だ。
 それにしても、わが岸田外相をも含めた各国首脳のマレーシア航空機の犠牲者への哀悼のコメントを見ると“お為ごかし”“鰐の涙”という表現がぴったりの、真摯さを欠いた空々しいものすら混じっているように感じられる。
                         ※   ※   ※

 ついでながら岸田外相についてひとこと、このおヒト先般の国会審議の場で、グレナダ(カリブ海の島国)の呼称をグラナダ〈スペイン・アンダルシア地方の古都)と間違えて答弁し、その誤りに気付かず、翌日もこの名を繰返していた。傍に外務省の役人も控えていただろうに、何の進言もしなかったのか、恥をかくままほったらかしにしたようである。まァ些細なことと言えば些細なこと、でもこんな人物がこの国の外務大臣を務めているというのは、我々国民にとっても、あまり名誉なことではないのかもしれないね。

                         ※   ※   ※

 安倍首相が、メキシコやトリニダート・トバゴを訪問している姿が、テレビの画面に映し出されていた。彼はこれまでもアフリカ諸国など発展途上国を精力的に訪れ、日本企業のゼニ儲けの後押しをするため、おおわらわになっていることを強く印象付けてきたが、今回もまた財界人70人余が同行するという、異常なまでの癒着ぶりである。
 天下に隠れもない貪婪さで鳴らすこの国の巨大企業が、世界いたるところ儲かりそうなところを荒らしつくした末、未だウマそうなところが残っていないかと眺めまわした挙句眼を付けたのが、このトリニダート・トバゴをはじめとする小アンチル諸島の国々だったのかも知れぬ。そして、その浅ましい欲望を成就させるため、犬馬の労をとろうとするのが安倍晋三氏というわけだ。まったくよくできた構図である。
あァそうそう、安倍首相はもうひとつ、重要目的を抱えているらしい。多年にわたる宿願、国連安保理常任理事国入りを、何とか実現させようという願望だ。そのため、この機会をとらえて、なりふり構わず支持固めを進めようとするわけである。でも、そう簡単にコトが運ぶかしら。諸大国の思惑が微妙に交錯するこの問題、なかなか一筋縄では行かぬゾ。アメリカというご主人の意向は、よくよく確かめたのかい。アベ君よ、恥をかかぬという自信はおありなのかね。
                                                2014.7・29


★安倍政権が続くことはとんでもない災厄だ
      すべての力を結集して退陣に追い込もう  
214

 (2014年)7月1日は、わが国が第二次大戦後これまで曲がりなりにも守り続けてきた平和政策という国是を、乱暴に踏みにじった汚辱の日として記録されることになったが、同時にこの日は戦後最悪の反動政権の暴政に対する国民の反撃が、いっそうの飛躍を伴った段階に突入した日であることを、証明する可能性をも生み出した。
 13日の滋賀県知事選挙の結果は、早くもそれが空しい夢や願望に止まるものではないという事実を示したといえる。もちろんこれは、今のところ一つの地方選挙におけるあちら側の敗北というに過ぎず、彼らの堅陣は、まだまだ簡単に揺らぐわけではない。
 安倍首相−小心なのか図々しいのか、つかみにくいこのおヒト―のこれまでの姿勢を眺めれば、臆病な人間がしばしば(自らに鞭打って?)とんでもないふてぶてしさを、発揮することがあるという、悪しきドラマの典型例のように見えてくる。安倍氏は、彼が正義と妄信するこの悪企みを貫徹するためには、国民世論もなんのその、遮二無二突っ走ろうとするであろうこと、火を見るよりも明らかだ。
 あれほどの不評を押し切って、特定秘密保護法を成立させた彼のこと、あの伝で今度もまた、何が何でも強行する肚であること間違いなし。だからわれわれは実に厳しい闘いを覚悟せねばならぬ。

                         ※   ※   ※

 それとメディアでは殆んど取り上げないことだが、この安倍晋三という人物、性格的にも人間味に乏しい、情の薄い人柄だと思えるけれどいかがであろう。自己の目的に役立つとなれば、他人の健康や生命すら、粗末に扱ってもかまわぬという、魂胆の持ち主のようだ。重病を患っていた前内閣法制局長官は、死の直前までその職務に縛り付けられていたではないか。さらに振り返れば、自らの意思で死を選んだ第一次安倍内閣の閣僚、安倍氏の強引な懇願で続投に追い込まれ、命を縮めた山口県知事など、安倍氏の辣腕がもたらした悲劇の、なんと数多いことだろう。
 今回の閣議決定が実施に移された場合、危険にさらされることにもなりかねぬ若い自衛隊員の命のことを、どう考えているのかと国会審議の場で野党から追及されているが、なにしろこの通り酷薄極まる人間である。心の一隅にも、それが影を落とすことなどあるまい。あえていう。安倍晋三氏―かかる御仁が、この国の政治の最高責任者として、なおも君臨し続けることは、国民にとってこの上もない不幸であり災厄である。一日も早く、彼の悪政に止めを刺さねばならぬ。

                         ※   ※   ※

 理不尽な状況は、わが国だけではない。海外に目を転じても、遺憾千万な事態が随所に見受けられる。パレスチナ・ガザ地区では、イスラエルが圧倒的な軍事力を投入して、無辜の一般市民を殺傷しているし、ウクライナでは、同国東部に“鎮圧”のためと称して正規軍を派遣たポロシエンコ大統領が、頑強な反撃を試みる抵抗勢力に手を焼いたのか、遂に「(自分たちの)兵士一人の命に対し武装勢力は我らの何十、何百の命であがなうことになる」と放言した。アメリカやEUの後押しで、「大統領」に就任できたこの男の言葉を、どう評すベきだろう。
 かかるスタンスで行なわれる作戦が、多くの非戦闘員に累を及ぼす危険性たるや、限りなく大きいのではあるまいか。まるで第二次大戦中T、日本帝国主義が中国大陸で侵したしわざ、ナチス・ドイツのリデイーツェ(チェコ)やオラドゥール(フランス)での蛮行、そしてベトナム戦争中報じられた米軍のの行動を、髣髴させるものといわねばならない。
 それにしても、わが国マスメディアの姿勢たるや、これらの現実に対して、なんと「冷静」であり「寛容」であることか。
                         ※   ※   ※

 BRICS(中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカの五ケ国)の首脳会議が開かれ、新興国主導による独自の開発銀行の設立が、宣言されたという。米国、西欧(日本を含む)が牛耳る、現在の世界経済秩序への挑戦ということになるのか。一握りの支配層が、圧倒的多数の民衆を操縦、掌握しているという点では、この衝撃的な就旗揚げも、旧体制と本質的にどこが違うのかという指摘を、免れぬだろう。ただし、これまでやりたい放題の横車を通してきた連中の手口に多少でも“待った”を掛けることができるのか。ここは、刮目して見守るべきかも知れぬ.
                                                 2014・7・18

★あちら側の攻撃の激しさは
   自信のなさの表われだ 
      全力を尽くして勝利をつかもう         
213

 橋下 徹氏と袂を分かった石原慎太郎氏が、手兵を率いて旗揚げする新党の名称が決まった。“次世代の党”というのだそうである。
 いやア、これには恐れ入った。およそ歴史の流れにも、人間の歩みにも、背を向けているとしか思えぬ主張を、臆面もなく吐き散らしている人びとが、選りにも選って、よくもかかるずうずうしい名乗りを揚げたものである。まったくブラックユーモアもいいところだ。
 でも考えてみれぱ、こうしたこともデタラメが平気で横行する現代の世界のありようの中では、特別驚いたり呆れたりするほどのことでもないのかもしれない。そりゃね、眼を海の我方に向ければ、わが国の近辺にも「朝鮮民主主義人民共和国」という主権国家が、立派に存在している。
 今度の次世代の党と比べると、その思想的立ち位置はズバり正反対といえるのかも知れぬが、ま、なんていうか現実テメエがちっとも持ち合わせていないものを、しゃあしゃあと振りかざす格好を見せているという点では、実に奇妙な類似点があるといえそうだ。―この件は、これでおしまい!

                         ※   ※   ※

 自民と公明の談合は、いよいよ最終段階を迎えたようである。あれやこれや、ちょっとやそっとでは分かりかねる言葉の遊戯などを交えて、相手を丸め込もうとする高村、石破両氏の画策は、どうやら功を奏したらしく、公明党首脳部は今となっては、同党内の異論をどうして押さえ込むか、自民党に篭絡されてしまったみっともない経緯を如何に合理化し、了承を取り付けるかに、汲々としている体たらくだ。一昔で云えば、公明は自民に足元を完全に見透かされていたということだろう。
 さて、集団的自衛権をめぐる本質問題に移りたい。これは何も、憲法に手をつけずに誤魔化しの弁法でやるから悪い、集団的自衛権を是と考えるのなら、正々堂々と改憲を訴えて、改定を実現させるのならよい、などというものでは絶対にないのだ。
 無論安倍政権が今あんな手口に頼っているのは、わが国の国民世論が、露骨な改憲の企みを許さぬことを、よくよく知っているからのことであり、それはとりもなおさず、われわれの闘いにとって有利な条件となっている.
 しかし、彼らは今の策動が成功しなかった場合は、当然恥ずる色もなく、ヌケヌケと改憲に持ち込もうとするだろう.東アジアと世界の情勢変化等々、考えられる限りのウソ八百を並べて―、そのとき、マス・メディアがどんな対応をするかということにも、われわれは万全の構えを用意しておかねばならぬ。
 とにかく現在やらねばならぬこと、それはわれわれの総カを挙げて、彼らの今の企みを挫折させることだ。
                         ※   ※   ※

 集団的自衛権の問題とは異なり、この方はまだまだゴマカシも通るゾとばかり安倍内閣は、法人税実効税率の大幅引き下げ、“成果に応じた”(残業代ゼロ)賃金制度の導入等などを露骨に盛り込んだ、新たな成長戦略、経済財政運営の「骨太方針」、規制改革実施計画の三つを閣議決定した。
 大企業の欲望に応えるため、減税を約束する傍ら、それによる税収減をどうやってカバーするか、その道筋も付けられぬというデタラメぶりである。いったいどうする気か?新たな民衆収奪を企んでいるのか!JA改革の名を借りた農業生産者への攻撃、“混合診療”の拡充を呼号する反面、保険診療はどうする気か、いやはや油断できないことのできないことの目白押しである。こんな厄介千万なことをすべて勤労市民の利益になるよう解決するためには、現政府を退陣させねばならないが、それは今直ちにはできぬ相談、だとすれば、あちら側のここの政策を迎え撃って、ひとつひとつ撃退していくしかない。
 骨は折れるが頑張ろう。

                                               2014・6・28

★悪企み撥ねのけ
    この世界を変えていこう              212 

 
近現代史上の大きな出来事から数えて節目の年になるというので、このところそれぞれ百年、七十年、二十五年経ったことにふれる(第一次大戦の勃発 第二次大戦のノルマンデイー上陸作戦 天安門事件)論説が、メディアを振わせた。
 そこで注意しなければならぬのが、こうした問題をとらえ、内外の支配勢力は、自らの野望遂行に役立てるため、真実を捻じ曲げることも、躊躇しないということについてである。
 安倍首相は、第一次大戦がまったくの偶発的な要因から始まったとする談話をさきに発表し、現在の東アジア情勢が、不測の大事件を生み出す可能性があると 強調、集団的自衛権容認への道に、結び付けようと企んでいるようだ。
 また西側諸国は、ノルマンデイー作戦を、侵略者打倒の闘いの決定打となったものと強調し、そのことを現在のウクライナ情勢に絡めて、対ロシア牽制に利用しようとしている。
 そして天安門事件については、云うまでもなく中国の“危険な”体質を強調し、東シナ海・南シナ海をめぐる情勢との関連で、なんとか国際緊張激化を掻きたてようと懸命だ。
 でも、騙されてはなりませんゾ、もっともらしい言葉の裏に、どんなよこしまな狙いが隠されているか判ったものじゃない。ついでながらノルマンディー作戦に関して付け加えたいこと…、そもそもノルマンデイ一作戦(1944・6・6〜)は、あの当時西側連合国が、このままではソ連軍が独力でナチス・ドイツを打ち破り、フランスまでも解放することになりかねぬと危ぶんだ結果、重い腰を上げて実行に踏み切ったのだという説もあるくらいなのだ。
                         ※   ※   ※

 集団的自衛権容認に向けての安倍自民党の画策は、休むことなく強められ政権の片棒を担ぐ公明党を篭絡しようとして、攻勢を激化させている。四十年以上昔の政府見解を、埃を払って取り出し、論理の辻褄合わせに役立てようとするなど、およそ体裁などお構いなしといった風情であるが、かかる工作の矢面に立たされた公明党、果たして頑張りきれるのか.それとも、しょせん自
民と黒幕の別働隊に過ぎぬことを、自ら暴露してしまうのか。
 それはそうといずれにせよ.この集団的自衛権をめぐる問題は、勤労者・市民の力で、あちらサンの邪悪な企みを葬るしかないのである。
 現行憲法のままでの容認か、それとも憲法の条文を改定した上でそれを可能にする道を択ぶのか、といった問題ではない。だが、既に危険な“論理のすり替え”が、着々と進んでいる。ごまかしに惑わされることなく、正道を進もう。それでなくとも改正国民投票法も成立するなど、情勢は日に日に緊迫の度合いを深めているのだ。
                         ※   ※   ※

 サッカー・ワールドカップがこれほどの話題を呼ぶとは、ホントに恐れ入った話である。若い人々を中心として、ずいぶん関心を惹く大イベントであることはわかるが、それにしてもNHKテレビは、破格ともいえるでっかい取り上げよう
だ。ところで今回いきなり有名になったコートジボワ−ル、こんな名前(象牙海岸)の国があるということを、初めて知った人も、少なくないのかも知れぬ。昔(そんなに古いことではない第二次大戦後)使われていた世界地図を見ると、アフリカの西海岸中央部をヨーロッパから近い順番で、胡椒海岸、穀物海岸、象牙海岸、黄金海岸、奴隷海岸と連なって表記されている。
 あの大航海時代に始まる西欧諸国の貪婪、強欲な植民地支配者たちの仕業を物語るものだ。現今の地図ではそれぞれシェラレオネ、リベリア、コートジボワール、ガーナ、トーゴ=ペナン=ナイジェリアとだけ書かれているのか、それとも依然として古い呼称も併記されているのか、手元に新しい地図がないので確かめる事ができないが、いずれにしてもヨーロッパの「先進国」にとっては、後ろめたい歴史を物語っていることに変わりはない。
 しかも無視できぬのは、こうした先進国の独りよがりの思想と行動が、今なおいろいろな場面で形を変えて受け継がれているという現実だ。
 われわれの世界は、まだまだいたるところで変革を必要としているようである。

                                               2014・6・16

★巨悪に止めを刺すための
    有効な行動を早急!               21


 数日前の新聞のテレビ欄に、“野田前総理すべて語る”という番組の案内が載っていた。もはや「過去の人」と呼んでも差し支えない野田佳彦氏に、今更なんの関心もないので、その放送を視るためチャンネルを回すことはしなかったが、それでも目に見えて悪い方に推移してきた、ここ二〜三年の政治経済情報を振り返って、多少の感概に囚われたことではある。
 思うに、日中両国の関係が、こんなにもこじれてしまった理由として挙げられる事柄は、無論一つや二つに止まらないだろうけれど、その最大のものが、野田氏の行った尖閣諸島国有化宣言であることについては、おそらく大方の意見の一致するところではなかろうか。
 もともと日中国交回復当時、当時の両国の最高指導者が英知を発揮し、問題を将来の世代に委ねるとして、事実上その解決を先送りしていたのに、何故野田氏はわざわざことを荒立てて、紛争を拡大するようなことをしたのだろう?札つきのネオファシスト、当時の東京都知事石原慎太郎氏の、挑発的発言に泡を喰って、その火消し役を買って出たつもりだったのだろうか。だとすれば、何たる浅慮、何たる無定見…。
 勘ぐって考えるなら、安倍現首相でさえ、とんでもない不始末の尻拭いをさせられるものだと、ボヤいているのかも知れぬ。もちろん、安倍氏と彼の背後に控える内外の黒幕は、全体の国際政治を、彼らの後ろ暗い意図を達成する目的に沿って、突き動かしていくためには、これが格好のきっかけになったと、大局的見地から大いに喜んでいることに、間違いはあるまいけれど…。
 しかもこれだけではない。野田氏が首相在任中、防衛相にあの超タカ派の軍事評論家、天下に隠れもないアメリカの走狗、森本 敏氏を任命したことも、忘れるわけにゆかぬ仰天人事であった。こんな人物を、こともあろうに防衛相というポストに据えるとは。それまでの自民党政権でも、やらなかったことである。現在、彼、森本氏は、ますます右傾化を強める情勢の中、時を得顔に物騒千万な発言を、あちこちでぶちまくっているではないか。
 要するに、野田氏というおヒト、結果的には、安部内閣(戦後最悪の反動政権)登場の為に、その地ならし、露払いの役を見事にやってのけたという点で、まさしく政治史にその名を留める存在であったと断ずべきであろう。
                         ※   ※   ※

 さて.その安倍晋三首相だが、なにがなんでも集団的自衛権行使への道を、突き進もうということらしい。テメエの言いなりになる学者や官僚などを集めて、作り上げた、安保法制懇なる私的諮問機関が、出してきた意見書を振りかざし、中央突破を図ろうと血道をあげている。
 そもそも丁寧さと図々しさという、一見相反する二つの顔を併せ持つ安倍氏だが、彼が臆面もなくこの変幻自在な特性を、むき出しにした姿こそ、類稀な災厄が国民に間近かに迫っているというシグナルに他ならないのだ。
 もはや、一刻の猶予も許されぬ。彼の非道な企みを、打ち砕くための有効な手立てを、早急に構築しよう。
                         ※   ※   ※

 海の彼方を眺めても、暗雲はなかなか去りそうにもない。
 東欧のあの混迷を解決する道は、いまだ遠しとの感も否めぬし、タイの茶番劇は、新しい段階に突入した。そして残念極まりないことながら、世界的に貧困、失業、閉塞感が広がる時、多くの人びとは、進歩と革新の道に目を向けるよりもむしろ暗黒、ネオファシズム、右翼反動の側に走りかねぬ脆さを持っているという現実を、認めないわけにはゆかぬ。途上国、先進国を問わず、今おしなべて、そうなのだ。最近のインド総選挙も、EUの欧州議会の結果などが、そのことを端的に物語っている。
 われわれの前に突きつけられている課題は、とてつもなく大きくて重い。だが、ヘコタレてはならぬ。歯を食いしばってでも、頑張りましょうや。

                                               2014・5・30
★横行するデタラメや嘘っぱち、
    だが国民は世界は騙されない          
210

 デタラメや嘘っぱちの言説がまことしやかに横行するのは、洋の東西を問わず昔も今も変わりはない。ただ、最近そうした傾向がいよいよひどくなってきたのには、マスメディアの急激な発展という事情があるのかも知れぬ。
 ところで、わが政府がふたこと目には繰返す言葉に“東アジアの国際環境の変化”というのがあるのは、先刻ご承知のことだろう。日本国、日本国民は、いまいかなる時期にもまして、危険な状況下に差しかかっているのだそうだ。そしてそこから論理を飛躍させて、これまで保革を問わず歴代の全政治勢力が否定してきた集団的自衛権行使の容認に踏み切ろうと、醜い画策を強めてきている。
 だが、皆さんに申し上げたい。彼らの言っていること―これまことにけったいな主張だとは思いませんか、インチキ千万な言い分だとは感じませんか。わが国、わが国民の平和と安全が脅かされていると云いたいらしいのだが、六十年前、われわれと一衣帯水の朝鮮半島では、三年余にわたって悲しい戦争が続けられていた。そしてそれから十数年を経た1960年代−70年代にかけては、ベトナム侵略戦争が行なわれたのである。
 このいずれの場合にも、集団的自衛権行使の是非は、およそ真剣な論議の対象にもなっていない。幾十万、幾百方の人びとの血が流されたあの当時、われわれはそのような理不尽な行動に、軍事的に加担することを、一貫して拒否したのである。
 その歴史に目をつぶり、安倍氏と彼の仲間たちは、なぜ今にわかに危険極まる道に突き入ろうとするのか。彼らは尖閣諸島や東シナ海情勢を論拠に自らの野望を合理化しようと懸命であるが、周知のごとく尖閣は人も住まぬ弧島であり、しかも四十余年前当時の日中両国の首脳が.この件では早急な結論を求めず、その解決は将来の世代に任せるとして、事実上問題を棚上げにしていたという経緯がある(真実は改竄できない!)。
                          ※   ※   ※

 さて南シナ海の紛争については、最大の当事者たる中国とASEAN諸国が、双方とも冷静な対応を表明して、事態の平穏な処理を求めているではないか。 それに引き換え安倍政権は、この時とばかりトラブルをいっそう煽り立てようとして“俄かベトナム贔屓”みたいな浅ましい発言(彼らと彼らの先輩たちがベトナム戦争のときどんな態度を示したか 少しは恥を知れ!)すらも隠そうとしないが、彼らのこの醜い魂胆も、当のベトナム現地に進出している日本企業が、とばっちりを受けて被害を出したりしたものだから、いささか狙いが外れたかの感がある。はてさて、これからどんな方向を打ち出すのやら…。
 ともあれ当事者の中越両国も、大局的見地に立って今後を冷静に見つめようとしているのに、安倍政権のコトあれかしとの底意見え見えの姿勢は、誰の眼にも醜怪そのものといった印象を与えるのではないか。
                          ※   ※   ※

 それにしても、ここで問題となるのがアメリカの出方である。中国との大がかりな衝突は避けつつも、そこは柔軟かつ陰険に自らの西太平洋、東アジアでの影響力を強めようと企むオバマ政権は、それ故にこそ集団的自衛権行使推進という日本政府の姿勢を極力称揚し、ケネディ駐日大使も同様のコメントを発表するなど、安倍氏への援護射撃を行なっているわけだ。
 だけど、われわれは安倍氏と彼の取り巻きに申し上げる。かかる茶番劇みたいなことどもにより、あなた方の背後にあってあなた方を操る内外の黒幕の正体が、隠すすべもなく、白日のもとに明らかになりつつあるのだゾ。“日本を取り戻す”という金看板が、なんともまア、メッキの剥げた無残な姿をさらけ出してしまったことか。
                          ※   ※   ※

 眼を西に向けると、ウクライナ情勢は、いまだに解決の兆しが見えない。米国やEU(そのシッポにぶら下がって安倍政権も)は、相変わらず“ウクライナ国土の一体性を守れ”と念仏みたいに繰返しているが、その彼らがこれまでやってきたことは、いったい何であったのか?。前大統領と当時の野党との間で合意した条件を反故にさせ、武力衝突に持ち込み、挙句の果てに旧政権を倒して、彼ら(米国とEU)の言いなりになる政権に統治させようとする画策だ。西側支配者層に、まるごとぺろりと呑み込まれる「一体性」なのだろう。
 まア嘘やデタラメが、大手を振って横行するご時世だ。とにかく、それらを払いのけて正道を求めていくしか、方途はない。それは可能だという希望を持とう(いささか楽観的過ぎるか…)。

                                               2014・5・19

★とにかく働く者の力量を強めること
     それなくしては何事も進まぬ          209

 ― 人が住んでいるわけでもない他国の岩礁みたいな島を守るために、わが国の兵士が血を流さなければならぬのか?―アメリカの世論は、概ね如上のようなものだという。
 にもかかわらず、オバマ大統領は、安倍首相との首脳会談で尖閣諸島が日米安保条約で定められた対日防衛義務の適用対象になると、米元首として始めて明言した。もちろんその言葉のあとで、この問題では日中両国に慎重な対応を求めると、急いで釘を刺すのを忘れなかったわけではあるが…。
 超大国の世界戦略の中で、ユーラシア大陸の東縁に浮かぶ世界第二―第三位の経済力を有するこの目下の同盟国は、やはりそれなりの重要性を持っているのであろう。TPP交渉をも含め、いま日米の支配層は、自らの貪欲な欲望をいかにして充足させるか、虚虚実実の駆け引きを展開している。
 双方が執拗に強調する「国益」といううたい文句、その内実たるや、一般の勤労者市民よりもはるかに大きな比重で、一握りの独占体の巨大な利害の明暗が想定されているのだ。甘利TPP担当相は「こんな芯の疲れる役目にはもう二度とかかわりたくない」と述べたと伝えられているが、ご主人に一意専心仕えるこの忠実な従者も、よほど精魂をすり減らしているのだなアと、こちらまでゾっとするくらいである。
 さて、もう一度尖閣の問題にかえりたい。アメリカ国民の反応は、既に見たとおりであるが、肝心の我が日本の勤労者、市民のとるべき態度はどうあるべきか。はっきり断言しよう。国と国との領土紛争に、われわれ動労国民は決して巻き込まれてはならない。尖閣の帰属をめぐる日中両国のヒステリカルな応酬が何を齎すか、われわれの立場に則して言うならば、安倍政権の一連の右寄り路線の中で、このことがどんな意味合いを持っているのか、ここいらで彼らの魂胆を見極め、判決を下そう。

                         ※   ※   ※

 労組「連合」の中央メーデーが、4月26日、東京代々木公園で開催された(29日ではなかった点をせめてかってやるべきか)。
そして時間外労賃不払いを正当化しようとするとんでもない法律を、労組抜きのあやしげな諮問会議に掛けて成立を企んでいる張本人安倍晋三氏がこのメーデーに招かれてあいさつしをぶったものである。
 もちろん連合首脳部は、この世紀の大悪法構想には絶対反対を唱えている(当たり前だ!)のだから、それについてはメインスローガンの中に加えてアピールしているのだが、この悪法推進の元凶を労働者のデモンストレーションである祭典に、わざわざ招待するという姿勢が、たたかいの勢いを強めるのか弱めるのか、誰が見ても分かりきったことではないか。どだい、かかる不届き千万な法改定を、労働者の代表も加わらぬ場で決めてしまおうとアチラさんが企むほど、労組はコケにされてしまっているということになる。こんなにまで舐められ笑いものにされて、平気なのか。

                         ※   ※   ※

 人も住まぬ孤島を守るためと称して大騒ぎをやる国際紛争の力学は、一方では4500万の人口を有する国家を舞台に、パワーゲームを繰り広げている。周到な準備を掛けて開始されたアメリカとEUの対東方政策は、ロシアの予想外の抵抗を引き起こしたため最初の見込みに狂いを生じたけれど、そこには地力に勝る西側諸国のこと総力を結集して態勢を立て直し、その厚顔無恥な野望をなんとしても貫徹しようと懸命だ。
 かかるひどい状況を前に、勤労人民を主体とする世界諸国民の連帯行動は、悲劇的なまでに非力、弱体であり立ち遅れが目立つ。ホントになんとかならないのか、ただ歯軋りして見守るしかないのか。

                                               2014・4・27


★2匹目の泥鰌の野望に断固ノーを!
   集団的自衛権行使の企図はただ葬るしかない 
208

 特定秘密保護法の時もそうだった。誰の眼にも、警察国家ファシズム体制の手口としか見えない草案を突きつけて、それが轟々たる非難を浴びるや、案外アッサリと少しばかりは譲歩するそぶりを見せ、とは云うものの根幹の部分はそのまましっかりと保持しつつ、結局は有無を言わせず強行成立に持ち込んだこと、全ての人びとの記憶に新たなところである。
 さて、今度もまったく同じではないか。“国際環境の変化”を口実に、戦後一貫して守られてきた集団的自衛権不行使の国是を、安倍政権と自民党は、乱暴にも踏みにじろうとしている。
 そして、特定秘密保護法の場合と同様、最初でっかい脅しをかけておいて、当然のことながら彼らの構想が、世論の手厳しい反撃を受けたとみるや、早速“予定の退却”に移り、悪企みの適用範囲を巌密に規定するだの、対象地域を局限するだの、しないだのと、もっともらしいごたくを並べた上で、「こんなに慎重に検討を重ねているじやないか それほどこれは大切なことなんだよ…云々と相手を煙に巻き、巧妙に自分たちの土俵に引きずり込もうとおおわらわだ。
 とにかく、批判に耳を傾けているかのごとく、装っている時の彼らは、極めて危険なのである、その裏に、どうあってもそのよこしまな目的を、必ず貫徹しようとする貪婪な欲望が秘められているからだ。

                         ※   ※   ※

 話し変わって、次はみんなの党の渡辺喜美氏の代表辞任騒ぎだが、これは集団的自衛権の問題とは異なり、まともに論ずるのもバカバカしいような出来事である。そもそも、選挙に驚くほど多額のカネが必要だというのは、ホントのことらしい。そして、それは何もこの日本の政治風土だけの特殊現象でもなさそうだ。まア権力の座にある政党は、人間世界の生臭い欲得がらみの生きざまを、操れる立場にあり、なにも危ない橋を渡らなくとも、結構カネづるには不自由しないことだろう。だが、そうでない政党(とりわけ保守層を支持基盤とする党)は、その資金づくりには、たいへんな苦労が伴うに違いない。だから渡辺氏のやったことは、別段非難されることでもなんでもないといえば云えるものだ。
 ただあの男、これまで政治とカネのこととなると、他のどの政治家にもまして、厳しい見解を述べてきたので、今度それがテメエの行為として明るみに出されるや、なんともみっともないお笑いぐさになったのは、まったくもっでやむをえない次第なのである。お気の毒といえばお気の毒、だけどこのみんなの党という政党は、しよせん自民党の別働隊、内外の支配勢力の忠実な番犬的存在に過ぎないのだから、先行きどうなろうが、別に気にすることもあるまい。

                          ※   ※   ※

“なかなかやってくれるなァ”ウクライナ情勢のその後の展開を前にして、関係諸国に対する感想だ。
 表面には出ない舞台裏の動きのことはさておき、たてまえの上ではひとつの国の進路を決めるのは、その国の国民なのだろうから、ロシアの外相が、ウクライナには連邦制の導入が必要だなどと、公言したという報道に接すると、やややといささか面食らうことになる。だがこれも元を糺せば、アメリカとEUがそもそもの最初から、鉄面皮に強行してきた、ウクライナへの露骨な内政干渉がその原因を作っているので、西側としたら“してやられた”“身から出たサビ”と、諦めるしかあるまい。
 ロシアへの制裁強化などとヒステリカルに叫びたてながら、アメリカやEUもヌケヌケとロシアも含む形でのウクライナ支援体制の強化という、G20財務相・中央銀行総裁会議の共同声明に加わった。理屈もヘッタクレもない、何もかもメチャクチャだ。すべてはご覧の通りである。どんな美辞麗句を連ねたところで、今の世界に、万人が納得する平和のための揺るがぬ国際秩序の規範など、存在しないと見るのが妥当だろう。
 だから、だから、空しいことだと半ば諦めながらも、叫ばずにはいられない。国境を越え、海を越え、勤労者・市民の連帯で、この世界を変えていこう。
                                                 2014・4・15

★あちら側は本気で攻めてくるぞ
     一歩も退かぬ構えで迎え撃とう         207

 集団的自衛権をめぐる情勢は、このところ急激に悪化の兆しをみせている。
 今年のはじめ頃は、「無理はしない 経済、生活の問題が何よりも大切だ」などと、神妙な発音を行なっていた自民党石破幹事長が、俄然態度を豹変、安倍氏と見事に息を合わせ、党内に安全保障法制整備推進本部を設置した。彼は「今ことを急がないと手遅れになって機会が失われてしまう」と平気で嘯いていて、実に並々ならぬ意気込みが感じられる。
 なにが彼らをして、かくも悪企みの実行を急がせているのか?いろいろ理由はあるだろうが、その分析はともかく、この国はそして国民は、重大な関頭に差し掛かってきたというほかはない。

                         ※   ※   ※

 大阪市長選挙が行われ、前職の橋下徹氏が再選された。彼と立場を異にする他の主要政党が、すべてボイコットするという状況下の選挙であり、もともと結果は分かりきったことだった。
 投票率も極めて低く、橋下氏にとってもあまり名誉な話でもないと思われるが、そうは言っても選挙戦を放棄した各党も、それほど胸を張れる筋合いではないようだ。「こんな選挙に大義名分はない だから無視したのだ」というコトバに嘘はあるまいが、にもかかわらず「対立候補として臨んで もし敗れでもしたら格好がつかぬ」という危惧の念はなかったのかと問われるなら、おそらく返答に窮することであろう。
 いずれにしても、もうひとつカラッとしたところのない現下の政治のありようを、端的に物語る出来事だった。
 それはそうと、橋下氏というおヒト、華々しくデビューした頃と比べると、なんとこんなにも器の小さい人間だったのかという印象が強い。ふてぶてしいネオファシストというよりは、右顧左眄する小心な復古的ポピュリズムの担い手と、断定すべきなのかも知れぬ。

                         ※   ※   ※

 ウクライナ−クリミアをめぐるその後の事態は、国際政治の不条理、大国の身勝手さを、余す所なく露わにしてくれた。全件を貫いているのは、双方に存在する相手方への不信感、猜疑心であろう。それが嵩じて、ボタンの掛け違い、判断ミスを引き起こしたといえそうだ。
 ロシアはウクライナの前政権が、あれほど無能で腐敗しいたとは考えても見なかっただろうし、西側はソチ・オリンピック、パラリンピックで忙しいあの国が、あんなに素早いこわもての対応をするとは、まったく想定外だったに違いない。だからこそ、アメリカとEUはウクライナに対して、あんなに呆れるほどの厚かましい内政干渉をやったのだ。
 ともあれ今度のことでは、両者とも深く傷ついたことはいうまでもあるまいが、どちらがより大きな打撃を受けたのか。それを判定するのは難しいけれど、こういう展開になるとまァ力関係からみて、もともと優位に立ってきた米・EUの方が、ロシアよりも失点が多いということになるのだろう。

                         ※   ※   ※

 ところで、われわれとしてとりわけ関心を持たざるを得ないのは、この出来事が日露関係に及ぼす影響だ。アべノミクスの「成功」で有頂天の安倍首相は、北方領土問題やサハリン、シべリア開発参入などにも食指を伸ばし、あわよくば対中国牽制の効果さえも狙って、ロシアに接近しようとしていたと噂されているが、彼のこの野望はどうなってゆくのか知らん。
 最後にウクライナ問題に関して、この国のブルジョア・メディアが連日発信している言説についてひとこと、まァまァよくもこうしたみっともない忠犬振りが発揮できるというものだ。
 たとえば今月二十六日付のM 紙の社説「G7とロシア」である。これほど一方に偏した文章が、抵抗なく読者に受け容れられるとは、おそらく書いた当人も期待していないだろう(他の新聞やテレビでも類似の発言が行なわれているかも知れぬが、たまたまこの社説が眼に入ったので)いやはや、ジャーナリズムの品位も落ちたものだ。
                                                2014・03・27


★大国任せじゃ世界の平和は守れぬ
   海を越えた勤労人民の国際連帯を強化しよう 206

 ロシアの行動は、たしかにアコギだ。でも、アメリカやEUがやっていることはどうだろう。それ以上に鉄面皮で盗人猛々しいものじゃないか。
 西側は、バイデン米副大統領が総指揮を取り、眼に余る内政干渉を続けて、とうとうウクライナ政府の転覆と大統領の追い落としに成功し、彼らのお手盛りの親米−親EU政権をスタートさせたのだが、これに危機感を募らせたクリミアの住民がロシアの影響のもと独立を目指す行動に出るや、早速ロシア非難の大合唱がはじまったのである。まったく見え透いた言いがかりというべきだ。
“ウクライナ国土の一体性を守れ”とかなんとか、ヌケヌケときれいごとを並べているようだが、なんともチャンチャラおかしいたわごとというほかはない。
 アメリカとEUのお偉方にお尋ねしよう。あなた方は、かって(そんなに昔のことじやないよ)セルビア国内でアルバニア系住民の分離独立運動が起こった時、どんな態度をとったのかね。このことについては、いかにすっぺらこっぺら言い逃れの上手いあなた方でも、到底答弁ができかねることだろう。
 ケリー米国務長官は、ロシア側の対応を「まるで19世紀に逆戻りしたようだ」と述べたそうだが、そういうあなた方はどうなのか。グレナダ、パナマ、グアテマラ、そして何よりもベトナム戦争といった自らの行なった振る舞いを、真摯に振り返ってみたらどうか。
 この際だから、云わせてもらおう。現在只今、この地球を眺めると、残念ながら万人に胸を張って、“大義”を宣言できる強い説得力を持つ国家も集団も皆無に近いのだ。本来ならば、それを体現しなければならぬ勤労者、市民の力が、嘆かわしいまでに衰えてしまっているというのが現実の姿である。夢物語と哂われるかも知れぬが、海を越えた全世界の働く者の連帯が、今ほど必要とされているときはない思う。

                          ※   ※   ※

さて、安倍政権が特定秘密保護法に続き、国会の多数を頼んでゴリ押しを図っている集団的自衛権行使容認の問題だが.この不逞な策動に“待った”を掛けようと、憲法学者、作家、俳優らが呼びかけて「戦争をさせない1000人委員会」を立ち上げた。ところで、このニュースをNHKは、一言たりとも報道しないようである。なぜというぺきか、やっぱりナというべきか。さすが、あの籾井会長が君臨することになったNHKほどのことはあると、恐れ入った次第だ。
 そして同じ報道姿勢から導かれてくるのだろうけれど、中国の全人代の模様を伝える際は、とにかくあの国が周辺諸国に脅威を与えていることを、強く印象付けようとして、躍起になっていたようである。まアこれが、「公共放送」というものの正体だ。この傾向は強まりこそすれ、弱くなることはない。くれぐれも要注意。
                          ※   ※   ※

 さらに、今のところ麻酔作用の効き目が続いている「アべノミクス」に併せて、北方四島問題で、なんとか更なる得点を稼ごうと企んでいる安倍晋三氏だが、この野望の行方はいかん?ウクライナ問題のとばっちりを受けて、プーチン氏との“個人的信頼関係”も微妙になってくるのではと、囁かれている。
 それにしても、一つの政権、一人の政治家の人気と延命の道具にしたい魂胆が見え見えのこうしたテーマには、われわれとして、真に勤労者・市民の立場に立った慎重かつ大胆なアプローチがなされるべきであろう。
                                               2014・3・6


★果たして頼れる親分なのか?
    安倍晋三氏の愚かな計算            
205

 このままでは、済むまいという予感めいたものは、あった。
 アメリカやEU主要国のトップが、まことしやかな理由付けで、ソチ五輪の開会式に欠席するなど、穏やかならぬ雰囲気に、包まれていたからである。
 西側諸大国は、シリア問題で彼らの思惑が大きく外れ、その野望が挫かれている現実の中で、ウクライナでまたもや失点を重ねることには、とうてい我慢ができなかったのであろう。なりふりかまわず、体裁などいささかも気にしないで、あからさまな内政干渉に乗り出し.あの国の極右勢力までも取り込んで揺さ振りを掛け続け、とうとう今回の「成功」にこぎつけたものというべきか。
 もちろん彼らの野望を、かくも見事に成就させた原因としては、ウクライナの政権の無能、腐敗その他諸々が、挙げられるであろう。よほどのマイナス要素が重ならなければ、こんなにも呆気ない崩壊が起こるとは考えられぬ。
 いずれにせよ、今ウクライナの民衆は、貪婪な欲望の権化と化した、EUの支配層が企む東方政策の餌食にされようとしているのだ。そしてEUの背後には、いうまでもなくアメリカが控えている。
 今回の一連の動きの中で、アメリカの方がむしろ、時には逡巡するEUをけしかけてきたという見方もあるくらいだ。人口五千万を超えるウクライナは、アメリカや西欧の巨大資本の眼には、まことに魅力的な市場、未開拓のフロンティアと映ることであろう。
 確かに、地理的な或いは歴史的文化的な、親欧米対親露の矛盾相克などという、一面もあるかむ知れぬ。だが、その深部に潜む醜い動きを洞察することこそ、大切だといわねばならない。

                         ※   ※   ※

 ところで、わが日本の情勢はどうだろう。安倍首相は、集団的自衛権行使の容認は、自らの閣議で決定できるという、とんでもないことを言い放った。公然たる解釈改憲宣言である。そして最近明らかとなったエネルギー基本計画の政府案では、原発が「重要なべースロ−ド電源」と位置づけられ、その再稼働を進めるとはっきり述べられている。敵サン、いよいよ牙を剥き出してきたな、という感じだ。
 天皇は現人神だ。と嘯く“女学者”や、南京事件は捏造だと居直る“小説家”が、NHK経営委員として、大手を振ってのし歩いている。安倍氏は、「世論は俺の味方をしている」と自惚れて、どんな無茶でも通せると思い込んでいるらしい。
                         ※   ※   ※

 だが、われわれも黙っているわけには行かぬ。アべさんよ、まアせいぜいでかい口を叩いていろ、今に泣きべそをかくことになるゾ、それに、あなたが頼りにしているアメリカだって、どう動くか分かったものじゃないよ、対アジア、太平洋問題に軸足を移したとか何とかいわれているが、アメリカにとっては結局ヨーロッパ、中東がいっち眼目なのだ。此度のウクライナのことで、よく分かったろう。中国とは、(さしあたり)ことを構えたくないのだ。
 親分の意中を確めずに、浮かれ騒いでどうするのかネ。引っ込みがつかなくなっても、いいのかい。
 さて、われわれのなすべきこと…。増長慢も極まった安倍氏のおろかな政策が、これ以上国民に禍を脊さぬように、あらゆる機会を活かし、持てる手段を用いて、彼の手を縛っていかねばならぬ。これは、ずいぶんと骨の折れることになるけれど、避けて連れぬ課題である.
 とにかく頑張りましょう。
                                                2014・2・25

★民衆自身の力こそが
   この国の未来を決める                
204

 
“勤労者の生活が向上するためには 経営者が儲けることが先決だ”…悪名高く、そしてまた世界的にも未だ「御用済み」が宜告されていない、サッチャー=レーガン路線(新自由主義路線)をひとことで括ってしまえば、こんなことになるのだろう。
 さて、その醜い申し子といえるアべノミクスだが、過日の国会の予算委で安倍首相は、野党の追求に対して、おおよそ次のように述べた。「(経営者に求められるのは)賃金を上げること、ボーナスであれ、基本給であれ、それを増やすことによって働く側にも活気が生まれ.企業の業績も上昇する.ひいては社会全体の繁栄につながるだろう。」まア、コトバとは便利なものだうっかりしていると、資本が潤うよりも、労働者の賃上げの方が先だ、と云っているようにさえ聞こえかねぬ。いうまでもない話だが、問題は口先だけの議会答弁で終わらせてはならない。自公政権が資本家側に何をやらせるのかということが、眼目なのだ。
 とはいえ、彼らの作戦はなかなか手がこんでいる。安倍首相が長広舌を振るった予算委で自民党の某議員は、御大の怪気炎を受けてこんな発言をやったものだ。「儲かっていても賃金を上げようとしない不心得な企業は、その名前を公表してお灸を据えたらよい」 いやはや、恐れ入った次第である。冗談でなく、こっちとしても、真剣な対応を迫られる事態ではないか。
 敵サンは、今や無遠慮にわれわれの陣地内に、頼み込もうとしている。彼らのずうずうしい振る舞いに、手渡しい反撃を!
                         ※   ※   ※

 いつも同じこととはいえ、諸大国の思惑を秘めた駆け引きが交錯する中、開かれた冬のオリンピックは、連日季節とは裏腹な熱いたたかいを繰り広げつつ、多くの人びとを興奮の渦に巻き込んでいる.
 それにしても、このオリンピックというもの、なんと巨大な話題性をもつものか…と、驚くばかりだ。
 テレビを視たら、十九歳でこの国初のフィギユアスケート競技の金メダルに輝いた選手に、安倍首相が早速お祝いの電話を掛けたとか報じられていたが、その祝詞の中に、“日本男児”という言葉があったのが、いささか気になるところである。安倍氏という人物のホンネが出たといえばそれまでだが、この調子で行けば、いずれ臆面もなく“大和魂”とか“忠君愛国”などと平気で嘯くようになるだろう。そんなことを許してはたいへんだ。一日も早く、彼の主導する自公政権を終わらせるための戦線を築かねばならぬ。

                         ※   ※   ※

 それはそうと、われわれの側の態勢が、現下の状況の中で、イマイチ立ち遅れていないか心配だ。また、急速な右傾化を阻止するための、言論戦に役立てようという狙いなのか、明仁天皇が語ったとされる言葉を引用して、安倍政権の政策批判を行なったりしている所論が、見受けられる。
 第二次大戦後、アメリカがその占領政策の中で、日本軍国主義の根絶を重要任務と位置づけていたこと、そのため将来の日本国の象徴となる人物の家庭教師に、絶対平和主義の立場に立つクェ−カー教徒の女性を選ばせたであろうこと…これは疑うべくもない真実であり、そのことが、今となっては歴史の皮肉というべきか、現在のアメリカの世界戦略にとって、あまり好都合ではない結果をもたらしていると、見られぬこともない。
 でも、それをわれわれの平和を守る運動に、援用しようとするのは、如何なものか。そうでなくとも、この国の民衆の中に根強く潜む事大主義思想、非自立的傾向、テレビの水戸黄門のドラマの人気が廃らぬ現実…これらについて、もっともっと掘り下げた考察が、進められるべきだと思う。
                                                  2014・2・16

★そろそろメッキも剥げだす頃だ
  いつまでもわが世の春と思うな安倍政権      203

 沖縄県名護市長選挙の結果は、ここ最近東北地方被災地の自治体選などで黒星が続いていた安倍政権にとって、更なる打撃となった。
 注目すべきは、権力にものを云わせる自民主導勢力が、沖縄振興費に基づく「地域振興政策」をエサに、露骨な懐柔を試みたにもかかわらず、それが無残にも失敗したことである。もちろん政権側は、強気の構えを崩しはしない。既定方針を実行するばかりだと開き直り、移設作業を続けると言い放っている。
 でもこれは、所詮“日本を取り戻す”などと嘯きながら、その実沖縄を取り戻すこともできない彼らの見え透いた虚勢の表れであろう。
 とはいえ安倍政権は、今のところ、まだまだ自信を失ってはいない。アベノミクスの効用を強調しつつ、経団連との談合の結果今春は賃上げも可能となっていると自らの政策の成功を強調して、情勢の主導権を握り続ける構えだ。
 敵サンの堅陣に、楔を打ち込むことは容易ではない。だがそれをやらねば、勝利への道は開かれぬ。

                          
※   ※   ※

 注目の的、東京都知事選の行方も、なかなか厳しいらしい。自公側は“原発の是非だけが選挙の争点ではない”とそれ自体はまっとうな論理を弄びつつ、何とかして原発を温存し、彼らのご主人たる巨大資本の利益を守ろうと、決道をあげている。
 時と場合で、「原発は重要なベース電源」とか「いや過渡期のやむを得ぬエネルギーだ」とか、適当に言葉を使い分けながら、テメエの弱点をぼかし、選挙民の目をそらそうとする、彼らの画策を打ち砕いていくことが、急がれなければならない。
                          
※    ※   ※

 籾井NHK新会長が、就任記者会見でしゃべってことが物議をかもしている。
領土問題、従軍慰安婦問題、首相の靖国参拝、特定秘密保護法…、何から何まで、良くもこれだけ不届きな発言を並べたものだ。
 菅官房長官も、苦虫をかみつぶしたような顔で陳弁に追われていたというし、安倍氏の息のかかっているNHK経営委員長も、オカンムリだったそうである。まア“親の心子知らず”とは、こんなことを指すのだろう。ゴマすりも度が過ぎると雇い主が、かえって迷惑するということの典型的な事例だ。召使のそのまた召使が、やらかしたみっともない一幕。
                          
※    ※   ※

 文部科学省が、中、高校の学習指導要領解説書を改定し、尖閣と竹島を日本固有の領土と明記することを決めたという。
安倍首相の靖国参拝の衝撃いまだ冷めやらぬこの時期に、どうして?と首をかしげたくなるニュースであるが、考えてみれば「はだしのゲン問題」の時のコメントでもわかるように、下村文科相というおヒトは、もともと名うてのタカ派のようだ。これがどういう結果を招くことになるか、自分が蒔いた種は、自分で刈り取ればよいだろう。
                          
※    ※   ※

 タイ、ウクライナ、シリア、北朝鮮…海外からは相変わらず憂うべき報道が数多く飛び込んでくる。人間とは、もう少し理性的な行動がとれないものか。
それにしても、この国の政府首脳がふたことめには口にする、共通の価値観を持つ国々の連携という言葉の、なんとむなしく響くことよ。
                                               2014・1・29

★旗幟を鮮明に
  必ず道は開ける                    
202

 新しい年を迎えたこの国の政治は、何処に向かうのか。
 昨年終盤あたりから、露骨な右傾化路線の旗印を鮮明にしつつある安倍自民主導教権だが、彼らはただのネズミではない老獪さも、持ち合わせている。
 石破幹事長は、年頭の所感の中で、彼らの大目標はなんといっても経済の再建活性化を磐石たらしめることだとして、憲法改定やそれに先立っ集団的自衛権の問題は、前者が成功裡に推移する中で、多くの国民の理解が深まっていくものとの“期待感”を示した。要するに無理はしない、しかしあくまで根本理念は変えず、じわりじわりと目的意識を持ってことを進めていくというわけである。有無を言わせず、短兵急に運ぼうとするやりかたよりも、情勢を慎重に判断して、政策の実施に際しては、緩急自在に対処するというこの柔軟性、これはなかなかに手ごわいと思うのだが、皆さんどうお考えであろうか。

                         ※      ※      ※

 さてヒョンなことから年明け早々行われることが決まった東京都知事選だが、右から左まで全政治勢力にとって、当初想定してい構図とはかなり異なった展開になってきたといえそうである。
 楽勝できる候補者を見つけて、ほぼ万全な布陣ができたと考えていたであろう政府与党筋に対し、元首相の肩書きを持つ二人が投じた一石は、とんでもない衝撃をもたらした。
 また革新の側から見ると、突如登場した“俄か脱原発”勢カは、一種の撹乱作戦とも受け取れるものであろう。それにして、長年地道な活動を続けてきた運
動の訴えよりも、横合いからいきなり飛び出してきた「有名政治家たち」の発するメッセージの方が、人びとの耳に入りやすいというのは、どういうことなのか。深刻な問題を孕んでいるといえよう。いずれにせよ、打っちゃつておけない出来事があまりにも多い。
労働者の賃上げ問題では、アベノミクスの跳梁を背景に、自公政権は日本経団連などと語らって、労貸の問題にまで口を出そうとしている。労働組合や革新政党の活動領域へズカズカ踏み込んで、その影響力を削いでいこうとさえ企んでいるようだ。このまま放っておいたら、たいへんなことになるゾ。

                         ※      ※      ※

 中東、アフリカ諸国を飛び回っている安倍首相の動きは、いったい何なのか。いうまでもなく、わが国の支配勢力たる巨大資本の喫緊の要請に忠実に沿ったスケジュールに他ならず、石油資源を中心とするエネルギー確保戦略と、巨大な市場価値を持つ発展途上国への参入としての、なりふりかまわぬセールス活動ということに、帰着するわけであろう。そしてこの行脚が、結果として日本資本主義の膨張と延命に「寄与」することも間違いない。かかる現実に、われわれは、どういう態度で接したらよいのだろうか。

                                               2014・1・15

★沖縄も取り戻せぬ
   安倍自民主導政治
    来年こそ反転攻勢の年だ             201

 年の瀬を前に、国の内外を問わずおよそ、この人間世界は、なかなか明るい方向に道が開けるということにはならないようである。
 安倍政権は、米軍普天間飛行場の辺野古への移転について、仲井真沖縄県知事を強引に「説得」し、遂に承認を取り付けてしまった。また首相は、突如として靖国参拝に踏み切り、中韓両国、東南アジア諸国はもとより、大親分のアメリカをも唖然とさせる始末である。
 さらに原発再稼動の画策にいたっては、いまや誰憚ることもないという顔つきで、エンジンを掛け始めた。特定秘密保護法制定のごり押し以来、にわかに露骨さを増した自民主導政権の振る舞いの背景に、いったい何が隠されているのか、イマイチよく分からぬが、案外連中の頭を支配しているのは、アべノミクスの神通力への過剰な自信と総選挙まであと三年もあるという、単純な安心感なのかも知れぬ。だとすれば、彼らの本質の底の浅さも、知れようというものだ。

                         
※      ※      ※

 そうはいっても、敵さんは、まだまだ弱みを見せてはくれぬ。怪しげな成長戦略への期待は、なお多くの民衆の中に存在し続けており、自らを潤すことにつながるのなら、資本の跋扈にもあえて眼をつぶろうという態度も、決して珍しくはない。
 そしてまた、かかる世間の雰囲気を強めることに大きな役割を演じているのが、マスメディアなかんずくNHKである。安倍氏個人の意向がモロに現れた経営委員会の顔ぶれ、新任の会長の動向など、今後いっそうその放送内容も含め、権力ベッタリという色彩が、濃厚になってゆくであろう。警戒の上にも警戒を強めなければならぬ。
                         
※      ※      ※

 海外を眺めてみても、パッとしない報道が目立つ。
 タイの首都バンコクのあの騒動、与野党の攻防は、どっちもどっちといったバカバカしい性質のもののようだが、政権を揺さぶる野党側は、どうせ選挙をやっても勝てないのだから、トラブルを徹底的にやりぬいて政府を退陣に追い込むと、アケスケに語っているらしい。そういえば、野党を支持する社会勢力は、企業家や成金、要するに富裕層だというから、なんのことはない、おかしな政権をもっと悪いグループが、追い落としにかかっているということのようだ‥・。
 そして東欧に視線を移せば、ウクライナの政治経済情勢に絡んで、EUとロシアの網引きが行なわれ、現段階で一歩連れをとったEUがロシアの内攻干渉だと非難しているが、公平に見つめたとき、アメリカを含む西側の方が、はるかにあからさまな手練手管を用いてきたことが、ハッキリしている。彼らの企みが成功しなかったので、悔し紛れに悪罵を放っているに過ぎないのだ…。
 ま、なんというか、この国も世界も、なかなかよいニュースには、恵まれないのだなアという思いを禁じえない。
                         
※      ※      ※

 あまり士気を鼓舞する材料に乏しかった今年の歳末だが、しかしながらものは考えようだ。悪いことがそんなに何時までも続くものか。とにかく、厄落としをやった気持ちで、心機一転、明年こそは反転攻勢の年にしたいものである。
 それではよいお年を!
                                                2013・12・29


★悪法を葬るまで闘いは続くゾ
   歴史は働く者が創るのだ!             200

“恥”というコトバを忘れたかに見える安倍自公政権の此度の所業、多くの国民が呆れて注視する中、「天下の」悪法は、成立してしまった。
 鼻歌交じりで「アべノミクス」の麻酔薬を人びとに嗅がせてきた彼らだが、調子に乗り過ぎ、この横車を押し通す過程で、数々の失態を演ずることにもなったのである。
 悪だくみ成就の一歩手前で、石破自民党幹事長は、民衆の抗議デモを「本質においてテロと同じたぐいのもの」とインターネットのブログ上で断定し、世論に挑戦した。彼、石破氏や自民党が、例えば在特会のヘイトスピーチなどに対して、今回のようなイチャモンをっけたことがあるか?…ない。彼らは、誰が敵で誰が味方か、よくご存じなのだ。
 そしてまた、追い認められてなのか、タカをくくってなのか、よく分からぬけれど、参院採決前日の土壇場で、野党の追及に対し「保全監視委員会など三つも四つも法津暴走の「歯止め」と称する機関新設の方針を持ち出してきたが、これらはいずれも猫が鰹節の番をするようなもの、或いは泥棒に金庫の鍵を渡すようなものと、物笑いのタネになったような「構想」なのである。
 だけど、なんぼ世間がこ茶番を指弾しようが、嘲笑しようが、国会における絶対多数というのは、なんとしても動かすことのできぬ重い重い現実だ。結果は、残念ながらご覧の通りである。
 さて問題は、今後のことだ。悪法阻止をめざして燃え上がったこの闘いの火を、絶やしてはならない。単純な運動の継続というのではなく、より強大でより広範な、戦線を形成するための新しい闘いを、スタートさせる意気込みで立ち上がろうではないか。

                         ※      ※      ※

 あちらさんは、“毒を食らわば皿まで”とばかり、間髪を入れず、次なる国民への不逞な挑戦状を突きつけてきている。
 そのひとつが、彼らのエネルギー基本計画の素案だ。これまでは、世論の動向を多少は気にして、過渡期におけるエネルギー確保の拠り所の一部と位置づけざるを得なかった原発を、今回は露骨に、重要なべース電源と公言したのである。ほとんど半永久的に、原発を動かし続けようとする魂胆なのだ。
 ことにわが島根には、この悪しき政策の立役者の一人、通産官僚OBのドン、H代議士がいる。彼の威光が恐れ多いのか、知事も松江市長も中電に対して、およそヘッピリ腰の姿勢に終始しているようだ。われわれの闘いは、厳しいゾ、気が抜けないゾ。

                         ※      ※      ※

 国外に眼を転ずれば、これまた情勢は複雑である。あれが社会主義国だというのなら、世界の社会主義にはおよそ未来がないということにもなりかねぬ北朝鮮、さらには、どんな資本主義社会よりも、貧富の格差が大きいのではないかとすら囁かれたりしている大国−中国、かくて前途は、なかなか見通しにくく、希望の光は簡単に見い出せぬとも云えそうだ。
 しかしながら、ここがど根性の見せどころである。来るべき社会の青写真は、われわれ自身が創り出すくらいの積極性を、発揮しようではないか。
                                               2013・12・11

※ふらふらしながら、なんとか
200号に辿り着きました。身の程もわきまえずに始めた作業ですが、さいわ い皆様の励ましに支えられて、ここまでやってこられたこ とホントに感無意の思いです。老骨に鞭打って頑張るといっても、さて、いつまで続けられるか、自信はありません。とにかく最善を尽くすのみ。

★国民を恐怖で縛り上げること
  それこそが特定秘密保護法最大の狙いだ    
199

 政府・与党は、予想どおり「特定秘密保護法(案)を衆院本会議で強行可決し、参院に送った。鉄面皮な話である。
 それにしても、なぜこんなにコトを急ぐ?政治的立場の違いを越えて、いぶかる声は多い。当然の疑問というべきだが、その解明はともかくこの悪法(案)がもたらすであろう“報道の自由”“知る権利”への暴戻な侵害の危険性については、いまわざわざ注意を喚起するのも愚かなくらい、明々白々な未来図といわねばならぬ。
 ところで、安倍政権がこの法律に賭ける狙いは、むろん一言ではいえぬほど広範・多岐にわたっているわけだが、最も重要なのはこの悪法によって、多くの国民が文字通り震え上がり、“触らぬ神に崇りなし”“お上に盾つくなど滅相もないこと”というので、とにかくおとなしくなっていくだろうということなのだ。そして、特定秘密とみなされる件数が無慮三十万乃至四十方にも及ぶと報道されているが、これも国民を恐怖でたじろがせるのに充分な数字である。

                          
※      ※      ※

 第二次世界大戦前の日本軍国主義体制やナチ=ファシズムと、まったくひとしなみなものだと短絡的に結論付けることには慎重でなければならないとしても、それらの悪しき先例に急速に近づいてきているというのが、どうやらまぎれもない真実のようだ。
だが闘いは、終わってはいない。たとえ国会の力関係がどうであれ、あちら側にはおよそ道理もなく、世論の支持もなく、いたずらに議席数を恃んでごり押しするしか手段を持たないのだ。
参院の審議日数は僅かだが、挽回のチャンスはまだ残されている。ただ不可解な謎というペきは、はじめにも触れたが、自公政権がどうしてかかる異常ともいえる執念で、悪法成立を急ぐのかということだ。ことに強行採決の前日、福島市で開かれた衆院特別委の地方公聴会で陳述者全員(自民党の推薦者を含む)が、法案に反対という結果だったにもかかわらずである!
 安倍晋三氏という人物の思想信条と政治哲学に、その理由を見い出すべきか、あるいはそれ以外の何か巨大なカが、働いているのか。ともあれ、われわれもよほどの覚悟を固めてぶつからねばなるまい。

                          
※      ※      ※

 猪瀬東京都知事が、選挙戦に臨む直前、巨大医療法人グループから多額のカネを受け取っていて、その後同グループの公職選挙法違反容疑が明るみに出るや、それを全額返却していたこと、そしてそのカネが選挙資金だったか、それとも個人的な借金だったか等々…をめぐって、メディアが執拗に報道を続けている。
 でもありていのところ、こんな話どっちでもよいというのが、正直な感想だ。政治とカネをめぐる不透明な話題などというのは、昔から今に至るまで、うんざりするほど聞かされている。誤解を恐れずに言うならば、この世の諸々の問題の中でも、およそ枝葉末節の瑣末事というべきだろう。
 ただ猪瀬氏個人が、これまでゼニカネの問題でとかくの噂を立てられたことはなかったこと、この慎太郎氏の懐刀の身辺は、割合清潔だと受け止められていたことからすれば、あアこの御仁も結局世間並みのおヒトだったんだナ、ということになるのかも知れぬ。要するにそれだけの話…。

                          
※      ※      ※

 国家安全保障会議(日本版NSC)設置法が成立した。特定秘密保護法論議の陰に隠れて、それほど大きな国民的関心の対象になることもなく、内外の支配勢力の思惑通りに決着したという感じである(この両者は不可分の関係にあるにもかかわらず)今後われわれの目線で、彼らの動きに警戒を強めでいかなければならない。
 中国国防省が、「防空識別圏」を東シナ海に設定し、その中に尖閣諸島(中国名釣魚島)が含まれているという。この時期になぜ、という戸惑いを覚えるニュースだが、なりゆきが心配である。くれぐれも、日米のタカ派を勢い付かせることが起こらぬよう、祈るばかりだ。
                                               2013・11・29


★自信と誇りを持って前へ進もう
   その上で既往にとらわれぬ大同団結を     
198
  
 小泉純一郎元首和が唐突に原発無用論をぶったというので、たいそうな話題となっている。
 「そんなことを言える義理か」とか「よくもまアぬけぬけと」という反応もあるようだが、“過ちを認めるのに遅すぎるということなし”という格言もあるので、ここはあまり固いことは言わずに素直に肯定的に受け止めたらよいと思う。ただ当然のことながら、ハッキリさせておかねぼならぬことがある。
 もともと”原発を無くそう”という主張は、過去数十年にもわたってこの国の先駆的な市民運動グループや革新政党が、訴え続けてきたことなのだ。それをいきなり横合いから飛び出して、いけしゃあしゃあと大口を叩くというのは、なんともずうすうしいやり方だとはいえるだろうし、あの人物らしいスタンドプレイだということにもなるだろう。メディアがあんなにもデカデカと報道すること自
体、その裏に隠されているのがなんなのかと、分析したくなるというものだ。
 それはともかく、この小泉氏の発言に社民党あたりが早速飛びついて、“共闘”を呼びかけたりしているようだが、率直に申してこの姿勢はあまりいただけない。既往は咎めず一緒にやろうということーこれはもちろん当然の大前堤であり、かかる構えを持たなくては、幅広い運動は創り出せない。原発問題に限らず、どんなテーマに関しても、柔軟な対応は不可欠というものだ。ただし、それは今回の小泉氏に対するような、なにか物欲しそうな懇願するような姿勢であってはならない。
 あえて忠告する。「君たちこそこの運動の大先達だ もっと矜持を持て」と。その上で小泉氏とでも誰とでも、実行できることは、協力して進めていったらよいのである。

                         ※      ※      ※

 山本太郎氏の行なった“愚行”については、われわれはただ呆れるばかりで、マトモに批評する気にもなれない。彼の行為は、少なくとも建前の上では“象徴”以外の役割を持たないとされている明仁天皇を、なんたることぞ、それよりも大きな存在として浮かび上がらせるという、パカバカしい逆効果をもたらした。
 そしてこのことは、政府、与党、およぴそれらを背後ら操る諸勢力が、山本氏を「不敬を働いたやから」と糾弾して、天皇の元首化への画策の地ならしに利用しようとする動きに、弾みをつけることにさえなりかねないのだ。
                         ※      ※      ※

 TPP交渉の前途に、暗雲が漂ってきたという報道が伝えられている。全ての品目について、関税撤廃を前提として話し合おうというのが.ほとんど全加盟国の意志であるらしい。
 このことはただ単に、安倍内閣と自公両党の政策の成否が問われるというだけに止まらぬ。わが国民の命運にかかわる重大な岐路に、差し掛かっているというべきだ。ホントに目が離せない。

                         ※      ※      ※

 前号で報じたNHK経営委員の国会同意人事案は、あっという間に決まってしまった。いかに首相の専断事項であるとはいえ、これほど有無を言わさぬやり方で臨んでくるとは、予想できなかったというほかはない。思えば迂闊であった。
 これまでにも増して、メディアへの支配を強めようとする彼らの意図が、露わになってきたというべきであろう。
 われわれも並々ならぬ覚悟で立ち向かわなければならぬ。

                                                2013・11・17


★国民への不逞な挑戦
   「特定秘密保護法」、NHK経営委人事      197

 「特定秘密保護法案」への安倍晋三氏の思い入れには、並々ならぬものがあるとお見受けした。
 誰の眼にもファシスト政権、警察国家そこのけの意図丸出しと映る最初の草案が、あのように世論の囂囂たる非難を帯びたと知るや、すぐさまあれこれ誤魔化しと言い訳を交えた継ぎはぎの条項を付け加えて、乗り切りを画策している。みっともないことこの上なしだが、かかるザマをさらけ出すことさえ厭わぬという姿勢の中に、むしろどんな手段を使ってでも、この悪法を成立させずにおくものかという、安倍首相と自民主導政権のふてぶてしい魂胆が、うかがえるというものだ。
 とはいえ、その足元はもとより磐石とはいえぬ。彼らが自家薬籠中のものと安心しきってきたマスメディア界も、今度ばかりは(少なくとも表面的には)いつものゴマすり的対応は、できないでいるようだ。そりやそうだろう、彼らのお題目たる“報道の自由”“知る権利”に対する真っ向からの挑戦に、他ならないのだから。
 さてこうした情勢の中で、われわれの成しうることといえば、どういうことになるのだろう。確かに国会の議席数では、まったく問題にならない劣勢である。そして、野党も一枚岩とはいえぬ。議会外での大衆行動の組織化などと口で言うのは簡単だが、これは現実間題として容易ならざるごとである。
 だが、難しいからと逃げてはならない。英知を絞ってベストを尽くそう。ことは、憲法をも平気で踏みにじる悪法の成立が、阻止できるか杏かという瀬戸際なのだ。

                         
※      ※      ※

 次に、これこそ呆れ返ってコメントもできかねるようなニュースが、伝えられている。政府がこのたびNHK経営委員会の委員五人の国会同意人事案を、衆参両院に提示したのだが、そのうち四人までが安倍首相と個人的に親密な関係にあり、思想的にも極めて近い超右寄りの人たちであるというのだ。
 その一人、長谷川三千子氏は有名な保守派の論客として知られ、時代錯誤的な“家制度”の擁護者である。また別の一人、百田尚樹氏という小説家を自称するおヒトは、昨年の自民党総裁選で安倍氏を応援した経歴の持ち主で、最近札付きの右翼雑誌『WILL』の最新号に、歯の浮くような安倍晋三礼賛論を掲載した張本人だという。
 それにしても、安倍という御仁は、前にも触れたことがあると思うが、小心さと図々しさを併せ持つ、実にキテレツな人物だというほかはない。まアかかるやり方に対しては、遠慮は無用である。気の毒かも知れぬが、徹底的に糾弾する以外に、よい方途はあるまい。

                         
※      ※      ※

 超大国アメリカの諜報期間のみっともない所業が次々と明るみに出されて、友好国の首脳たちからも抗議が相次ぎ、オバマ大統領は釈明におおわらわである。その中にあって、わが安倍政権は英国のキャメロン首相と共に、事態の沈静化のため懸命になっているようだ。
 しかし英国の場合は、何と言ってもアングロサクソン国家としての血肉のつながりが、そのような態度を択ばせているのだろうけれど、わが政府のあの歯切れの悪さは、いったい何処から来るのだろう。情けないといったらありゃしない。
                                               2013・10・31

★次々に繰り出す悪だくみ
    だが彼らの専横に未来はない          
196

 手練手管の限りを尽くして、念願の消費増税実施を決めた自公政権だが、これで終わりじゃないよとばかり「解雇特例特区構想」とか「特定秘密保護法案」とか、次なる国民への物騒な「プレゼン卜」を用意して、その成立を急いでおり、その上さらに「武器輸出三原則」の見直しというとんでもない企みまでも打ち出してきた。
 そしてこの“見直し”には、万人周知の体制派学者、北岡伸一氏を座長とする「安全保障と防衛力に関する懇談会が重要な役割を果していて、そのメンバーたちは彼らの悪智恵をもって安倍政権の国家安全保障戦略(MSS)を強力にサポートしようというわけである。
 さて、アベノミクスの神通力いまだ翳りなしと思い上がって、安倍晋三氏とその黒幕がなおも国民への不遜な挑戦を止めず悪政に拍車を掛け続けるならば、いかに我慢強い民衆といえども遂には怒りを爆発させ、奢る彼らの屋台骨を、揺るがす事態に発展しないとも限るまい。
 ま、今のところこんなことを云っても“痴人の夢”としか思われぬだろうが、われわれは本気でその日の早からんことを願っている。
                         
※      ※      ※

 早い話が、安倍政治の綻びはTPP問題をめぐって端的に現わているようだ。
もともと超大国アメリカの思惑に巻き込まれ、進むことも退くこともママならぬ窮地に追い込まれてしまっているのが日々明らかになっているけれど、マスコミ、の報道から判断しても内閣−自民党−JA等彼らの支援団体−の矛盾は深まるばかり、臭いものに蓋をしてきたやり口のツケがようやく回ってきた感じである。 もちろん大状況的には、このTPP問題はとてつもなく複雑な要素を孕んでお
り、誰の眼にも明らかなように台頭する中国を睨んだアメリカ主導の政治経済戦略の一環ではあるけれど、TPP参加国の中には社会主義国ベトナムも含まれていて、その動向にはなかなか微妙な点も見受けられるらしい。
 いずれにせよ安倍政府−自民党は、口を開けば“国益を守る”の百万陀羅を繰返しているが、彼らのいう「国益」の中味をよくよく吟味することが大切だ。騙されてはならぬ。

                         
※      ※      ※

 オバマ大統領と議会の対立から、発生していた米国債デフォルト(債務不履行)の危機は土壇場で回避され、アメリカの威信はなんとか保持できた。だが世界の超大国が醜態を晒したという事実は、動かせない。
 そこへもってきて米軍による無人機の攻撃という非人道行為がパキスタンやアフガニスタンで繰り返され、多くの犠牲者が出ていることについて、遂に国連が名指しで警告する事態となった。
 世界の憲兵と自惚れていたアメリカも、黄昏れてきたのかナ、そのような受け止め方をするのは、いささか早とちりに過ぎるというものだろうけれど…。
                                                2013・10・23


★でかい態度の自公政権に
   なんとしても一泡吹かせてやろう
             195

 「積極的平和主義」という耳慣れぬ言葉が新聞、テレビで飛び交い、誰がしゃべっているのかと思ったら安倍首相である。
 その中身といえば、集団的自衛権行使容認、日米同盟いっそうの深化、領土問題一歩も退かず、エトセトラ…というのだから、あいた口が塞がらない。
 特に集団的自衛権については、日本との地理的距離と関係なく、適用していくというわけで、中東だろうが何処だろうが、世界のいかなる地域紛争にも、ホイホイと首を乗っ込むことOKという危険極まりない方向に、道を開うとする目論見に他ならないのだ。
 見逃せないのは、とかく安倍晋三氏(安倍氏に限らぬが)のような要路の人物が、わが国と世界の命運にかかわる重要問題についての発言を、日本国内でなく海外で行なう傾向が目立つことである。
 とりわけゆるがせにできぬのが、それを聞かせる相手がそれらの国のメディアであるに止まらず、ある意味ではむしろ日本国民を想定して、なされているように見受けられることだ。
 先だっても、安倍氏はアメリカでの演説の中で、自らの政治姿勢に関し「それを右翼の軍国主義路線と呼びたいのならそう呼んでくれ 右翼路線で何が悪いか」と開き直っている。かかる露骨な挑戦に対して、われわれはどう立ち向かうべきか。「そんな発音をやる場所として何故外国を択ぶのか 日本国内では堂々といえないのか」と指摘してやりたい。おそらくこの男、見かけによらぬ小肝な人間なのだろう。
 でもなんであれ、そういう人物がいまだ国民の中で大きな支持をつなぎとめてている事実は、残念ながら否定できない。故に厚顔無恥な政策を、ぬけぬけと打ち出せるのである。復興法人税の前倒ししての廃止、投資促進のための大規模法人減税など止まる所を知らないありさまだ。
 その一方で福祉対策や原発事故対策が、どのような扱いを受けているか、いまさらここで述べるまでもないことであろう。
 しかしながら、それはそれとして、われわれも自らを省みてよくよく反省しなければなるまい。彼らのこうしたずうずうしいやり口を、許しているわが方の態勢の弱さ、脆さ、ホントになんとかできぬものか。彼我の“思想闘争”(こんな言葉ーいささか古色蒼然と言った印象が否めぬけれど)の土俵でも、率直にいって押され気味…、だから自公政権は、経営者団体との会合の席上で“資金をもう少し上げでやれ”などと「要望」したりするのである。
 まさに労働組合や革新政党のお株を奪おうという、鉄面皮な姿勢だといわねばならない。

                       ※      ※      ※

 ヤマ場を迎えたシリア情勢、ドイツの総選挙結果、世界はいったい何処へ行く?歴史の牽引者たるべき勤労人民が、いま本来のカを充分に発揮しえていない現状、それを突き破るきっかけは、果たして見い出せるのか。
                                               2013・9・29


★二大統統領に物申す
オバマさん、いつからブッシュ父子の跡継ぎになっ
たのかオランドさん、社会党の看板が泣くぞ!
 今からでも遅くはない、考え直せ!          194    

「化学兵器を使用し、無差別に殺傷している」という言いがかりをつけて、オパマ米大統領は、武力行使に踏み切るゾとシリアのアサド攻権を脅しにかかり、フランスなども同調、世界情勢は一気に緊張が高まっている。
 内戦状態が続くシリアの現実をどうみるか、関係各国の立場により意見は様々に異なるとしても、この悲劇を一日も早く終わらせるためには、何はさておきたとえ一時的にも紛争当事者間の停戦を実現しなければならぬのにも拘らず、一方の側に肩入れして、流血の更なる拡大も厭わぬアメリカの態度は、まったく呆れたものというほかはない。
 これまでのシリア情勢の悪化に関しては、もともと中東地域におおきな利害関係を有するイギリスと、第一次大戦後二十余年にわたり当時の国際連盟から委任統治権を与えられていたフランスが、その張本人だと目されていて、アメリカはといえば、そのホンネはともかく、一応双方(アサド政権と反政府勢力)に働きかける火消し的な役割を引き受けてもよいという、ポーズを示しかけたこともあったのだ。それが一転して、事態をこときらこじらせる主役として名乗り出たのはどういうわけか。むずかしぃ国際事情を知らぬわれわれには、まったくわけがわからない。
 ただいえるのは、いかに“人道”を看板にして、その実火の手をひろげようとしても、なかなか人びとの理解と共感を得るのは容易でなく、そもそもの言い出しっぺの旗頭だったイギリスが土壇場で脱落し、さらにはG20の会議でもインド、インドネシア、ブラジルなど多くの人口を有する発展途上国のほとんどに.そっぽを向かれてしまっているというのが、動かぬ現実寒なのである。

                          
※      ※      ※

 ハッキリしているのは、オバマ氏のネライがこれまでのところ無残に外れ、国際的にも国内的にもニッチもサッチもゆかぬところに、追い詰められているということだ。そして、そんな状況の中で提案されたのが、ロシアのラブロフ外相による、シリア政権の保有する化学兵器の国際管理案である。アメリカとしては、渡りに船といったところか。まア、メンツも衿持もあろうけれど、建設的な事態打開策としてこの提案に応ずべきであろう。
 オバマ氏もこれまでの行き掛かかりは行き掛かりとLて、前向きの態渡を見せているとも伝えられるが、それが事実であれば喜ばしいことだといわねばならぬ。
 云う者に云わせれぼ、ロシアの提案は結局のところアサド政権が化学兵器を所有していることを告白しているに等しいというのだが、そんなことは別に驚くことでもなんでもない。化学兵器というものは、世界の大国といわれる国の全てが保有しているのだ。今度のことだっで化学兵器を所有しているかどうかではなく、それを使ったかどうかが問題になっているのである。アサド側が使用したのか否か。使われたとして使ったのはアサド政権だけなのか、反政府側はほんとうに“ シロ”なのか。一切は五里霧中なのである。それに何よりも声を大にして強調しなければならぬのは、どだい米仏などが、此度のようなことを広言する資格があるのかという点だ。
 広島、長崎への原爆投下を、今もって是とする立場を崩していないこと、ベトナム戦争時の枯葉剤散布よる今なお続く深刻な被害、無人機の飛行が現に多くの犠牲者を出しつつあるアフガニスタン、パキスタンの実情等々、どう言い開きをするつもりか。そしてアルジェリア戦争の際の、フランス植民地支配者たちの行動…、“顧みて他を言う”というコトパがあるのをご存じか。

                         
※      ※      ※

 2020年の夏季オリンピックの開催都市が東京に決まったというので、大騒ぎである。安倍首相や猪瀬都知事の笑顔がテレビに大写しになり、株価は早速大幅値上がりするという波及効果のしゅったいだ。
 これまでのどの(夏冬)オリンピック招致活動と比べても、今回は異常なほどのぼせ上がっていたように見受けられる。東京招致委員会の武田理事長の言とされるれる「福島とは250キロも離れているから、東京は安全だ」というコメントなどを新聞紙上で見ると、この“皇族崩れ”(?)のおヒ卜は、いうにも事欠いてとんでもないことをしやペったものだと思ってしまうが、とにかく東京に決まったのだから、節度を持って「世紀のイベント」の準備に当たってほしい。
 くれぐれもあんまり有頂天にならないで。
                                               2013・9・12


★ひとまず撃退したあちら側の策動
    これを契機に歴史の真実に迫ろう       
193

 テレビや全国紙でも大きく取り上げられ、松江市民もいささか肩身が狭かった『はだしのゲン』閲覧制限問題は、同市教育委員会事務局の手続き不備という結論となり、閉架措置が撤回された。
 人びとの耳目をゆるがした今回のできごと、いちおう前向きの解決が得られたというので、これを戟迎する声が大きいわけだが、この一件少し掘り下げてみると、単純に“よかったよかった”だけで済ませてよいものかどうか、考えてみなければなるまい。

                         ※      ※      ※

 メディアの報道によると、トラブルの最初の段階(昨年四〜五月では、当の松江市教委事務局も『ゲン』を閲覧する考え方はなかったという。そもそも発端となったのは、その当時松江市内に居住していた三十六歳の男性が「子どもに間違った歴史認識を植えつける」として、数回にわたり市教委を訪れ小中学校の図書室から『ゲン』を撤去するよう執拗に迫ったことだった。
 しかしその時点では、教委事務局も“ゲンが平和学習の重要な教材であり、外部の圧力に屈すペきではない”という一致した見解だったようである。同時に教委は警察にも対応を相談していたとされるが、これはこの男性が“在特会”(在日外国人を敵視する右寄り市民団体)の強い影響下にあり、自らの主張を通すためには、強引な手法もためらわないという姿勢の人物であることを市教委も認識していたからなのだろう。
 風向きが変わったのは、この男性がその後同様主旨の陳情を市議会に出すや(九月)、それを受けた市議会が、教育民生委員会で審査する過程で、「作品を見て判断したい」と継続審査とした頃あたりであったらしい。
 そして陳情そのものは、議会が判断することには疑問があるとし、全会一致で不採択とした(十一月)のだが、市教委側は、これを市議会が自らの判断を留保し、市教委にボールを投げたものと受け止めたのである。この過程の中で市教委(事務局)は、議会対策として『はだしのゲン』全巻を通読しているのだが、この時初めて旧日本軍の戦場での行為の描写が問題とされた。しかもそのことと共に指摘されたのが、昭和天皇の戦争責任に関連して天皇への侮辱が含まれているという点であったのである。
 ここでなによりも、われわれが見落としてならぬのは、この男性の“申し入れ”や“陳情”の主眼点は、なにも戦場における残虐行為の描写にあるのではなく、「天皇に対する侮辱」「間違った歴史教育の横行」が許せぬというおよそ真実に背を向けた政治的信条の押し売りにこそ、置かれているということなのだ(この三十六歳男性はメディアとのインタビューの中でそのことをアケスケに語ってもいるらしい)。
 原爆が個々の浅虐行為とは比較にもならぬ巨大悪であること、そのことに眼をつぶって、戦場での個々の非人道行為のみをあげつらう議論の欺瞞性―その点を指適するのはむろん必要なことであるが、あわせて昭和天皇の戦争責任(現代最大のタブー)に眼を向けることも、極めて大切なことだと思う。過去に眼を閉ざす者は、未来を見通すこともできぬというではないか。
 妙ないきさつから始まった此度のできごとではあるが、折角の機会である。腹蔵ない論議の契機にしようではないか。
                        
※      ※      ※

 とまれ、この騒動が右への傾斜を強めつつあるこの国の政治情勢の中で起こったこと、市教委が諸中学校にこの作品を閉架図書にするよう要請し、あるいはほとんどそれを強要するばかりの働きかけを行なったのが、昨年十二月〜本年一月のことであり、時期的に安倍政権発足時と重なること、大詰めの時点で安倍内閣の閣僚である菅官房長官、下村文科相が万人周知のみっともない発言を行ったこと、これらから推して、この全過程が客親的には、安倍内聞にとって大きな黒星となったことは間違いない。
 もちろん油断はできぬ。自民主導政権が続く限り、親玉が誰に代わっても同じことだが、われわれは何時類似の忌まわしい事件が起こっても、ぴくともしない態勢が組めるよう、警戒心を高めていこうではないか。
                                               2013・8・29

★どんな攻撃にも
    対応できる万全の態勢をつくろう        
191

 
立秋が過ぎてもなお猛暑の続く日本列島、そこへもってきて現下の政治情勢はといえば、安倍政権のコワモテの姿勢が急速に目立ち始め、集団的自衛権行使容認を見据えての露骨な法制局長官人事、空母と見まがうばかりの巨大へリ搭載自衛艦の進水等など、これまでは国民の反撃を恐れて控えていた、不逞な奥の手をずうずうしく明るみに出してきたのである。
 首相の発言も、このところ右寄りの世論を応援しようとする傾向を露骨に示していて、これはまさに彼らの「悲願」たる憲法改悪を、なんとしても実現しようとする“決意表明”というペきものだ。
 麻生太郎氏の不規則発言に関しては、もはやまともに論評する気にもなれぬ。そりゃいくらなんでも、彼にヒットラーやナチズムを礼賛する魂胆があったとは思えぬけれど、あんな超ワルの政治体制を多少とも肯定的にとらえて、自己の主張に援用しようとするところに、彼の思想のとんでもなさ、そして安倍自民主導政権の危険性が見え隠れしているのである。

                       
※      ※      ※

 エジプトは何処へ向かうのだろう。諸大国の思惑も絡んで、複雑な推移を辿っているようだ。
 それにしても、超大国が自らの中東における影響力維持のため、隠然たる力を発揮した今回の政変劇―アメリカはこれをクーデターと呼ばれることを嫌い、そのためわが国のメディアも“事実上のクーデター”と称し、本質を誤魔化して報道している―は、その後800人にも及ぶ犠牲者を出す深刻な結果を引き起こし、今なお解決のめどが立っていない。
 アメリカも西欧諸国も、自由や人権の抑圧、流血の事態に反対するといぅ見解を表明しているが、なかんずくペンタゴンの指示(少なくとも黙認)のもとに行なわれた政権奪取について、西側諸国が暴力を静止し、前大統領を解放するようにあれこれ注文をつけても、しょせん偽善者との印象は免れない。
 いずれにせよ、こういう事態が発生するたび痛感するのは、ここ長きに渡って全世界の勤労人民を主体とする悪への抑止力が、ほとんど機能停止に近い状態に陥っているということである。ほんとうに何とかできないものか。
                       
※      ※      ※

 米CIA元職員をめぐるトラブルは、ロシア政府の対応により一応今のところワシントンの横車が阻止されたかの如き経過をたどりつつあるようだ。
 ロシアがアメリカに一矢を報いたということは、何はともあれ、歓迎すべきニュースと受け止めるべきであろう。
                       
※      ※      ※

 涼風と共に彼我の対決は本番を迎える。なんとしても幅広い運動を構築して、あちら側の攻撃を撥ね返そう。今求められているのは、とにかく行動の統一である。小異を捨てて大同に就こうではないか。

                                               2013・8・20


★したたかさと柔軟さを発揮して
    未来を切り開こう                  190


 事前の予想と、そんなに違いのない参院選の開票結果であった。内外の支配勢力の督励と、マスメディアの全面支援を受け、「悠々」と勝利を手中にLた安倍自民党、それに引き換え野党側の不振は総じて眼を覆うばかりだが、その中にあって共産党だけは、彼らのスタンスの明快さと、すぐれた組織力−行動力によって、大きな成功を収めたことを特筆すべきであろう。
 それにしても、こうなるとあちらさんは誰憚ることなく、彼らの正体をむき出しにした政策を、次々と打ち出してくるのは必定だ。前途がわれわれにとって、容易ならぬ厳しいものになることは避けられない。

                       ※      ※      ※

 とはいえ、何時も云っていることだが自民主導政権のずる賢さにも、舌を巻いてしまう。消費増税の実施時期や引き上げ率の問題ひとつとってみても、なかなか「慎重」な態度を崩さず、いかにして多くの国民を丸め込むかと、彼らなりに細心の注意を払っていこうと智恵を絞っているようだ。
 一方、敵さんの芸のこまかさに比べ、野党陣営のお粗末さには、論評する言葉も見つからぬ。なにしろこの国を操る黒幕は、昨年暮れの総選挙に続く此度の参院選自民大勝で当分天下は泰平だと安心しており、政界再編などという七面倒くさいことなど考えなくてもすむと、タカをくくっているのだろう。なのに参院選後にわかに活発化した“野党再編”への動きーこれはいったい何を意味するのか?自公政権の下、ますます強まる巨大資本の攻勢や外圧に抗して、勤労市民寄りの政策を鮮明に打ち出そうというマトモな気構えも見られぬようだし、それどころかひょっとして黒幕にも秋波を送りつつ、自民がずっこけた場合の受け皿役として自分たちを認知してもらおうとする、きもしい魂胆が隠されていたりするのであれば、われわれは、そんなあだな望みはお捨てなさいと申し上げるほかはない。ご主人さまは、まだまだ君たちを相手にしてはくれないよ。つまらぬ野党再編の企てなど捨てて、心ある人びとよ、別の道を探せ。

                       ※      ※      ※

 最後に、躍進した共産党への期待と注文を簡単に述べる。かさにかかって襲ってくるであろうあちら側の攻撃を、跳ね返す頼もしい砦としての役割を、さらに力強く発揮してほしい。そしてくれぐれも反自民、反黒幕の幅広い戦線を、築く努力を忘れないでもらいたい。“自共対決”―このスローガンは、選挙戦期間中は有効だったかも知れぬが、現在ではむしろあちらさんを喜ばせかねない危険性を持っている。
 年寄りはどうしても、1949年(昭和24年)の苦い経験や、第二次大戦後ドゴール再登場にいたるフランス第4共和国時代の政治史を、振り返ってみたくなるのだ。歴史の教訓に学んで、未来を切り開こう。
 アナクロニズムの妄言と笑うなかれ。よくよく肝に銘じよ。
                                             2013・7・30


★ものごとの順序を間違えるなと
     主張することが大切だ
   〜ブラジルからの報道に学ぶ〜        
189  


 国の内外を問わず、人間世界の・空模様は、相変わらずどんよりとしていて、あまり晴れ間が見えない。
 先般の北アイルランドでのG8首脳会議でも、シリアに平和を回復する手立てを見い出すことが出来なかったばかりか、多国籍企業の跳梁にまつわる脱税騒ぎを、どう処理するかといういささか品下がる問題が大きな論点になったりして、みっともない限りである。
 国内を眺めれば、3・11以後2年余にわたり多少のしおらしさを表せざるを得なかった支配者層が、ここに来て仮面をかなぐり捨て、正面きって原発再稼動を声高に宣言する展開となった。
 最近一斉に行なわれた各電力会社の株主総会で、脱原発の提案をすべて否決すると、関西電力では間髪を入れず同社で使用するMOX燃料をフランスから搬入するなど、有無を言わせぬゾという構えである。
 参院選に臨む自民党の公約にも、それにピッタリ合わせた文言がヌケヌケと並べられる始末だ。昨年来の総選挙当時の遠慮探さは、今や微塵もない。

                       
※      ※      ※

 ところで悪知恵の働く彼らは、一方で当初の思惑とはいささかネライが外れた感じの憲法九十六条の改悪手続きの企みに関しては、急遽方針の手直しにへんがいしたらしく、慌てて問題を先送りすると共に、当面は今のところ化けの皮の剥げぬアべノミクスの旗印を振りかざしつつ、専ら“経済再生”を呼号して選挙を乗り切ろうとする構えのようだ。
 さりながら、そんな虫のいい計画が、果たしてすらすらと通るものかしらん。上手の手から水が漏れるという例えもあるが、ましてや嘘偽りで固めたこの醜悪な政策体系には、本来彼らの先客に近い人ぴとからも、成り行きを危惧する声が上がりつつあるようだ。
 何しろ安倍首相が調子に乗って口を滑らした、豪州やインドを語らっての中国包囲網構想や、ポーランドへの原発プラント輸出にからめて嘯いたとされる、欧亜に跨る防衛論議などは、まるで第二次世界大戦前の日独伊防共協定(反コミンテルン協定)を髣髴させるものである。もちろん安倍氏もまんざらのパカではなかろうから、いま尖閣をめぐる日中間の軋轢が、このままではどうしようもないデッドロックに乗り上げていることぐらい百も承知だろう。
 そもそも野田民主党政権の同島国有化宣言から始まった現在の事態を、とんでもない災難を引き継ぐだもんだと、ボヤいてさえいるのかもしれぬ。頼みとするアメリカも、それほど親身になって心配してくれているわけでもなさそうだし…。
 そんなこんなで頭が痛いところに、韓国の朴大統領が、国賓として中国を訪問、習国家主席と会談したというニュースが飛び込んできた。由来韓国の大統領は、就任すると最初にやるのがワシントン詣でであり、その次が日本訪問だったという。それが今度は、東京を差し置いて北京が二番目として選ばれたのだから、「一大事」である。まア パカバカしい話だが、自民主導攻権にとって、これはさぞかし気掛かりのタネになっていることだろう。
                       ※      ※      ※

 イラン大統領選挙、イスタンブールをはじめとするトルコ各地での反政府抗議運動そしてなかんずく、ブラジル全土に広がりかけている公正な社会政策を求める民衆の街頭行動に注目したい。ここで印象的なのは、テレビが伝える“サッカーを拒否するのじゃない ただ その前にやらねばならぬことがあるのだ”というブラジルの人びとの主張である。
 わが日本で、サッカーの国際大会やオリンピックが日程にのぼされたとしたら、市民の多くは、さてどういう態度を見せるだろうか…。
                                           2013・6・29


★まやかしのアベノミクスに惑わされず
      展望を開いていくことは可能だ      188


 つくづく思うのだが、権力者というのは存外正直な口の利き方をする。
 最近安倍自民党は、「財政再建という大目標の前には その妨げとなる聖域などない。社会保障費とて容赦はせぬ」と言い放った。そして同時に“成長戦略”をフル回転させるための巨大資本への後押しとしての設備投資減税に乗り出し、法人税率の大幅引き下げ実施に踏み切ると公言したのである。
 彼らの政治的立ち位置を、これほどアケスケに見せつけられたのでは、怒るよりも前に先ずあきれ返ってしまうほかはない。でも考えてみれば、多くの国民はかかる言い草を、案外素直に受け止める心理状態なのかナ。
 なんだかんだといいながら、企業の実績が改善されなければ、われわれ勤労者の賃金も上がらぬ。長いものに巻かれろということだろう…。
 さて、他に眼を転じて見れば、アフリカ諸国に色目を使って、ボロ解けを企んでいる経団連や安倍政権の振る舞いには眉をひそめたくなるけれども、これだって発展途上国の民衆の生活向上の為に、一応役立っことにはつながるのだから…、かくして死んだレーガンやサッチャー伝来のあやしげな屁理屈は、現代を生きる人ぴとにも、なおかなりの程度まで、影響を与え続けているわけである。嗚呼…。

                       ※      ※      ※

 株価の乱高下、円の対ドル、対ユーロ値の変動、アベノミクスがそろそろ馬脚を現しかけているとも取り沙汰されているが、忘れてならぬのはどんな局面の変動が訪れても、そのことで深い傷を負うのは常に民衆の側であり、支配する側は何時だって犠牲を被支配者層に押し付けることにより自らは損失を回避するか、或いはそれを最小限にとどめようとするわけだ。
 あれこれ身贔屓してみても、国民大衆は総じてお人好しである。根性の腐りきった支配層が持っているあの悪智恵には、逆立ちしでも及ばない。この際変な意味でなく、われわれは“無邪気な生きざま”を卒業しなければならぬ。支配体制の仕組みの裏の裏を読み解く洞察力を体得してゆきたい。

                       ※      ※      ※

 参院選の前哨戦と目された東京都議選が終わった。インチキ催眠戦略がまだその命脈を維持している政府与党が、予想通り勝利を収めたけれど、その事実は冷静に受け止めた上で、早急に今後に向けての態勢を整えねばならぬ。
 何時も言っていることだが、あちら側のやり口は陰険で周到だから、参院選では九十六条の問題をメインテーマから外して、われわれに肩透かしを喰わせようとするかも知れぬ。状況がどんな展開を示そうとも、きちんと対応できるようにしてゆきたい。
 都議選で見られた共産党の前進も、平和・生活・憲法等々をめぐる国民の意思は、決して支配者が期待する方向に簡単には向かわぬことを示したといえる。
 情勢は複雑だが、わが方が飛躍するチャンスも大きい。
                                           2013・6・24


★国の内外を問わず
 非論理がまかり通るこの現実
   諸国民の英知で“待った”を掛けよう     
187

 
これまでも機会あるごとに述べてきたことだが、マスメディアの果たす役割に、極めて大きなものがある。ことにNHKの場合、その影響力の度合いは、計り知れない。
 かなり以前からNHKテレビは、尖閣周辺のわが国の領海内に、中国の艦船が進入するたび、イチイチその事実を放送するのを日課のようにしている尖閣の領有権に関する日中双方の言い分が、真っ向から食い違っているのだから、中国側としては当然の行動ということになるのだろうし、かかる行動が現時点では、これ以上両国間の緊張をきらに深めるということにもなるまいと思える。
 だとすればわが国の公共放送が、なぜこうした月並みな情報を、飽きもせず繰返すのかという疑問が消えない。もしかすると.こんな瑣末情報でも、しっこく流し続けることによって、わが国民が危険な国際環境の中におかれていて、このままでは前途が危ういという世論を醸成することに、役立つとでも考えているのだろうか。
 テレビのもつ力、とくに公共故送のそれが、侮れぬことをよくよく知り抜いているわれわれとして、権力側のネライを充分警戒しなけれげならぬと思いながらも、もうひとつピンとこない気がしてならない。

                       ※      ※      ※

 それにしても、彼らが言っていることは実に独りよがりで、自己中心的な主張そのものであり、例えばこれも数回にわたって繰返された「国籍不明の潜水艦」による沖縄周辺の接続水域の潜航という報道なども、その顕著な一例である。 “接続水域”というのは、国際法上そこを航行しても差し支えないという規定があるそうで、なにも騒ぎ立てるほどのことではない。国会でも自民党議員が取り上げたというが、為めにする言い掛かり以外のなにものでもなかろう。
 おそらくこれに類するような行動は、わが自衛隊も、日常茶飯事のように繰返しているに違いない。そしてこの際だから疑問を提出したいのは、例の北朝鮮の核・ミサイル問題に絡め、北側のその打ち上げ施設の状況を、実に事細かに西側が掌握しているということについてである。すぐれた機能を持つ超高空からの撮影なのかどうか、いずれにせよこれは“盗撮”にはならないのか。それとも、何をするか分からぬ無法者の国家だから、真実を探るためには、これぐらいのことをやるのは当たり前だという開き直りなのか。
 まア理屈というのは、時と場合でいろいろ使い分けるというのが、国際政治の常識なのであろう。

                       ※      ※      ※

 論理もヘチマもないままに、この世界は動いていくのかなといささかゲンナリしていると、今度はEU外相会議が、加盟国によるシリア反体制派への武器供与を、認めたというニュースである。
 遅きに失し過ぎた感じがするとはいえ、米露両国もようやく重い腰を上げて、その肚の内はどうであれ、内戦終結へ向けての政治解決の道を、探ろうとしかけている矢先のことだ。その背景には、いったい何があるのだろう。中東に大きな利害を持つイギリス、第一次大戦後20余年にわたって、シリアの宗主国だったフランス、この両大国の画策によるものらしいが、平和の回復をさらに引き伸ばすことをもためらわぬ、帝国を動かす支配者たちのネライは何なのか。よほどうまいカネ儲けの種が、あるのかもしれない。
 文明は発展しても、人問はそれほど進歩しないということなのかね。そうではないはずだ。諸国民の英知を結集して、無法な企みを打ち砕こう。
                                            2013・5・30


★忌むべき体質をさらけ出した「維新」
    だが自民も同根同質であることを忘れるな 186

 いつも思うのだが、安倍晋三氏は忙しいおヒトだ。二箇所当たりほとんど二十四時間を越えないくらいのスピードで、数カ国をあたふたと歴訪しているかに見受けられるのだが、どうしてどうして諸国民の死活問題に関わるような重大な国際取り決めを、ちゃっかりと約束した上でのご帰国と相成るわけである。
 先だっても経団連会長を帯同してトルコなどに乗り込み、こともあろうに原発プラントの売込みを.見事成功させたと伝えられた。経団連会長を帯同してといったが、むしろ経団連の方が、日本国首相の働きぶりを監視採点するため同行したのかどうか、そこらあたりはいたって判然としない。
 ともあれ、以前だったら多少は世間の視線を気にしたであろう政府と巨大資本の密着振りを、今やおおっぴらに見せびらかすほど厚顔無恥になってきたということだ。

                       ※      ※      ※

 無神経・鉄面皮といえば、原子力規制委員会が日本原子力発電敦賀二号機の直下を走る断層を活断層と認める報告書をまとめたことに対し、当の日本原子力発電のH社長はよほど怒り心頭に発したのか、わざわざ記者会見を行い「容認できない」として徹底抗戦を表明したという。100パーセント活断層と断定されないのなら、あくまでも原発を動かし続ける構えを図々しく宜言したわけだ。
 しからば尋ねよう。君たちはまさか“疑わしきは罰せず”という司法の判決のルールみたいなことを、振りかざすつもりじゃなかろうね。もしそういう底意で開き直っているのなら、まアなんと前後の見境もないほど血迷ってしまったものか、というより他には論評する言葉が出てこない。

                       ※      ※      ※

 第二次大戦に至る日本帝国主義の政策と行動が、侵略であったかどうかという最近の論議は、安倍首相から維新の橋下共同代表の姿勢にその焦点が移ったかの感があるが、橋下氏の発言を、良くも悪くも人間が有する根源的な悪への志向に斬り込んだ。“タブーへの挑戦”として、いくらかは同情的に見ようとする人びとも、沖縄米軍当局者とのやり取りの中で、交わしたとされる露骨な人権無視、職業薫差別的な放言に対しては、最早あげつらう言葉も失ってしまうであろう。
 そしてこの一連の経過の中で、維新の会のもう一人の共同代表石原氏がしゃべった確信犯的なコメント、さらにはさすがに万人が呆れてしまい、維新の会の首脳部でさえも、除名処分以外方途なしと匙を投げざるを得なかったN衆院議員の究極の妄言等々 「維新の会」というこのネオファシスト集団は、遂に全国民の前に逃げも隠れも出来ぬその恥ずべき正体を、自らさらけ出すことになったのだ。

                       ※      ※      ※

 さてわれわれ勤労市民としては、かかる情勢にどう立ち向かったらよいのだろう。甘い期待感を抱かせて、その実“持てる者”だけをいっそう肥えふとらせるアべノミクスは、今のところ依然そのあやしげな魔力を発揮し続けており、そうした気運を背景に、安倍自民党は積年の念願たる憲法改悪、その第一段階としての九十六条骨抜きの野望を実現しようと企んでいる。
 それに彼らの眼には、維新の会のもたつきも、まさに“棚から牡丹餅”もっけの幸いと写っていることだろう。そうした危険な状況に警鐘を鳴らし、自民党という政党がしょせん維新の会などと根を同じくする悪の華であるゆえんを、丁寧且つ具体的に明らかにしていくことこそが、間近かに迫った参院選を闘うわれわれの、喫緊の課題となるのではないだろうか。
                                           2013・5・21

★舐められたらあかん
       革新は意地を示せ            
185


 労組「連合」が、中央メーデー(といっても彼らは近年この労働者の集いを5月1日にやったことがない)の式典に、安倍首相の出席を要請して断られたという記事が、新聞に載っていた。ホントかしらと思う。マスコミがチョクチョク流すヨ夕晴報かもしれない。でもありそうなことだという気もする。その反面、この組織は、ずっと続けてきた社民党への招待を、今年は取りやめたと報じられた。  これは嘘偽りではない。福島同党党首が事実と認めたうえで、この連合のやり方は全く理解に苦しむものだと、コメントしているからだ。たいていのことには驚かぬ癖がついているわれわれだが、それでもいくらかは、ぱかばかしいという印象を抱かせるニュースである。
 社民党を袖にしようとする連合のネライは、奈辺にありや。表向きの言い分では両者の政策上の隔たりが、大きいということなんだけれど、それじゃ連合のお偉方は、消費増税などに賛成なのかと問いただしたくなる。イマイチよく分からぬが、憲法改定、原発再稼動等々喫緊の問題で、アチラ側となんとか折り合いを付けたいとする魂胆が、こうした邪魔者切捨て的な態度を取らせているのではないのか。
 いずれにせよ、わが国最大の勤労者の中央組織が、なんとまア無残な姿をさらけだしたことよ。

                       
※      ※      ※

 そして他方、社民党にも苦言を呈さぬわけにはいくまい。連合のボスたちに、とうとう、こんな非礼な態度をとらせるまでに、弱体化してしまった現状への、自己反省が強く求められているにもかかわらず、それが甚だ不十分なように見受けられるのだ。党首をはじめとして、イチから出直すくらいの気構えで、ことに当たらなければこの党の未来はないゾ
                       
※      ※      ※

 当地で行なわれた市議選で“脱原発”を標傍する候補者が、政党、市民運動、保守系個人合わせて七人当選し、改選前と比べ倍増したと報道された。ちょっと見には脱原発勢力が、大きく影響力を広げたように思えるが、果たしてそうだろうか。旧議席はなにしろ一昨年の三・一一よりずっと以前の状況を反映したものだったのだから、その後の市民の意識には、当然著しい変化が、生じていたことだろう。
 だが今回の選挙結果を見る限り、そうした動向が、それほど顕著には現れていないようにも感じられる。むしろ、意識変革もとりあえず一休み、あるいは早くも風化作用の気配すら、危惧されるといえそうだ。いやたいへん、今まさにふんばりどころ。一層気を引き締めて前方を見据えよう。

                       
※      ※      ※

 結びにもう一度、国政レベルの問題に触れたい。七月参院選を前に安倍首相と自民党は、憲法改定問題を前面に持ち出す構えのようだ。もともと権力筋は、憲法のことを正面から取り上げることには、極めて慎重だったのだが、それがいよいよ牙を剥いてきたということは、彼らが彼らなりの手応えを感じているからのことなのだろう。
 われわれが、彼らの挑戦を受けてたたかいに臨み、勝利を収めるためには、これまでのような布陣では万全とはいえまい。そこで、大胆なアプローチが求められる。今現在向こう側に囲い込まれている人々の中にも、安倍政権と彼らに同調する諸勢力の画策に、不安を抱く市民は決して少なくはないだろう。
 その数は想像以上に多いとも考えられる。例の巨大宗教団体をバックに持つ、自民党の別働隊みたいなあの政党も、内部はずいぶん揺れているそうではないか。憲法改悪に反対するガッチリした戦線が組めれば、もちろんそれに越したことはない。しかし、それができなくても、それぞれが自らの立場で、反対の意思表示をすることには、結溝大きな意味があるのではないか。
 とにかく、あらゆる可能性を追求しなければならぬ。
                                            2013・4・30


★乱れ飛ぶ無責任な報道でトクをするのは誰?
     権力側の狙いは見え見えだ
            184


 朝鮮半島情勢は、どうなっていくのか?サッパリ読めない、お手上げである。双方の悪罵の応酬、気になるのがヒステリカルな口調も極まった感じの北の姿勢と、ことさら大げさに、対応策を騒ぎ立てる安倍政権…。
 だが、奇妙なことにわが国の株価は下がらない、ピョンヤン市民の生活は平和そのものだとも伝えられる。これっていったいどういうこと…。きわめつきのテンプラ情報は、米当局の高官が。“アメリカとして尽くすべきはつくしたあとは中国の対応を待つのみ”と云ったとか云わないとか、というニュースだ。
 真剣勝負をやっているとしたら、そんな不用意な言葉が軽々しく飛び出すわけがないだろう。かくて事態解明への手がかりは全くつかめず、真相は深い闇の中ということになってしまうのか。一方かかる成り行きを背景に行なわれたメディアによる世論調査(こんなものを無条件で信用するわけではないとしても)をみると、憲法改定(要するに改悪)をイエスとする意見が、ノーとするそれを遂に上回ったということだ。
 それを伝えるテレビ報道では、「九条」とか「日米安保」とか最終的テーマへの賛否を問うたのかどうか、もうひとつハッキリしないけれど、その意味するところは極めて深刻だといわねばならない。
 われわれはこのようにして、何がなんだかわけの分からぬうちにとんでもない危険な方向に、押し流されてゆこうとしでいるようだ。
                       ※      ※      ※

 TPP問題も、複雑な要素を孕みながら、アチラ側の仕掛けた罠に、ズプズプとはまり込みつつあるように見受けられる。
 安倍内閣と彼らのご用を務めるマスコミは、ここまできたらもうホンネをしゃべっても大丈夫だと安心したのか、TPPは“価値観を共有する国々が連携して太平洋地域の安定と繁栄を目指す二十一世紀の大計だ”と、冷戦時代への逆戻りみたいなことを、アケスケにうそぶき始める始末だ。しかも事態は複雑である。なにしろTPP加盟国の中には、社会主義国ベトナムも含まれているのですゾ。

                       ※      ※      ※

 それはそうと、マスメディアというもののもつ魔力には、脱帽するほかはない。とりわけNHKの果す役割たるや、その巨大さに慄然とするばかりである。不偏不党、公正中立を装いながらわが国を取り仕切る魑魅魍魎の意図の忠実な紹介者宣布者としての任務を、日々遂行して、しくじるところがない。
 矛盾だらけの内外の現実に、国民が疑問を抱かぬよう進路を誘導するのは、まさに至難の業だと思われるのに、それを見事にやってのけているのだから。

                       ※      ※      ※

 マーガレット・サッチャー元英国首相の死去が報じられた。故ロナルド・レーガンと並んで新自由主義、弱肉強食路線のチャンピオンとして悪名をとどろかせた人が、鬼籍に入ったという報せに、全世界の人びとはその立場立場でいろいろな感慨を抱くことだろう。
 いずれにせよ、資本主義が依然手ごわいものであること、その克服にはまだまだ容易ならぬ努力を要することだけは確かだというべきか。
                                           2013.4.15


★策略渦巻く政治の世界
     虚偽を暴き真実を追求しよう
          183

 国の内外を問わず、政治には常に策略と陰謀が付き纏うことくらい、およそ分かりきった話だが、近頃それを一段と痛感させられる出来事が相次いでいる。
 維新の会が初の全国大会を開いたと報じられ、共同代表の一人橋下 撤氏は、今夏参院選での彼らの目標が衆院に続く“自公による過半数”の阻止だと述べた。と同時に、彼はまた憲法改定勢力で両院とも三分の二を制することが必要だとも主張しており、これは当然自民党を加えた計算である。
 みんなの党というヌエみたいな政党も、こうしたキテレツな展開の中で、油断できぬ動きを見せるわけだろう。
 そんな情勢下、民主党の姿勢というのが、イマイチしゃんとしていないように見受けられる。維新の会にしきりに共同行動を呼びかけるものの、相手からはいたってつれない反応しか得られない。それでも諦めきれず、秋波を送り続けるなど、総選挙の大敗以来この党は、自信も矜持もなくしてしまったのか。いずれアチラさんが仕掛けてくる改憲陰謀の蟻地獄にはまり込んで、その存亡さえ問われる事態になりかねない。
                      
 ※      ※      ※

 さて、今のところ鼻唄交じりで状況を掌握しているかのような安倍首相だが、此度突如モンゴルを訪問して、同国の首脳と会談した。彼のネライがどこにあるのか、考えてみたい。
 わが国の巨大資本の意志に沿って、この広大な草原の国に眠る地下資源の開発と、いずれにせよ深刻な問題となっているエネルギー戦略の解決への一つの方途を見い出そうとしているのだろ。そして同時に周知の国際環境のなか、中国とも北朝鮮とも、さらにはロシアとも深いつながりのあるこの国に働きかけて、経済支援をちらつかせながら影響力を強めようとするだろうが、これはまかり間違えば、東アジアにおける緊張の火種を一層大きくすることになりかねない危うさを孕んでいるのだ。
 われわれとしては、こうしたなりゆきに深い危惧の念を持たざるを得ないのである。モンゴル共和国―いま日本の国技大相撲のチャンピオンたる地位をわれわれから奪いかけているこの国は、しばらくそっとしておいた方がよいのではなかろうか。
                       
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 難問中の難問、朝鮮半島の雲行きだが、打ち割った話どうにも解せない、読みきれないという印象も払えない気がする。
 わが国のメディアが報じているようにピョンヤン放送がホントにああいう調子の居丈高な発音を行なっているのであれば、それに対する米韓側の反応は、驚くべき“忍耐力”を示すものといえるのだろうが、中東などに関するワシントンの政策と比較する時、なんとも奇異の感を抱かざるを得ない。
 これはなにか、われわれの乏しい知識、貧しい想像力では、とうてい知りえない大きな動きが、双方で始まっているのかもしれないゾ。
                       
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 「一票の格差」が論点とされた昨年十二月の衆院選をめぐる訴訟で、全国の高裁・高裁支部が相次いで選挙無効ないしは違憲の判決を言い渡し、大きな論議を巻き起こしている。さしあたっては現政権の与党と安部首相にとっての打撃となるのは当然としても、これは前政権とさらには全ての政治勢力の共同課題になっていくだろう。
 蓮華着果はいまさら動かしようもないし、万、万が一再選挙したところで、半年も経っていないのに、どれほど大きな変化が生まれるわけでもあるまい。
 考えてみると、この国は、この世界は、およそ理不尽なことで充満しているといえそうだ。

                                          2013・3・31

★国民の分断を狙う陰険な企みを許すな
     闘いに勝つ鍵はここにある         182


 
安倍首相は、“天下晴れて”TPP交渉参加を表明した。交渉ごとだから手の内は明かされぬという口実で、高まる国民の不安にも、ほとんどまともに応えようとしない。安倍氏といえども、主観的には日本国民の利益を第一に、相手方と渡り合おうとはするのだろう(もとより彼の考えている国民の利益なるものの本質がここで問題となるのは当然だが)。
 しかし、シンガポール、ブルネイ、ニュージランド、チリの四カ国で始められたTPPが、超大国アメリカの登場によって、その性格が大きく変貌し、今やわが国は、安保条約(軍事同盟)と並ぶがんじがらめの「経済同盟」のくぴきでアメリカに縛り付けられるという、破局への道を踏み出したといっても差し支えない有様なのだ。
 内外のご主人筋の意向を体してメディアも大忙しである。マスコミの論調は、例えば農業生産者と都市生活者の利害の違いを大々的に報道し、国民を分裂させ、結果的に支配者側を利するための世論操作を図ることに懸命だ。そもそもメディアは、TPPに限らず社会的重要課題に関して、常に体制の立場に立ち陰険な画策をやるのが常態化している。
 安倍首相のプレーンである浜田エール大学名誉教授が、若者と中高年齢者との対立を煽る露骨な発言をすると、それをデカデカと紹介して、勤労市民の間に楔を打ち込もうと新聞もテレビもおおわらわであり、同様の考え方を持った四十歳代のチンピラ学者まで登場させて、賃上げなど急ぐべきでないとするメイ論をしゃべらせるといったいかがわしさだ。
 更にまた、これはもうカビが生えるほど日常化している、公務員労働者と民間労働者を反目させようとするマスコミ十八番の手練手管も、かかる見え透いた企みがよくも続くなアと「感心」するほど長きにわたって“有効性”を保ったままである。みんなの党なんていう党は、さしずめこんな低次元の怨念とやっかみによって支えられているといえそうだ。
                       ※      ※      ※

 震災から丸々二年経った今も、なお復旧・再生への道の険しい東日本の実情を伝え聞き、そのような状況下にあってなおかつ、原発再稼動の企みを、公然と口にして憚らぬ自民党政権の正体を日々見せ付けられると、如何ともしがたい焦燥感に襲われるが、ここで奮起一番気を取り直して、反撃に移らなければならない。あだ花みたいなものにせよ、今のところ満開を誇りその勢いに乗じて参院選に臨み、あわよくば九十六条の規定を突き崩して、憲法改悪という悪だくみへの道を開こうとする安倍政権の魂胆がむき出しになってきた今、彼らに反対する力の幅広い連携が、現在ほど痛切に求められたことは、かってなかったといわねばならぬ。
 公明党−この巨大宗教団体をバックに持つ政党−についてわれわれは、今まで単なる自民党の補完勢力、使い走り政党とみなし、真剣な批判の対象とはみてこなかった。なにしろその主張たるや、粗雑で時には支離滅裂なこともあり、殊に民主党政権の末期、閣僚問責決議を自民党と組んで何回も通しておきながら“民主党内閣は大臣を簡単にすげ替えるなど無責任だ”とぬけぬけとうそぷいたり、政党としての品性にも思考能力にも疑問符がつくようなざまだったのである。
 でも、こうした危険状態下では、その彼らも多少は意地のあるところを発揮せねばならぬのではなかろうか。もともと低所得者層、貧困層から根観い支持を受けているとされるこの党である。長い迷夢から覚めて、評判を取り戻すには、絶好のチャンスではなかろうか。ずるずるべったり自民党にくっついていくのも、たいがいにしなさい。
                      
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 チャべス大統領急逝の悲報が伝えられた。死を悼む多くのベネズエラ国民の声、全世界からの哀悼のメッセージ、彼の成し遂げた業績の大きさを、改めて痛感する。だが、道半ばにして倒れた彼の偉業を引き継ぐラテンアメリカ人民の歩みは、立ち止まることなく一層加速されていくだろう。
 イタリア、キプロスはどうなる。地中海の波高し。情勢の推移を、注意深く見守ろう。

                                           2013・03・22

★TPP推進は地獄への道だ
     それを突き崩してこそ未来が開ける
    181


“関税全廃を前提とせず”が確認できたとして、安倍首相は意気揚々と帰国した。「おゆるし」が出たからには、もう遠慮は要らぬとばかり、TPP一直線で突っ走るつもりなのだろう。
 でも、ことはそう簡単には進まないだろうし、進ませてはならぬ。それにアメリカ側は、自らのフトコロの深さを最大限宣伝することにつとめるとともに、日本に「借り」を作らせ、搦め手からじわりじわりと締め上げていく魂胆であること間違いない。
 ことわざにも、“大事の前の小事”とか“小の虫を殺して大の虫を生かす”とか云うではないか。本質的な問題は、この経過が軍事同盟(安保条約)と並んでいわば車の両輪ともいえる経済同盟の強化の最終的発現であり、台頭する中国を睨んでの、日米支配体制の更なる前進を謳った宜言だということである。
 共同声明のポイントを見れば一目瞭然日本の農産品について“敏感な問題”が存在することを認識したに止まっており、いわんやその他の喫緊な懸案に関しては、ほとんど触れられていないに等しい。これでなんで安心したり、喜んだり出来るのか。
                       
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 さりながら、この国の政治情勢を眺めるとき、残念だけど、まだまだアチラ側の鼻息には、衰えの兆しが見られない。“アベノミクス”“デフレ克服の三本の矢”など、その怪しげな流行語やキャッチフレーズは、依然多くの人びとから肯定的に受け止められていて、その欺瞞性と勤労国民無視の本質が、白日下に晒されるまでには、もう少し時間を要するかも知れぬ。ただ云えることは安倍政権とそれを支える勢力が“国民が豊かになるためには先ず資本(家)を儲けさせねばならぬ。それが実現して初めて労働者もいくらか潤うことになる”という主張を、アケスケに口にしていることだ。そして残念ながら、この理屈(サッチャー、レーガン伝来の)は、かなりの程度まで勤労市民の間にも染み込んでいるように思えてならない。

                       
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 イタリア総選挙は、その結果がEUのみならず全世界に不安定要素を持ち込むことになるのでは…と、取り沙汰されている。
 海外の事備に疎いわれわれにはよく分からぬが、昨年のギリシャに続く困難な事態なのだろうぐらいなことは、理解できるというものだ。
 人間とは、しよせんそんなものだといえばそれまでだが、今度もギリシャと同じく「緊縮と生活水準の切り下げはお断り、だけどEUやIMFには見捨てられたくない」という世論が、多数派を形成していくのだろう。真の社会変革への道、いまだ遠しと云ったところか。

                       
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 あまり気勢の挙がらぬ話題を並べたような気もするが、いたずらに虚勢を張ったところでどうにもならぬ。要は、今の条件の中から、いかにして突破口を広げていくかということだ。
 智恵を出し合い、勇気を発揮しあって前に進もう。
                                           2013・2・28

★虚構の“危機説に”騙されるな
        誰の利益にもならぬゾ         
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 自民党は、政権に返り咲く前から執拗に、民主党政治では国益が損なわれ、国の安全が脅かされていると非難していた。
 ところで、現実はどうだろう。安倍内閣が成立した後も、中国海軍艦船による火器管制レーダー照射とか、北朝鮮の行なった三回目の核実験とか、結構ショッキングな出来事が、なくならないようだ。まア率直な意見を述べさせてもらうなら、レーダー事件では、双方の意見が食い違っていて、しよせん水掛け論にしかなるまいと思えるし、核実験のほうは、日米その他の国々が大騒ぎをするほど世界平和への深刻な脅威なのかどうか、疑わしいような気もする。
 ただし、レーダーの件が事実だとすれば、そして核実験という行為について感想を述べるなら、どっちもなんとつまらぬことをやるものだ、ということにはなるだろうけれど。

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 さて、ここらで現在の東アジア情勢を、普通人の目で眺めてみて、いったいどんな判断を下したらよいのか。
 尖閣にしても竹島にしても、人の住まぬ小さな島嶼である。大騒ぎをやって、何か得るところがあるのか。どちらの場合も、両当事国の一般国民とって、ほとんど何の利益も齎さないこと、確実だといってよいだろう。
 トラブルを起こすことで、後ろめたい「成果」を収めようと最初は思っていた勢力も今ではそのねらいが外れてしまったといっても、過言ではない。あー、そうそう笑いの止まらないおヒトが、いることはいた。例の尖閣の旧地権者である。評価額五億円程度とされていたのを、二十数億円も懐にしたのだから、まったくうまい商売をやったものだ。とんでもない「愛国心」の発露である。

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 それはそうと、安倍政権の経済政策は、日銀に大きな軌道修正を促す等々、その目玉たる“金融緩和”の方針などが、今のところ「順調」に機能しているかのごとくに受け止められ、日本経団連・経済同友会・日本商工会議所の三団体も、労組側の要求に対しては、コワモテの対応を崩していないのにも拘らず、安倍首相との話し合いの場では、ややニュアンスの異なる思わせぶりの意向表明を行なうなど、なかなか芸のこまかいところを披露している。
 この国を真に操る人びとは、表の権力である政府との連携プレイを見事に演出することによって、今夏の参院選に向けての足場固めを、いっそう強めようとしているのであろう。
 まさか、世界的に一度は頓挫、退場を余儀なくされたレーガン−サッチャー路線、そのぶざまな亜流だった小泉−竹中路線を煮し返そうとするわけでもあるまいが、見掛け倒しの“成長戦略”なる装いを塗りたくって、登場してきた相手方に対し、これまでに倍する警戒心を深めて、立ち向かっていくことが、勤労者・市民の側に求められている。
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 このような時期、安倍首相は二期目のスタート直後のオパマ大統領と会見のため、ワシントンを訪問することになった。
 日米支配層の思惑が微妙に交錯する東アジア情勢を背景に、自民主導政権の喫緊の懸案たる集団的自衛権行使容認や、TPP交渉参加の問題をどうするか、彼らの正体が白日のもとにさらされるわけである。そして同時に、われわれの闘いの本番も始められることになるだろう。
                                            2013・2・15


★順風満帆とうそぶく安倍政権
    だがボロは必ず出るものだ
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安倍首相の所信表明演説は“経済再生″などに重点が置かれ、問題の憲法「改正」の持論が盛り込まれなかったことから、いろんな見方が飛び交っている。
 参院選までは、慎重な上にも慎重にことを進めようとの魂胆だろうという観測もあれば、いや単に順序を踏んでいるだけさ、間もなく行なわれる施政方針演説では、正面切って牙を向いてくるよと断定する向きもあるなど、さまざまだ。でも間違いないのは、安倍氏も彼の与党も今のところふてぶてしいまでの自信と余裕を持って、政治に臨んでいるということである。
 三年余にわたる実験の末“期待はずれ”に終わった民主党政権、いたずらに刺激的な宣伝文句ばかり目立つ維新の会などの“第三極勢力”素人目には、現実離れの空論を羅列しているだけと受け止められてしまう革新諸党、etc…。
 自公政権が、専らだれの利益の為に奉仕しようとしているのかを、追及しなければならぬのはもちろんのことだが、まア考えてみると、その点ではアメリカもEU諸国も、およそ先進国と呼ばれる国々のすべてが、多かれ少なかれ同様のことを実行におよんでいるのだから、相手の弱点をとらえてとっちめることも、それほど容易ではない。
 ただしいろんな点で他の「先進国」よりもさらに無茶な施策で国民を縛りつけようとするわけだから、当面そうしたところをとらえて、揺さ振りを掛けていく作戦を取るべきであろう。

                       
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 さて、われわれが敵手とする内外の黒幕は、今のところ余裕綽々のようだが、その彼らも明日の空模様がどうなるかということでは、当然一抹の不安を抱いているはずだ。だから彼らの支配を万全たらしめてくれる複数の政治勢力を常時確保しておかねばならず、その意味で二大政党制というのは、連中にとってまさしくおあつらえ向きの仕組みなのである。
 したがって今回は惨敗したとはいえ、民主党という政党を再建させることも、なかなか大切な仕事であるにもかかわらず、これがどうもあまりはかばかしく進んでいないようだ。そのためかどうか、最近彼らはこれまであまり信をおいていなかった維新の会に、注目しだしたように見受けられるのだが、この傾向強まってゆくのかしらん。もとよりその場合は、老ファシストを棚上げにして若僧中心の運営に、大きく舵を切らせようとするだろう。当然ながら、これまでの駄々っ子的発音と行動は控えるようにと、だめを押した上でのことになるだろうが…。
 もしそういう画策がフル回転しだすと、勤労者、市民にとって実に由々しき事態となってくるゾ。

                       
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 アルジェリアで起きた事件の悲しい結末は、国際政治のむごさ、非情さを万人の前に明らかにした。
 十人の同胞を含む失われた生命に、哀悼の意を表すると共に、これが悲劇の終わりとはならぬかも知れぬと伝えられていることに対しては、テロ行為への怒りは勿論だが、かかる状況下でもなお自らの利益を求めて止まぬ資本の論理への疑念もまた消すことができないのである。

                       
※      ※      ※

 尖閣をめぐる問題について、米有力紙『ワシントン・ポスト』が、日中両国に自重を求めるという主旨の論説を発表した。アメリカ政府はあれでなかなか狡猾なところがあり、直接自らの意見を口にせず、自国のマスコミや国連事務総長を通じて、遠まわしに係争当事国に彼らの意向を悟らせるという手法を用いることがある。
 要するに現時点では、東アジア情勢がこれ以上緊張するのは避けたいというのが、アメリカの立場なのだ。超大国指導部の本質がどうであれ、これはとりあえず結構なことである。大きな口を叩いていても、アメリカのゴーサインなしには動けぬ安倍氏と自民党のことゆえ、ヒョンなことは起こさぬだろうが、われわれはそんな彼らの思惑とは関係なく、アジアと世界の平和を目指す一貫した努力を今後も強めてゆかねばならぬ。
 そして先ずは、集団的自衛権容認を企む彼らの意図を打ち砕こう。
                                           2013・1・31


メディアも体制にべッタリ
 安倍政権はなかなか手ごわいゾ
  でも敗けるわけにはゆかぬ            
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 今はドン底だが、これからは上昇していくばかりと、いささか強がりのコメントを発して新年を迎えたけれど、現実は結構きびしく安倍政権も想像以上の小利口さで、この夏の参院選までは極力ソフトムードを演出し続け、人びとを瞞着し遂せようという構えのようだ。
 もちろんそうはいっても、日米のご主人筋からせっつかれて、原発再稼動への露骨な意欲を隠そうともしないし、彼ら長年の念願たる集団的自衛権容認を、今度こそ通そうとする魂胆も、むき出しになっている。最大の目標としての憲法改悪に向けて、一歩一歩外堀を埋めていこうと、周到な計画が進められつつあるのだ。
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 さて、このところ以前にもまして目立つのが、マスメディアの体制寄りの姿勢である。一昔前の右肩上がりの成長戦略が吹っ飛んだこの国の独占体は、安価な労働力を求めて途上国に眼を向け、貪欲な働きかけを強めているのは万人周知のことだが、その彼らにとっての東南アジア最後の「フロンティア」たるミャンマー(ビルマ)に対する浅ましいばかりの画策を、最近のNHKテレビは、一言の批判もなくむしろ肯定的にとらえて紹介していた。かっての報道姿勢を振り返ってみても、これほどひどいジャーナリズムの堕落は見受けられなかったように思う。
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 海外からは、アルジェリアの天然ガス施設がイスラム武装勢力に襲撃されて、日本人を含む多数の人ぴとが拉致拘束されたというニュースが伝わり、さらにその鎮圧に乗り出した政府軍との間に、戦闘が行なわれたとの続報が入ってきた。
 事件の全貌はいまだ明らかになっていないが、アルジェリアの隣国マリの内紛への旧宗主国フランスの軍事介入に抗議しての報復であるらしい。
 理由が何であれ、目的のためには手段を選ばぬというテロ行為が、非難されるべきは論を俟たないところだけれど、それと並んで“欧米先進国”によりしよっちゅう繰返される二重基準(ダブルスタンダード)を連用しての他国への干渉も、これまた理不慮な話だといわねばならぬ。そもそも現在の西欧諸国の支配層には、近・現代史上に現れたナチ=ファシズムや日本軍国主義という超ワルの政治体制、そして意味は全く違うが、旧社会主義国に見られた「全体主義」制度―これらの経験の否定的総括に便乗して、まア少々の専横は許されるものだという傲慢な思い上がりが、染み付いているようだ。
 そして、かかる不遜な行動の背後にあって、それをけしかけているのが、そういった国々の独占企業体である。だから今なすぺきこと―それは気の遠くなるような課題ではあるが、とにかく彼らのよこしまな企みに“待った”をかける力を、全世界の人びとと共にうまずたゆまず、生みだしていこうということになるのだろう。
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 今年も、冒頭から荒れ模様である。視界は必ずしもよくはない。だが、ここがまさに踏ん張りどころだ。皆さん気を引き締めて頑張りましょう。
                                           2013・1・18




※2012年12月178までの「カマキリ通信」は移転しました。※
【特別寄稿編
Y・H